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拉致者家族の帰国

5月22日、小泉首相が全く突然と考えたくなるような北朝鮮の金正日を訪問し、地村、蓮池の家族5名がこの日のうちに帰ってきた。曽我さんの家族が夫の意思で一緒でなかったことは残念であったが、しかし5人でも日本に帰れてよかったと率直に思った。

 ところが行方不明10人の家族、今まで拉致家族会の代表を勤められている横田さんはこの不明者の一人めぐみさんのご両親であったのだが、この10人の消息が具体的に全くなかったことに、今度の首相訪問は最悪と言われ、また他の家族が首相に罵声を浴びせる始末、これには驚いた。消息不明の家族を連れて帰れ、とまでは望まないだろうが、その生死とか生活の状態くらいの情報が伝えられることを期待されていたのであろう。それに首相が食糧、医薬品の支援を表明したことが逆効果になって、怒りは爆発した、この首相訪問への期待が大きかったからと思うが、ご家族の北鮮に対する恨みは我々の想像を超えるものだった。この怒りは首相も予想していなかったのではないか。家族会の無念さは判らぬでもないが、一国の首相が拉致問題だけのために北鮮を訪問することなど、あり得ないと考えて欲しい。国民を、国益を考えなければならない人なのである。

 今度の首相訪問は水面下の折衝で蓮池、地村、曽我の家族8人の帰国に見込みがついたので行われたと思われる。蓮池さんが新しい家に引越し、家財を整えておられたことでも容易に想像はつくが、これも外交の成果と私は評価したい。唯一つ家族会の期待を除いては、であったが。

 曽我さんはお気の毒であった。曽我さんの手紙、ビデオを持参して首相はジェンキンス氏を説得したのに、ご本人が納得しなかったという。脱走それももう50年も前のことなのに、彼はまだそれに怯えている。私は思った。「自分の身はどうなってもよい、拉致された女性と結婚したのだから」の考えが彼には全くないないようだ。子供たちを母親の手に戻すとの気持ちに何故なれないのか、自分が自分の意思で脱走したことをどう思っているのか、私には判らない。はっきり言えば「自分のことしか考えない人」、小泉さんもこのことは判っただろう。しかし第三国での家族の話合いの場をつくるとのこと。それによってその家族が日本に来られることを祈る。曽我さんは家族と日本で生活したいと願っているのだから、それが出来るかどうかはジェンキンス氏の心次第になる。

 今度の小泉さんの北鮮訪問は、よかったと思う。曽我さん、10名の拉致者の消息など期待に反された一面もあるが、6ヶ国協議が続けられている中で、僅かでも得点されたことは日本のために決してマイナスにはなっていない。

(2004.5.24.)