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イラクへの支援

小泉さんというのか、政府と言うべきなのか、自衛隊のイラクへの派遣に可なり前向きの発言をしている。「国際社会の一員としては当然」「十分に情報を得て非戦闘地域に」などなどを耳にしているが、フランスのように拒否権を持つ国、それにドイツも消極的だし、議会で承認を得ているトルコの政府は派遣を取り止めるらしいし、サウジアラビアもテロの攻撃を受ける可能性があると判断し、派遣を取り止めたという。ロシア、中国の話は聞かないし、日本と同じような立場にある韓国の話も聞かない。

 イラクの治安は悪く、国連の関係者が国外に逃れたし、米国のヘリコプターが3機も地上ミサイルで撃墜された。これはイラク国内の戦闘活動が新しい形で続いているといえる。昔の言葉でいうならばゲリラ戦になったのであり、米国がこれにどのように対応するのか全く判らない。ブッシュさんは「絶対に撤退しない」というけれど、それなら何時になったら終る見通しかを述べなければならない筈である。そしてさらに「日本の協力に期待する」とも言っていた。

 小泉さんがブッシュさんを信頼するのはご勝手であるが、それは派遣した自衛隊員を米軍が徹底的に守る約束が欲しい。万一一人の犠牲者が出れば、小泉さんは国民にどのようなお詫びをするのか。お詫びで済む問題ではないけれど、イラクの現状のしっかりとした認識と、米国のイラクへの考えをもう一度見直してみて欲しい。人道的立場は判るけれど、いま自衛隊を送り込んで、一人の犠牲者も出すことなくその責務を達成できると、もし考えているならば、野党からの徹底した攻撃を受けることになるだろうし、国民の期待を裏切ることにもなる。       
(2003.11.08)

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 総選挙が終った。概ね私が予想した通り自民党を中心とした与党が過半数を占め、そして民主党が躍進した。その結果共産、社民がこの煽りをまともに受けた。共産は組織票なのでこのような数になったのは予想外であったが、社民党は大幅に減る予想通りになった。
 今度の選挙で中曽根、宮沢両氏が比例代表から外れたが、これが若返りの雰囲気をつくったかも知れない。土井たか子さんの選挙区の敗北もその例であろう。世代交代が始まりを感じさせる選挙であった。
 民主党は今度の躍進で気をよくしているだろうが、政権交代を標榜していただけのこと、だから「やっぱり民主党は頼りにならない」と思われたら、一挙に没落する可能性がある。もともとこの党は寄合い世帯だから、その舵取りは難しい。菅さんはこれからが大変であろう。ラッパを吹いているだけでは駄目である。       
(2003.11.09)

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 イラク南部に駐留していたイタリア軍が自爆テロに攻撃され26人の軍人が犠牲になった。南部は治安がよいとしていた政府の情報は、どのような根拠によったものなのか。この事件による小泉さんの対応が注目されるが、これで米国内の世論がどうなるのか、ブッシュ氏への支持も大きく後退することにならないか。そうなったら小泉さんはどうするのだろうか。イラクの治安回復は最早、米国の力では出来ないと思わざるを得ない。これからも米軍だけでなくその他の国の軍隊もテロに襲われるであろう。
 このテロは戦争ではない。だから米国は目に見えない敵と戦っているのと同じ、そしてこの相手は白旗を掲げることはない。だからこの戦いが何時終るか、誰にも米国にも判らないことになる。日本がイラクの復興に協力することに反対する積もりはないが、治安が確保されない限り自衛隊の派遣に、政府は慎重になって欲しい。イラクでは戦争ではない戦いが続いているのだ。これは何時、何処で、誰が襲ってくるか予測がつかないことではないか。
(2003.11.18)

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 イラクばかりでなく、トルコ、アフガニスタンでもテロが起こり、軍人が襲われているが、同時に市民も犠牲になっている。米国は強気でいるが、口では国連軍での治安維持を期待している。だから英国、フランスは約束が違うと言いはじめているし、ドイツも微妙な立場になってきた。しかし日本は現地に自衛隊の調査のため派遣するなど、前向きの姿勢を表明している。韓国は既に派遣しているようであるが、マスコミの報道では、世論は派遣反対の声が強そうで、これは民主党にとっては小泉攻撃の絶好の材料となろう。25日からの衆議院予算委員会での論戦を期待したい。
(2003.11.24)

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極めて残念なことに、イラクで日本の外務官僚の奥氏、井上氏のお二人が襲われて亡くなった。何か起こるべくして起こったという感じがなくもないが、この事件と前後して、スペイン、イタリア、韓国の軍人と民間人が襲われて命を落としている。これは偶然なのであろうか。

 小泉さんはしかし依然として、イラクへの自衛隊派遣を含めて、政府方針には変わりはないという。しかしマスコミは与党公明党の反対の意見が強まっているとのことで、政府方針の閣議決定が延びると伝えている。スペイン政府はイラク支援を継続すると言っているが、この国の世論は軍隊を引き揚げるべきに傾いているという。韓国内にも衝撃が走ったようだが、ここも方針通り軍隊の増派を進めるという。どこの国も「イラクから手を引く」と言い出さない。引き揚げはテロに屈したことになる、というのがその根底にあるのだが、これは米国に対しての思惑からではないのか。どこかの国が言い出すのを、お互いに待っているのではないだろうか。

 現状では日本は自衛隊の派遣をすることになるだろうが、そのためにもし一人でも犠牲がでれば、小泉さんは命取りになる。
(2003.12.01)

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 奥氏、井ノ上氏の外務省葬が6日に青山斎場で行われた。小泉さんは弔辞で絶句されたそうだが、その無念さは我々には図りしれないものなのであろう。外務省葬というのは明治維新以来5回目だというから、内外にこのお二人の死を、国として如何に大きな事件と考えているのかを示した。よくやってくれた、と私は思っているが、亡くなられたことは取り返しのつかないことである。そしてお二人の遺志を継いでこれからもイラク支援を続けるのか、日本の重要なお二人が襲われた事実に基づいて自衛隊派遣に反対の世論が盛り上がるのか、政府は難しい立場に立たされたことは間違いないと思う。公明党は与党としてどこまで主張するのか、議会は休会中でもこの問題の審議をするのか、国民の世論を見極めて小泉さんは結論を出して欲しい。
(2003.12.07)

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 奥氏、井ノ上氏の葬儀から2日後に小泉さんは、イラク派遣基本計画を閣議決定した。日本人の犠牲が出たからといって、取り止めることは出来ないだろう。既に米英以外の国の軍隊がイラクで、テロの犠牲になっているのだから。小泉さんは「イラクの復興人道支援のために行くのであって、戦争に行くのではない」とその考えを改める素振りは全くない。それを立派という人もあろう。

 派遣は陸自が600名以下などとあるが、その装備は小銃、拳銃程度ではなく、明らかにテロからの襲撃を想定した内容である。自衛隊が積極的に攻めることはないと確信しているが、事故というのは、現地でばかりでなく、輸送途中でも起こり得る。それが起きても小泉さんは矢張り責任を取ることになろう。つまり出発してから帰還までの間、何が起きても小泉さんの責任ということになる。

 派遣は年明けであるが、国会は当分お忙しいことであろう。しかしそこでどのような論議になろうと、イラク派遣が取り止めになることはない。

 菅さんは「派遣の大義名分がない」といつているが、もし彼が首相であったらどうしたであろうか。
(2003.12.09)

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14日小春日和の日曜日、ゴルフを楽しんで帰り、夕食を済ませてぼんやりテレビをみていたら、「フセイン元大統領身柄拘束」とのテロップが出た。吃驚した。イラク国内にはいないと、思っていたから、見つけられると思っていなかった。

 日本人がテロの犠牲になった、国会は自衛隊の派遣で論議が沸いている、こうした中でのフセインの拘束、一体これからどういう流れ、展開になるのだろうか。

 まず頭に浮かんだのは、イラクの治安がこれで回復に向かうのか、米軍への攻撃はこれで終わるのか、であった。そして治安が回復すればイラクの復興は国連の主導なり、それは国際的な復興援助になるし、またイラク人による政治が始まるし、万事が解決するのだが、果たしてそのようにトントンと進むのか、どうも確信が持てない。それは米国がイラク復興への主導権を、これで国連に譲るだろうか、またフセインを信奉してきた人たちのゲリラはなくなるのか、これはもう少し様子を見なければ判らない。

 さて、日本の自衛隊派遣はどうなるのか、フセインが拘束されたことで、治安回復が進むと考えるのは常識だろうから、小泉さんにとっては大朗報であったろう。「自衛隊は復興支援に行くのであって、戦争に行くのではない」に一歩近づいたことになる。

 フセインが捕まることは、何時かとの思いはあったが、この時期は意外であった。

(2003.12.15)

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イラクには陸自の先遣隊がついに入った。時間の問題ではあったが、この人たちがテロの犠牲になることは本当にないのだろうか。もし攻撃されたら戦うのか、小泉さんはその時は戦う、それは憲法違反なは当たらないとの解釈、正当防衛ということなのかどうか判らないけれど、そのような状況下に国が派遣するのだから、その解釈でよいのかどうか。ましてそれでテロリストが死亡したらどうなるのか、イラクの市民を傷つけたらどうなるのか、戦争放棄という憲法はどうなるのか。

 私は派遣する以上戦争状態に入ることがあることを予測しておかなければならないと思っている。それが嫌なら行かなければよい。日本は攻められる状況にはないのだから、防衛という観点から考えるのには無理がある。国連が中心になってのイラク制裁ならばまだよいのだが。

 国会でも同じようなことが、質問されていたが、小泉さんの答弁内容は今まで言ってきたことの繰り返し、即ち「非戦闘地域における人道支援」ここまで来れば我々は最早事態を黙って見守る以外にはないのだが、一体誰が非戦闘地域を決めるのか、もしそれが小泉さんならばまさにナンセンス。彼は自分に有利な情報だけを取り上げるに違いない。

 政治的にみるなら民主党はもっと堂々の論戦を張ればよいのに、これはもっと始末が悪い、この政党には政府を困らせるか、小泉さんを叩くしか、知恵はないようだ。政権交代政党というのには、余りにもお粗末である。
(2004.01.22.)

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 イラクに陸白の本隊がいよいよ入る。この出発式をテレビでみたが、戦時中の出征兵士を送る姿を見る思いであった。簡単に言えば戦地に友人を送ったのと変わらない。丁度同じ時に参議院でイラク支援の特別委員会が開かれていたが、何か間が抜けていた。「非戦闘地域における人道支援」がまずありきで、国会審議は付け足しであったことにならないか。

 これで日本もイラク文援に各国と足並みを揃えたと思うのであるが、一つ違うことは各国では派遣された兵士に犠牲が出ても内閣は変わらないだろうが、日本であれば小泉内閣は潰れる可能性がある、ことである。
(2004.02.05)

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 スペインでテロによる列車爆発が起こりその3日あとに行われた総選挙で与党が野党に敗れてしまった。野党の公約はイラクからの撤兵であり、これが果たしてどのようにこれから展開していくのか、注目されることであろう。

 スペイン軍のイラクでの活動は、米英に次ぐと言われており、これが撤兵すれば米国にとっては痛手になるようだし、スペインと英国、イタリアとの関係も微妙になる可能性もあるだろうし、新政権は公約を守らなければ国内で何が起きるか判らない。

 テロの撲滅に反対する国はないだろうが、それが自国の国民の生命に関することとなれば、政治家は判断に苦しむことになる。小泉首相はスペインの政変に関係なく、イラクの支援は方針通り続けると、議会の答弁で述べている。イラクでの世論調査でイラク国民に歓迎されているのは、米国と日本の軍とのこと、首相はこの結果に満足であろうが、今までイラクの為に主導的な努力していたスペインが、自国でテロに襲われたのであるから、日本が現地で評価されれば、今度は東京との心配が全くないとは言い切れない。私はこのテロを100%防げるとは到底信じることは出来ない。勿論そんなことが起こらないことを心から願うが、これが現実ではないか。

 米国は国連主導でのイラク復興に協力する立場に立つべきである。これが実現すれば世界の国が、スペインも含めてテロ撲滅と復興に一つになって協力するだろう。米国中心が続けば脱落する国が増え、そのつけは米国が負わねばならなくなる。ブッシュも今年は選挙があるのだからよく考えて欲しいものである。
(2004.03.16)