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続・北鮮の核実験  

 北朝鮮の「核実験成功」の発表で米国、中国それに我が国も韓国も振り回されている。国連の安保理でなんとか制裁の議決に持ち込みたい米国、それに対し北鮮を追い込むことに消極的な中国が、どのように妥協するか、になった。偶々安保理の議長が日本の大島大使というのも巡り合わせであるが、その結論に注目したい。  
 結論までに時間が掛かっているのは、「本当に核実験が行われたのか」が明確でないことにあるようだ。しかし北朝鮮が「実験は成功した」と発表したのを、「それは嘘だろう」と言うには勇気がいるし、米国のように「発表したことが重大なのだ」、と考えることもできる。どうも各国の状況から、実験はしなかったのか、失敗であったのか、のどちらかのような気がしている。しなかったのと失敗は大きな違いではあるけれど、この両面を考えると中国が、強い刺激を与えるような、また金正日を狂わせるような決議は今は避けておこうというのも判る。  
 米国も中国もそして日本も、金正日を意識していることは誰の目からも判る。それも全く信用のおけない指導者だと思っている。だから北朝鮮国民が気の毒だと我々は考えるのだが、彼はこの気持ちを逆手にとっている。  
 私は今度の北鮮の核実験が失敗であったことを願う。そして国連安保理の制裁決議も、日本独自の制裁も、北朝鮮が実験失敗と宣言し、それを立証する時までとする。もっともその時は金正日体制が崩壊した時かも知れない。ならば私はその日の1日も早からんことを祈る。

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 13日に韓国のノムヒヨン大統領が、中国のコキントウ主席を北京に訪問した。これは改めて言うまでもなく、北鮮の核実験問題について国連安保理での決議の内容についての、意見交換であろう。この両国はどちらかといえば北鮮に対して融和策をとってきていたが、朝鮮半島の非核化には配慮しなければならないから、何時までも今の侭0続けられないとの判断であろう。この二人の指導者が金正日をどれだけ信用しているのかは不明だが、中国と韓国の足並みが揃うことは、北鮮にとってマイナスになることであろう。何れにしても安保理決議の内容をみれば、判ることと思う。
(2006.10.13)

  国連安保理は14日「北鮮の核実験実施の発表を非難し、北鮮との金融取引を禁止、北鮮の資産の凍結」などを盛り込んだ国連憲章第7章による決議を全会一致で採択した。軍事的な制裁は排除されたが、北鮮に出入りする貨物の検査には中国は不参加を表明したが、するかしないかは各国の判断に任すとの全会一致の決議は、国連加盟の国192国全てに適用されることになった。もっとも北鮮はこの決議の全面拒否をしたが、まずまずの成果と言えよう。  金正日は「核の保有によって北鮮は安泰」との考えのようで、これで米国と対等に話し合えると思っているようだ。その保有の為に多くの国民が生活に苦しんでいることには、目も向けていない。つまり核保有は金正日の立場を優先している。また南北統一も核があるからこれからは北が主導権を持って行える、と考えているかも知れない。このような前向きの考えで金正日は国内体制の維持を図っていこうとしていると思う。  長い目で見て今回の国連決議は世界の平和と安全にどれ程役立つか、それは北鮮がこれからどのように動くかで判ろうが、私は中国と金正日(北鮮ではない)の関係を知りたい。彼が怖いのは核保有している米国と中国、だから安倍さんの言うことなど「犬の遠吠え」に聞こえるかもしれないが、日本や韓国との貿易が止まれば、北鮮内の経済はどうなるのか、私はこれにも注目しておきたい。  ノムヒョン大統領に一言。北鮮の国民を救うのは最後は貴方ではないだろうか。体制の違う国であるけれど南北は同じ民族、第二次大戦後確かに北鮮は38度線を越えて南に攻め込んでおり、そのご記憶をお忘れになることはないだろうが、もしいま北鮮が同じ行動に出れば米国は直ちに徹底的な攻撃を行うことであろう。しかしそれでも同じ民族同士が戦うことである。「大統領貴方は北鮮の金正日と会談する気はありますか。彼が一番手を握り易いのは貴方だと私は思っています。」
(2006.10.15)

 米国のライス国務長官が日本、韓国、中国を訪れ、その足でロシアも訪れた。6ケ国協議に参加している北朝鮮を除いた全ての国を回り、それぞれの国の最高責任者と会談したことになる。勿論これは北鮮の制裁についての意見をまとめ、実行することに目的があるのだが、このライス長官の歴訪の結果は上々ではなくとも、可なりの成果をあげた、とみる。この制裁は何れじわじわと北朝鮮に影響するものだから、しはらくは見守らなければならない。我々は北鮮のヒステリックな発表にしはらく注目することにしよう。

(2006.10.21.)