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衆議院予算委員会  

 自民党総裁選挙があって安倍晋三氏が総裁に選ばれ、その後開かれた臨時国会で首相の選挙が行われ、52歳の安倍総理が生まれた。この人は岸信介の孫、安倍晋太郎の子息だから、政治家としての血統には申し分はないがこの年齢で果たして、との懸念がなかったと言えば嘘になる。  
 総理になると、まず国会で所信表明をしなければならない、そしてその後に各党から代表質問を受け、それに答えなければならない、それも衆参の両方で、である。それが終ると予算委員会が始まる、このスケジュールの中で寝る時間はあるのか、と伺いたくなる。更に今度の連休には中国と韓国を訪れて首脳会談が行われるが、安倍さん、それなら航空機の中でゆっくりお休みなさいと申し上げたい。  
 私は暇が出来たことで、予算委員会の2日目の様子を、終日テレビで見ることができた。まず感じたことは首相の座に座ると、こんなにも落ち着いて、それに貫禄が伴うものかであった。これは誰でもそうなのだろうか。民主党の菅さんの質問に「私の本をちゃんと読んで下さいよ」と嗜める一幕もあった。 この総理の発言に私を驚かせたのは、「A級戦犯を犯罪人にしたのは国内法に因るのではなく、東京裁判である。だから政府としては犯罪者であるとか、ないとかいうべきではない」との発言、私は戦争犯罪をこのように今まで考えたことがなかった。この言葉がこれからの靖国参拝に影響するかどうかは別として、これを質問した人は靖国参拝を追及する積もりだったのだろうから、見事にはぐらかされてしまった。  
 もう一つのヒットは首相になって初めての外国訪問が中国、韓国になったこと。しかも予算委員会の始まる前にその日程までが決まっていたこと、今までの慣例からみれば「まず米国大統領訪問」と誰もが思ったに違いない。それが偶々北朝鮮の核実験問題があったからとも言えるが、中国、韓国になり、小泉さんの出来なかったことをあっという間に実現させてしまった。これが予算委員会でも大変な好意で迎えられた。そして小泉さんとは違った希望を安倍さんは国民に抱かせたかも知れない。  
 今度の委員会で田中真紀子さんが、民主党の持ち時間の中で質問をしたのには驚いた。天でお父さんの田中角栄氏は嘆いておられるかも知れない。しかし彼女は相変わらずの気炎を上げる程元気で、その言葉だけを聞いていると野党らしいのだが、私には若い後輩を励ましているように聞こえた。これは安倍さんにも言わず語らずの中で伝わったかも知れない。  
 安倍総理大臣はまず上々の船出をしたと言えそうである。近く衆議院の補欠選挙があると聞くが、それにもし勝ったら安倍内閣は、つまり自民党は当分安泰になるだろう、ということは総裁に若い安倍さんを選んだことが間違っていなかったことになる。
(2006.10.7)