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ライブドアの躓き   

 ライブドアの堀江がとうとう逮捕され、そして社長を辞任した。彼の計算の中にはこのようなことは無かったに相違ないが、いま拘置所の中でどんな思いをしているのだろうか。しかもご本人は「自分は法を犯していない」と獄内で豪語している。
 私がライブドアを知ったのは昨年の3月、ニッポン放送の株式を時間外取引で大量に入手したときである。(このHP随想で昨年3月に書いた) 当時政府も「かくも大量の株式がこのような方法で取引されるとは予測していなかった」と述べていたが、それは「法律は犯していないが歓迎されぬ行為」ということである。ニッポン放送からみれば突然大株主が出てきたのだから、大事件になった。結局はフジ・サンケイグループとライブドアの話し合いになったのだが、一応双方が納得する条件で解決した。
 しかし今それを思うと、フジ・サンケイグループは堀江を自分のグループに立ち入ることを拒んだことで、やれやれとの気持ちになっただろうが、堀江から言えば予定通りの成果とみているのではないか。マスコミ関係に全くの素人がその株に手を出す、表向きはラジオ・テレビとインターネットの連携、と言うが、堀江の狙いが何であるのか判らなかった。が自分が株を取得することでニッポン放送の株価は上がる、そのタイミングを選んで売り抜くことではなかったか。マスコミがはじめとして周りが騒げば騒ぐほど彼には有利な展開になるのである。
 今になって堀江について聞く言葉は、単なるマネーゲームをしているのではないか、堀江は自分の財産を増やすことだけを考えている男ではないか、と言われるが、ニッポン放送の事件のとき、奥田経団連会長は彼を評して「金の力があれば何でも出来ると思っている男」と看破、まことに至言であった。
 堀江はいま33歳、それでこれだけの資金を動かせるのだから、才能はあるに違いない、また凡人ではないと.言えるが、彼には職業人としての倫理感がないと思う。株式の操作で億単位の利益を得ているが、その裏では誰か損している人がいる筈。それは当たり前のことだと言ってしまえばそれまなのだが、それが社会的に大きな影響を及ぼすと思えば、そこで一呼吸してみるのが、それを職とする者の良識ではないだろうか。堀江が今日あるのは、自分の才能と努力の結果と考えているだろうが、彼に泣かされた多くの人のことは全く無視していた、と思う。一時はもて囃されることはあっても、何れは社会からはみだしてしまう。彼の才を私は惜しむが、もっと大人の社会人にならなければ、その才が生きることはないだろう。
 堀江が何故逮捕されたのか、私から見ると株式の分割とかいろいろな操作は法律を犯していないし、時間外取引も正当な行為らしい。問題となるとすれば決算の粉飾にあると思う。とにかく株価が上がれば儲かる、だから企業を買収しその企業の株価を上げればそれで目的を達したことになる。その繰り返しで堀江は資産を築いてきた。ライブドアが儲ければ誰かが損する、フジテレビはライブドアの株価の値下がりで420億円の損をしたようだ。騙されたと言っているだろうけれど、裏返せば堀江が上手くやったということになる。
 これで堀江は最早表に出てくることはなくなったが、金融庁も東京証券取引所もこの堀江にキリキリ舞させられたことは、お粗末なことであった。
 
本筋から外れるが、この堀江が先の衆議院選挙で広島6区から立候補した。無所属であったが私は堀江を推したのは小泉さんだと思っている。それは自民党の中で郵政民営化反対を表明している亀井静香の対抗馬として知名人としての堀江を立てた。だから武部も竹中も堂々と現地に乗り込んで応援演説をし、武部に至っては「私の弟、息子と思っている」とまで言っていたが結果は落選、広島6区の選挙民の良識を褒めたいが、この堀江を担ぎ出した小泉さんは堀江に借りを作ったことになる。憎い亀井さんを落とすために堀江をぶつけたが、それが失敗したのだ。しかもその人が逮捕されて武部は反省するというが、そんな言葉で許されるものではない。「小泉に頼まれたからやった」と言える程度胸はないだろう。小泉の言いなりの幹事長、このことでマスコミから幾ら叩かれても・小泉から辞めてくれと言われなければ辞任することはないだろう。自分で責任のとれない男なのである。
(2006.1.25.)

 堀江が逮捕されるとマスコミはライブドアが如何に内容のない会社であったか、自社の業績がよいようにしたのもそれはすべて粉飾であったと断じ始めた。もっと早くマスコミが「この会社は可笑しい」と報じていれば、一般の投資家は救われていたかも知れない。それがなかったのは、自民党が無所属の堀江を大臣、幹事長を動員して応援したからではないか。マスコミは堀江が当選すると読んでいたのだろう。これは堀江にとっては思う壷であったろうが、落選すると俄かに逆風が吹き、過去の罪状まで堀りくじられ、それが逮捕につながったのだから、堀江は調子に乗りすぎたとしかイイようがない。少なくとも幹事長は責任を取って辞任すべきである。
(2006.2.3.)

 民主党は堀江が立候補したとき、武部幹事長の次男に3000万円ものお金が渡されたとしてその責任追及を国会の委員会で永田氏が追及、その証拠としてメールのコピーを示したが、自民党側は銀行などにもその事実は無いとして、メールそのものの信用性がないと反発し平行線になったが、党主会談でも前原は「国会調査権」を請求、勿論首相はこれを拒否、結果としてはメールそのものが本当にあったのかが曖昧になり、討論としては民主党は何も得ることがなく終った。いわば前原は破れた形になった。火のない所に煙は出ない、民主党はガセネタを掴まされたのではないか、そけれに永田が乗せられたのではないか、になりそうである。この問題は何時まで続くが判らないが、誰かが傷つくことだけは確かである。

 一方ライブドアは上場廃止にまで追い込まれそうである。熊谷とか20歳代の者が代表取締役になり、僅か1ケ月で逮捕され、これで上場どころか倒産の可能性まで生まれてきた。最早ここまできたら躓くなどという状態ではなくなっている。

(2006.2.23)