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その後のイラク(2)

 この前この問題を取り上げたのは5ヶ月以前のことであった。その後どれだけ進展があったかと言われてみると、印象としては余りない。時々米軍がテロの首謀者ザルカウィーがいると思われるところを攻めたとか、武装勢力の自爆テロがあったとか、その繰り返しであったように思う。いま改めてこの問題を取り上げようとするのは、ファルージャで米軍が大規模な作戦を行って、その街の大半を占拠し支配したと報じられたからである。  
 イラク人による暫定政権がつくられて5ヶ月になるのだが、戦っているのは米軍と武装勢力とであり、国と国との戦いでないことに少しも変わりはない。米国はイラク国民による暫定政権をつくれば、少しは武装勢力の活動が収まり、それが来年1月の選挙に繋がると期待したのだろうが、思惑通り環境が改善されたとは少しも思えない。米国がフセイン政権を倒してやがて1年になろうとしているが、その打倒後に一体何人の米兵、イラク国民が命を落としたのだろうか。イラクでの戦いは最早終わることを知らない泥沼の状況と言えるのではないか。  
 米国はファルージァを完全に平定したというけれど、テロの首謀者を捕らえたとの報道はない。つまり点を1万人の兵を使って占拠したのであって、面はその侭だから下手をするとイラク全土に反米運動が起こり、そしてテロ組織と関係のない民衆の暴動が起こらないか、私はそれを怖れる。ファルージァの占領は終戦ではないのだ。  
 諸外国でもこうした空気を察知しているのだろう、オランダは来年3月に自衛隊の近くに駐在しているサマワからの撤退を決めたようだし、イギリスも国会でも派兵の引き上げを唱え始めたし、その他の国からは米軍の管轄を国連管理に移すべきとの声も次第に大きくなりつつある。そうした中でもブッシュはファル?ジァの占拠を高く評価し「テロ活動の芽は着々と摘み取っているし、米国はイラク国民のため、世界平和のために戦っている」と、話している。日本政府もこの12月に向けての自衛隊派遣要員の交代を進め、既に第4次部隊は出発した。それについて「サマワ地区は非戦闘地域である」と強調している。犠牲者が出なければ政府は目が覚めぬようだが、何がそうさせているのだろうか。私のような素人でさえ、これからはイラク全土で、テロやデモが選挙を阻止するために益々広がると予想するのに、政府の中にはそう考える人が一人もいないのだろか。私は自分の予想が当たらないことを願うけれど、このようなことを政府は表向きでなく秘密裡でいいから考えて欲しい。イラクのこれからが世界の情勢を大きく変えることのないよう、ブッシュさんにお願いしたい。  
 ブッシュ政権は来年の1月から新しい体制でスタートするが、内閣の要と言われるパウエル国務長官の交代が確実になった。パウエルは穏健派と言われていだ人だけに、この影響がどのように出てくるのか、注目しなければならない。この交代劇はパウエルが続投を辞退したからなのか、ブッシュが辞任を求めたからなのかは判らないけれど、何れにせよこの後任人事は世界が注目するところであるが、どうやら現在大統領補佐官のライス氏がその後任になりそうだ。彼女は黒人でこれが実現すれば、初めての黒人女性の国務長官が誕生する。  
 ここで心配なのが、ライス氏が穏健派のパウエル氏の後任として相応しいかどうか、であるが、今までの補佐官として記者会見などでの様子からみると、穏健派とは到底見えない気がする。つまりブッシュさんに近い考えと想像するし、またそうだから候補にもなったのだろうが、長官と補佐官では月とスッポン、外国に出て各国の首脳と話し合う機会も多くなるし、そこでブッシュさんの考えが何処まで通用するのかを確かめて見ることになるのだ。かすかな希望かも知れないが、彼女が世界の情勢を認識して、大統領を洗脳することを期待したい。
(2004.11.16.)