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プロ野球のスト

 プロ野球パシフィックリーグのブルーウェーブとバファローズの合併問題から、プロ野球界は荒れはじめてしまった。選手会はストも辞せずと球団に迫ったが、昨日(9月10日)一応スト回避で一つの山場は越したが、まだ予断は許されない。

 球団側はプロ野球は採算が合わない事業になったとの観点から、合併を言い出したのだろうが、本音は解散にあったのではないか。球団の減ることは選手にとってみれば働く場が少なくなるから当然抵抗するのだが、この選手会は法律による労働組合なのだろうか。それについて裁判所は、私にはよく判らないが、ストを容認しているともとれるが、今の話し合いは団体交渉とも見えない。

 そうした法律のことはさて措いて、プロ野球の人気が落ちたのはどこに原因があるのだろうか。確かにこのプロ野球のお蔭で日本にはいい選手が育っていた。米国のメジャーリーグに行ったイチロー、松井、野茂などが活躍しているし、今度のオリンピックでもメダルを獲得した。それは認めるのだが、12も球団あるのに、それを支配していたのは何人かのオーナーではなかったか。

渡辺、堤、野田などの名が浮かぶが、常勝の球団、言い換えればお客を多く呼べる球団オーナーの考えが罷り通っていたのではないか。収入の多い球団オーナーの発言が強くなかったか。

 プロ野球であるのだから、この事業は球団、選手、観客、そして球場から成り立っている筈である。しかしそれが球団、つまりオーナーの考えが中心になって動いているように思える。私の思い違いであるかも知れないが、ドラフト会議がよい選手を下位の球団から指名するのも、球団の力のバランスを図るためであった。それが選手の希望を無視するのは人権侵害との理屈で自由枠をつくった。本人の希望で2名までは選択できるというものらしいのだが、これはよい選手が力のある球団に入れる道を作ったようなものである。そして明治大学の一場選手に、ある球団は自分のところを希望するように働きかけ、そのため金銭を渡していたことが発覚し、その球団のオーナーが辞任するという不祥事があった。誰のための自由枠かといえば、選手の人権を守るためであったのが、球団のためになるように使われたのでは、どうしようもないと言う他はない。

 球団の経営は苦しいという。選手に億単位の報酬を払っているのだから当然と見ていたが、結局その煽りを受けたのは下位球団で、よい選手は確保したい、しかしやっと育ってもFAによって上位球団に持っていかれる、つまり財政の豊かな球団が強さを保てるように出来ているのではないか。

私は今度のスト問題の根は意外に深いと思っている。球団の合併が一つの動機になっただけで、ドラフトのこと、移籍のこと、そして選手にももっと発言できる機会をつくること、など解決しなければプロ野球は衰退していくのではないか。小泉さんではないけれど、ここにも構造改革が必要である。さもないとムサッカーにお株を奪われることになろう。

(2004.9.11.)

ついに経営者側と選手会は話し合いで決裂し、スト突入が決まった。経営者側は経営権を盾に頑張るし、選手会側はストは影響が大きいことは判っているけれど、この機会を逃せばプロ野球の未来は開けないとの観点から踏み切ったようだ。どっちにも理屈はあるけれど、これを機会に球団も選手もファンも納得できる解決をして欲しい。30歳代の若い社長二人が新球団の設立に意欲を表明したのには驚いたが、今の球団オーナーが採算に合わない事業と言っている中で、これは興味あることであった。オーナーの若返りは新風を吹き込むかも知れないという期待である。

 余計なことだが、プロ野球コミッショナーとの肩書きを持つ人がいる。しかし今度の両者の話合いの場にはいなかったようだし、またこの人には両者の言い分を聞いて裁定を下すという立場でもないようだ。形だけあって力はない、如何にも経営者側が作ったポストの気がする。がだからと言って私はコミッショナーに責任がないとは言わせない。

 何れにしてもこのストは残念の一言、どうか両者が冷静になってこれから話し合いをするか、両者が信頼の出来る方たちを交えて納得できる結論をファンの為にも引き出して欲しい。災い転じて福となす、を心から願っている。

(2004.9.18.)