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あずさヒュッテ

1998年5月16日、この日を山岳部OBはどれほど待ち望んでいたことだろうか。青山学院山岳部が自分たちの山小屋を持つことが出来た日である。私たちOBは、現役諸君を含めた後輩諸君に誇れる贈り物を残すことが出来たことを喜びとしている。奇しくもこの年は山岳部創立70年目の年であった。

 山小屋は鮫島山岳部長によって「あずさヒュッテ」と命名され、今日ではOB,OGの諸君、現役の諸君、そのご家族、或いは大学学生諸君に利用されている。日本アルプスのメッカ上高地に近く、奈川湖を眼下に見下ろし、冬季にはスキーも楽しめる。

 この度OB会の有志諸君の手によって「あずさヒュッテ建設記録」が制作されることになった。山岳部で山小屋を、との話は過去には何度かあったが、場所や資金の関係で、なかなか実現には至らなかった。今回は東京からも容易に行ける奈川を候補地とすることが出来、学校当局のご理解も得られて実現した。建物の設計管理に青山学院工業専門学校を卒業され、現地に近い松本で設計事務所を経営されている降幡廣信氏のご協力を頂くことができ、極めて順調に建設は進められた。資金2000万円も半分は学院が負担、残りをOBの責任となったが、OB,OGの他亡くなられたご遺族からのご協力もあって、1240万円を集めることができた。そこから建設費の負担分と備品などの費用を学院に寄付し、名実ともに山岳部の山小屋が生まれた。ここに学院当局、地元の皆様、建設にご尽力頂いた方々に深甚の感謝を申し上げる。

 山岳部創立70周年記念の年に「あずさヒュッテ」は完成した。ここで山岳部関係者は相互の親交を深め、山をさらに愛し、登山への研鑚を深めていくことであろう。山岳部の長い歴史の中で育てられた伝統を大切にし、素晴らしいアルピニストがこれから生まれることを期待したい。

 終わりにこの冊子の編集に携われた、木村太三郎君、西堀岳夫君、永井敬一君、白井茂君、中條好司君、羽田登志男君、のご努力に御礼を申し上げます。

2004年5月

                            鈴木 弘

(追記)

この原稿は山岳部OB会が「あずさヒュッテ」の建設記録の冊子をつくるにあたって、当時のOB会長の私に巻頭言の依頼があった。当日の献堂式に参加し感激したことは覚えているが、どんな挨拶をしたかはどうしても思い出せなかったが、その時の感激、夢をもとに書いたのがこの一文である。

(2004.4.26.)