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拉致、誘拐とマスコミ

 10月15日は、北朝鮮に拉致されていた5人の人達が帰国した日で、早いものでもう1年たった。しかし残された家族の消息もはっきりしないし、何時家族が一緒に生活できるようになるのかの、見込みすらたっていない。
 またこの1年に国内では、とくに女の子が理由もなく無理やり車に乗せられる事件が頻発している。これをマスコミは誘拐事件として報道しているが、私は何故北朝鮮に連れていかれたのが拉致で、国内のが誘拐なのか判らない。国語辞典で調べてみると、拉致は「人を無理やり連れて行く」とあり、誘拐は「人をだまし誘いだすこと」とある。同じことのように思えるのだが、北朝鮮が行えば拉致で、国内で起これば誘拐としているマスコミは、本当に言葉の意味を知って使い分けしているのだろうか。
 国内の誘拐は警察の事件、拉致は国際的な事件として区別しているのかもしれないが、マスコミはもっとこの拉致事件を、真正面から取り上げる姿勢を示して欲しい。政府の報道だけに頼っているだけでは、如何にも情けない。
 民主主義には報道の自由がある。そして正義を守り、悪を叩く責務がある。一方民主国家には世論の力があり、この力の裏づけが報道である。だからマスコミは正しい事実を国民に伝えることに努力をしなければならない。しかしこの拉致事件では報道各社は概ね及び腰、マスコミの人が北朝鮮に潜入したとの話は聞いたことがない。その仕事は命を賭けてのことになり兼ねないから、どこのマスコミもそのような冒険を避けているのであろう。しかし戦争中には従軍記者がいたし、有名になった記者が亡くなっている。

 報道各社は北朝鮮の不当を論ずることは出来る筈、それなのに政府の弱腰を責めているが、私には何か納得ができない。政府としては外交上での限界があるとは思うが、国民の強い世論が起これば、政府ももっと前向きになれるかも知れない。これはマスコミが考えるべき一つの問題ではないだろうか。マスコミが政府の考え方にこの問題については同調しているのは何故か。お伺いしたい気持ちである。
(2003.10.15)