A職業科と普通科
 高校には、普通科と職業科があります。高校を受験する時点で、どの科にするか選ばなくてはなりません。
 
「普通科」の高校は、中学校までと同様に、英数国理社の5教科を中心に授業を行います。船橋・市川・松戸・柏周辺は、ほとんとの高校が普通科です。
 
「職業科」は、英数国理社の授業時間が少なく、その代わりに社会に出てから役立つ専門科目を学びます。大きく分けて「商業科」「工業科」「農業科」があります。
 
■普通科とは■
普通科は、基本的には中学と同じ教科を学ぶのですが、次の点を理解したうえで学校を選びましょう。
(1)英数国理社の比重が高まる
 美術・音楽・書道は、「芸術」として1科目選択という高校が多い。その代わり、英数国理社の授業の比重が高まる。中学生の時にオール4くらいの生徒は、予習復習しないで授業を聞いても十分ついていけると思うが、高校になると進度が速くなるので、予習復習が欠かせない教科がいくつか出てくる。
 参考までに、高校1年の毎週の時間数を表にした。
高校1年の時間数 英語 数学 国語 理科 社会 保体 芸術 LHR 家庭 情報 その他 合計
県立船橋高校 5 5 4 4 4 4 2 1 . 2 . 31
松戸矢切高校 4 4 4 3 3 4 2 1 2 2 総合1 30
松戸国際高校 5 5 4 3 2 3 2 1 2 2 総合1 30
日大習志野高校(私立) 5 6 6 3 4 4 2 1 1 1 1 34
芝浦工大高校(私立) 6 6 5 4 4 4 . 1 . 1 総合1 32
薬園台高校(園芸科) 3 3 3 4 2 4 2 1 2 . 農業7 31
 ※あくまでも高校1年の時間割である。芸術や家庭がゼロの高校でも、高2になると学習する。
 ※今から20年前は、土曜も毎週授業があったこともあり、普通科だと英語6時間・数学6時間は当たり前だった。かなり授業時間が削減されたことになる。

(2)理数科・英語科は、普通科の1種である
 「理数科」は、県立船橋、市立千葉、県立柏、長生、成東、匝瑳に設置されている。数学と理科を重点的に勉強するので、将来理系の大学の進学に有利である。文系に進む場合はきついので、偏差値だけで選ぶと後悔する可能性がある。普通科でも、2年生(または3年生)からは理系文系に分かれて選択科目が多くなるので、ほとんど不利にはならない。
 「英語科」は、英語を重点的に勉強する。千葉県内の公立では匝瑳、私立では国府台女子学院、植草学園文化女子、千葉英和などに設置されている。英語科とほぼ同じ「国際教養科」は、市立稲毛、松戸国際、成田国際にある。英文法・読解の授業以外に、英会話や外国の文化の理解にも力を入れている高校が多い。

(3)「特進クラス」や類型別募集をしている私立高校がある
 私立高校の中には、大学受験に特に力を入れている学校が多い。特にレベルの高い「特別進学クラス」を設置して有名大学へ合格させようとしている。入試段階で分けて募集する高校も多い。
 たとえば流通経済大柏高校は、T類(偏差値60)が文系色が強い普通のクラス、U類(47)はスポーツに力を入れる男子のみのクラス、V類(62)は理系進学にも十分対応する特進クラスの位置づけもあるクラスである。
 このような特進クラスに入ったら、徹底的に勉強する覚悟が必要になる。高校に入ったら思いっきり遊ぶぞ、と考える人は、受験しない方が良い。

■職業科の種類■
1)商業科
 経済や商業の仕組み、税法に沿った経理の帳簿の記入法、ワープロ・パソコンの使い方などを学習する。
 取得できる主な資格は、簿記、珠算、情報処理がある。ただし、卒業すれば自動的に取れるのではなく、授業に加えて自分で練習を積んで合格する資格である。
 卒業後は、事務関係、商業関係に進む人が多い。大学や専門学校に更に進む人も多く、半分以上進学する高校もある。
 たとえば千葉商業では、「商業科」の他、「情報処理科」と「国際経済科」がある。微妙に学習する内容が違うので、受験する際は、よく考えて選びたい。

2)工業科
 入試の段階で細かな学科に分かれる高校が大半。
 たとえば京葉工業高校では「機械科」「電子工業科」「設備システム科」「建設科」がある。市川工業では「機械科」「電子科」「建築科」「インテリア科」がある。
 男子が多いが、インテリア科など女子も目立つ科もある。
 大ざっぱに言えば、電子科は電気製品の中身を中心、電気科は発電所からコンセントまでを中心に勉強する。
 入試の段階で細かな学科を選ぶのは不安な面もあるので、清水高校(野田市)では、2年に進学する時に学科を決める試みを始めている。
 国立の東京工業大附属(港区)も、レベルは高いが千葉県から受験する人もいる。

3)農業科
 昔は農業後継者育成という色彩が強かったが、今は農家の生徒はかなり少なくなっている。卒業後は食品会社などの一般企業に入る人が多い。
 授業では、土をいじる昔からの農作業もするが、バイオテクノロジーを取り入れたり、コンピューター制御の温室を使ったり、近代化した実習もあるそうだ。
 都市部では、薬園台高校・流山高校の園芸科がある。

4)その他の学科
「体育科」・・・スポーツの選手を育成する市立船橋が有名。八千代高校、市立柏(スポーツ科学科)もある。
「衛生看護科」・・看護士の資格取得の近道となる学科。幕張総合と市立銚子西に設置されている。5年制なので、そのまま短大に進むのと同じような形になる。
「家政科」・・・衣食住の実技だけでなく、専門の理論も勉強する。千葉女子高校などにある。

■職業科の注意■
(1)職業科は専門学校ではない
 職業科であっても高校だから、英数国理社や体育の授業もある。大ざっぱにいえば、専門科目は高1で授業全体の2〜3割、高3で4割くらいである。文化祭などの行事もあれば、制服もある。
(2)大学受験には不利な面もあるが、チャンスはある
 入試科目の英語・数学などの授業が短いので、学力を伸ばすには普通科が良い。しかし、普通科でも偏差値50くらいの高校では8割が推薦入学を使う時代になり、職業科からも推薦入学で十分進学できる。
 ただし、日本大学以上のレベルの高い大学は、推薦基準が高くなかなか使えない。また、商業科から経済学部に進むならかえって有利な面があるが、理学部など全く関係ない学部に進むのは苦しい。

(3)専門を慎重に選ぶ必要がある
 商業・工業などは、中学では直接学んでいない。だから中学の時に知るのは簡単ではないが、よく調べる必要がある。
 機械いじりが嫌いで、少しの油が手につくだけでもイヤという人は機械科には向かない。電卓で数字を計算する作業が細かすぎて耐えられないという人は、商業科は避けたほうが良い。

(4)職業科は生活指導が厳しい
 職業科の高校では、「髪型をきちんと」、「遅刻はダメ」、「挨拶はしっかり」、といった生活指導が厳しい。特に商業科は厳しい。
 民間企業の人が「おたくの卒業生を1人採用したい」と思って求人票を持って訪問した時に、生徒に良い印象を持ってもらうことが職業科にとって死活問題なのである。丁寧に掃除された校舎で、さわやかに「おはようございます」と挨拶されれば、求人の数を増やそうかと思いたくなる。しかし、金髪に染めた生徒が大勢廊下にウンコ座りして来訪者をにらみつければ、それだけで帰ってしまい就職先が絶たれてしまう。
 逆に言うと、ツッパリ生徒の居場所がないので、真面目な生徒には適している。環境に流される生徒も、あえて選ぶのも良いだろう。