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イラクで日本人が拘束される  

 このニュースは意外であった。斎藤昭彦さんがイスラム教過激派組織アンサール・スンナ軍に拉致され、重傷とのこと、何故日本人がイラクにいて、そして攻撃されたのかと疑問に思ったが、彼はイギリス警備会社ハート・セキュリティーの従業員として、米軍からの委託業務でイラクに派遣されていたのである。彼はイラクに行きたくてこの会社に入ったのかどうは判らないけれど、以前にジャーナリストが周囲の迷惑を考えずに行ったのとは違う。しかし米軍の委託を受けて現地で行動すれば、生命の危険があると承知であったことは確かであろう。だが万一自分に何かが起きた場合、日本政府がどれほど苦労するか、これは考えもしなかっただろう。  このような警備会社が実は多数存在する由で、信じられないが、これも米軍が十分な要員を自国で確保できないことに因るようである。そしてこの会社にはイラク人が多く採用されているから、結果としては彼等は仲間同志で血を流し合っていると言える。情けないことだが、イラクの治安がよくならない限り米国はこのような警備会社に頼らざるをえないのであろう。ここで一つの疑問は、何故斎藤さんを含むこの警備隊が襲われたのか。過激派は彼らの行動を予め知っていたのではないか、その情報を得ていたから襲撃が出来たのではないか。私は過激派は米軍、警備隊の動きを的確に知っていたとすれば、この闘いは何時までも続くような気がする。  
 この警備会社に日本人がいたことは政府も思いもよらなかったであろう。しかし表面的には「救出に全力を挙げる」と言って、内閣に担当の室を作ったが、どうもこの警備会社の実態も判っていないらしいし、米国に頼っても埒が明かないことであろうし、イラク政府に至ってはもっと頼りにならないだろう、こんな状況では政府は正確な情報を得ることも出来ないと思う。こういう中では政府がいくら努力しますと言っても、本来は手も足も出ないのではないか。
(2005.5.10)

 前稿を書いて10日になるが、最近はご本人についてのニュースは全くなくなってしまった。最近政府も何も言わなくなった。イラクの暫定政府は力がないし、過激派は米軍に加担する者は相手構わず襲撃するし、仲介していた聖職者も今度は動いている気配もない。一言で言えばお先真っ暗である。気の毒とは思うけれど、生存されている可能性は半々ではないか。
(2005.5.20)

 どうも斎藤さんは亡くなったようだ。攻撃された怪我が原因であったか、それとも殺されたのか明らかでないが、日本政府も米軍もイラク政府も何も出来ない侭に終わってしまった。斎藤さんはイラクの平和的復興に尽くしたいとのお気持ちであったろうが、尊い命を失われたことはお気の毒なことであった。
(2005.5.25)