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伝 統 と は

 伝統とは何か。小学館の国語大辞典によると「古くからの、しきたり・様式・傾向・思想・血筋など、有形無形の系統を受け伝えること。また受け継いだ系統」とある。これではよく判ったとは言えないけれど、私はこの言葉を企業なり、学校・団体なり、ゴルフ倶楽部なりが創立以来の精神を長く受け継いでいる美風のことだと漠然と思ってきた。ではその内容は何か、誰がどのように伝えてきたのか、それは夫々であるわけで、この会社の伝統、と言われれば説明できても、「伝統」という言葉の説明にはならない。私は「一つの組織の歴史あるよき慣習」と説明したいが如何なものだろうか。  

 もう1年も前になるが、このホームページ、C3 KCC(霞ヶ関カンツリー倶楽部)の中に「伝統を守るために」との一文を書いたが、今それを読み直してみると、この表題は「倶楽部の歴史を守るために」の方が相応しかった気がしている。これは私自身が伝統とは何か、をしっかり理解していなかったのに、安易にこの言葉を使ってしまったからだと反省する。  

 倶楽部に新しく入ってきた人たちは「この倶楽部の伝統を汚さないよう努めます」とよく言う。しかしこの人たちは倶楽部の伝統が何かをまだ知らないと思うのに、こういうことを言うのは、何回か足を運んでみて他の倶楽部とは違う何かを感じたからなのかも知れない。それを思うと「伝統」をどう理解すればよいのか、また考えてしまう。  最近のことであるが、何気なく古いフェアウエイ(倶楽部の機関誌)に目を通していたら、わが倶楽部と姉妹提携している茨木カントリー倶楽部の役員木村氏の寄稿が目に入った。2003年12月号で、表題は「人が歴史をつくり、歴史と伝統がひとをつくる」である。その一部を転載させて頂く。 「ゴルフ場にとって歴史を重ねてきたことは、どういうことなのか。まして名門の名をほしいままに、人に親しまれてきたその伝統は、きっと多くの先達の大変な努力とその努力が報われたことに対する誇りがあったに違いない。クラブハウス、コースのレイアウト、雄大さ、それらは全てに歴史と伝統を感じさせられるのだろうが、私は、それは空間から醸し出される雰囲気ではないかと思った。雰囲気とか、誇りとしうのは、結局は人である。」 この一文を改めて読んで我が思いの足りなさを知った。  結局は人であると結ばれているが、ここで人とは倶楽部では会員である。だから伝統ある倶楽部の会員は、その歴史を学び理解し、よきゴルファーであることに努め、そしてこの倶楽部を誇りに思えなくてはならないのである。私も心しなければならない。

(2004.12.10.)