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イラクその後の問題 

 

 一体イラクはどうなるのだろうか。ブッシュは6月末に暫定政権に政治も治安も任せると明言してきたが、それは彼の一人芝居みたいで、これで米軍の占領が終わりイラク国民によってイラクは統治されるのだから、これは正しいことであり内外に歓迎されると思ったのであろう。しかしテロの武装集団はイラク人の警察官を襲い、それが6月末に近づくに従って激しくなり、お隣のトルコでは反ブッシュを掲げた大きなデモが起きる、その原因は暫定政権に治安を確保する力がないからだろうが、そんなことは米国ははじめから判っていたはずである。しかし国連の管理にしなければならないところまで、彼は追い込まれていたと見る。

 しかも、フランス、ドイツからは半ば見放され、辛うじてNATOの協力を得るとのことで妥協を余儀なくされ、何とか体面を保った。相手はテロ集団、断固その根を絶つというが、それを心の底から信用している国、国民がいるのだろうか。

 何故この集団が武器、弾薬を豊富に持っているのか、その資金は何処から集められているのか、これが判らない。米国はそのような情報を集めることが出来る国と思っていたが、その資金源についての情報を聞いた覚えがない。

 NHKのテレビでイラクでは電気を売る商売が繁盛しているという。極端な電力不足のためだろうが、石油がある国だから設備さえ整えれば考えられないこと、それとも電力不足の原因は他にあるのだろうか。まさかテロ集団が発電設備を破壊したとは思えない。

 政権の移譲まであと2日、この2日間に幾つの事件があるのだろうか、イラクの国民を襲うテロは悲しくなる。米国は「フセインの時の方がよかった」と言われないように、治安の確保、生活の確保にお金を使うこと、それを忘れたらこの戦いは終わらない、ということはブッシュさんが秋の大統領選挙に負けるひとである。

(2004.6.28.)

 この日の夜のニュースで、米国が正式に新しいイラク人による政府に主権を譲ったことを知った。何故早めたのか、それには当事者の考えがあってのことだろうが、一説には30日に大きなテロ事件が起こることを予想して早めたという。しかし主権の譲渡はあっても、米国軍は多国籍軍としてその侭駐留するし、まさに「形変わって姿変わらず」であるから、イラク国民は「自分たちの国がスタートした」との感慨を持てるのだろうか。しかしこれで責めてテロ事件がなくなってくれれば、と願う。

(2004.6.28.)

 この主権移譲式典は僅か6人によって、僅か5分で終わったという。何か如何にも慌てて行われたの感を拭えないが、私が注目したいのは、何故この席に国連の代表者がいなかったのか、である。米国の占領を終え多国籍軍が治安に当たるというのが、国連安保決議で、それに従って今回の主権移譲になったと思っていたが、それは間違いであったのだろうか。しかし連合国暫定当局のトップ、ブレマー行政官は直ちにイラクを離れているから国連安保理の決議通りにイラクの行政はイラク人に移ったのである。

 2日移譲を早めたことかその理由なのかは判らないが、国連と米国の間がしっくりしていないことを感ずる。米国は安保理の意見を無視して、テロ勢力の撲滅を掲げてイラク攻撃、フセイン打倒を開始したのであるが、13万人の兵力を投入しても収まらず、しかもスペイン、オランダを始めとする国は部隊を引き上げるか、引き上げを表明している。それが国連安保理の決議になり、多国籍軍になったと理解していた。しかし主権移譲という大事なセレモニーに国連を無視したのは誰か。そんなことは小さなことと考える向きもあろうが、筋の通らないことは後で新しい問題を起こす。

(2004.6.29.)