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伝統を守るために

 今年もやがて終わろうとしているこの僅か1ケ月の間に、私は同じような話を何人もの方からお聞きした。「最近の土曜日はまるでパブリック」「女性会員の騒ぎには目を背けたくなる」それを注意した会員は「私は理事の家内です」と言われ、唖然とした、キャディーに聞けばそれが誰か判りますよ、などなど。

 一人や二人の会員からのお話なら、私も目をつぶる。しかしこう何人もの会員の方から同じ話を繰り返し聞くことは、会員の間では既に可なり流布されていると思われる。まずそれを理事会はどこまで承知しているのであろうか。次に何故私のもとに、このような話が語られるのか。奢った考えかも知れないが、それは私への期待ではないか、霞の伝統を会員はこれからも守っていかなければならないと、機会ある毎に言い続けてきたからかも知れない。

 私はこの噂は薄々ではあるが耳にしていた、土曜日には滅多に出掛けないが、偶々11月の土曜日に関西の知人からの強い要望で、ゲストを伴って倶楽部に来た。しかし食堂入ってみると、まるで他の倶楽部に来た気分、数年前なら土曜日でもこのような違和感はなかったような気がする。何かが変わった。それは何であるのか。

 前述のように女性会員に矛先が向いているが、倶楽部にはずっと以前から家族会員として女性はおられたし、委員会に加わって活躍された方も少なくない。しかし何故今日このような誹誘が出てきたのだろうか。私は最近の家族会員募集がその原因ではないかと考えている。ある会員は、これは理事会の横暴で、自分の奥さんを会員にしたい為にしたこと、とまで言っている。

 私は家族会員制度には、基本的には反対の考えである。それはご承知の方もおられると思うが、家族会員の制度は昔からあった。正会員の夫人である しかし夫が亡くなられたときは、その会員権はなくなるという条件であった。ところが或る夫人が夫が亡くなられたとき、退会したくないと主張し、それが理事会で認められたことから可笑しくなった。家族会員になれば自然と仲間ができ、ゴルフを楽しんでおられたのが、ご主人が亡くなると、その楽しみまでが失われるわけで、その心情は判らぬわけではないが、入会の条件であるのだから、その我侭を許すべきではなかったのである。結局は家族会員をAとBに分けて、Aの会員は希望すれば差額の入会金を支払って週日会員とすることとし、以後入会した会員Bは夫の死亡即退会としたのである。今度の家族会員もそのBのルールに則っていなければならない筈である。そうでなければ女性だけに週日会員入会の新しい道を開くことになる。

 倶楽部には女性会員のグループとして「せきれい会」があった。これは今どのような活躍されているのだろうか。私はこの会が霞における女性会員の在り方を、自然のうちにつくられ、守って来られたと思っている。これは私の想像であるが、今度家族会員になられた方たちは、同期生としてグループ化しているのではないか。他の古い女性会員とも付き合わずに、専ら自分たちのゴルフを愉しんでおられるのではなか。そうであれば、彼女たちにとって霞ヶ関カンツリー倶楽部は、単なるゴルフ場でしかないことになる。

 この私の推測が当たっているとすれば、これは由々しき問題といわざるを得ない。私はまずその実情を知りたい。いろいろ言って下さった方に、改めて詳しくお聞きしたいし、場合によってはアンケートでもしてみたい。更には従業員、キャディからも話を聞いてみたい。

 ここでお願いになるが、理事会は会員の教育を真剣に考えて欲しい。会員の質は理事会の責任ではなく、紹介者の責任と考えておられるかも知れないが、私が耳にした古い会員の声を無視してもよい筈もない。少なくとも理事会はその姿勢は絶えず持っていなければならない。私が望むのは「会員には、わが倶楽部の会員であることの自覚と誇りをしっかり持って貰うこと」、の上であとは各自で考えて貰う他はない。
 霞には自浄作用がある。この倶楽部に馴染めないものは何時の間にか消えていく。しかしそれを待っているわけにはいかない。倶楽部の名誉を傷つけた会員を除名できる権限を、理事会は持っていることを忘れてはならない。会員の声を例え些細なことでも聞き流す理事会であってはならない。それはわが倶楽部は会員の倶楽部であり、会員のための倶楽部だからである。
(2003.12.8)