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マスコミに負けるな  

 青山学院のような有名学校になるととかく世間から注目されるが,このことはマスコミからも絶えず目を向けられていることでもある。6月の理事会で、2月に行われた高等部の入試問題が沖縄タイムスに取り上げられ、それが共同通信で配信されたため、全国紙の朝毎読と日経、サンケイに一斉に掲載されたことで、改めて理事長と大村部長から報告された。  

 入試の英文和訳の問題の中に「But,to tell you truth, it was boring for me and I got tired of her story.」とあった。この6月は沖縄戦が終わって60周年、ひめゆりの搭などが注目される時にあたって、沖縄タイムスが4ケ月も前のこの入試問題を取り上げ、結果としては全国紙に掲載されてしまった。

 問題の和訳は「しかし本当のことを言うと、それは私にとってはつまらなくて、彼女の話に退屈してしまった」であるが、その中の「I got tired of her」の言葉「退屈」だけが一人歩きしてしまい、ひめゆりの搭の説明は退屈だった、と伝えられ、これが沖縄の人にとっては許し難いことなのであろう。もう60年も昔の話は、それも戦争のことは今の若い人たちにとって退屈、というのは何か判る気もするのだが、沖縄は未だに戦後、ということを内地の我々は気付かなくなっていたのだ。  

 沖縄は日本の国土で戦われた数少ないところであり、従って内地の我々と沖縄の人との戦争に対しての感覚はまるで違う、このことは私が沖縄を訪れて吃驚したことで憶えている。だからこの英文を書いた人は「退屈だったから、その通り記したのが何故悪い」になるのだが、ひめゆりの搭の説明が退屈といわれたら、沖縄の人はガイドの説明が退屈だとは取らずに、ひめゆりの搭そのものを否定されたような気になったのではないか。出題者の失敗はこのような配慮に欠けていたことに尽きる。大村部長は早速沖縄に飛んで関係者にお詫びしているが、私は「ひめゆりの搭」の当事者から指摘されたのならとにかく、マスコミから、とやかく言われる筋のものではない、と思っている。そして何故4ケ月も前のことが取り上げられたのか、それは当事者が青山だからなのか、今も判らない。(2005.6.27)