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日本人はどうなっているのか  

 この頃新聞を見るのが嫌になる。それは少年が少女を殺害したという事件、深夜にマーケットを襲って売上金強奪する事件、「何故こんなことが」と考えてしまう。これも勿論怪しからぬ事件だが、私が最も嫌悪する事件とは、自分本来の職業の上で起こす事件である。最近これに関わる報道を新聞で拾ってみても、その数は少なくない。その幾つかをここに並べてみよう。

 1.  恐ろしいと思ったのは姉歯建築設計事務所の構造計算書の偽造である。偽造したらどうなるのか、建築業者は建築費を安価にすることができ、万一のことがあっても、建築が認可されているから設計書通り建築したことになる。監督する官庁の手抜きかと思ったら、今はその審査も民間任せだそうで、それを知っているから構造計算書の偽造も出来たのである。

 2.成田国際空港の電機関連事業の落札に談合があった事件。これには三菱電機などの大手が参画している。国際空港のような大きな信頼の高い会社が何故公正な競争入札ができなかったのか。これは発注する側と受ける側の担当者双方に罪がある。「三菱電機お前もか」と一喝したくなる。

 3.全国酒小売組合の年金基金と政治資金の不正問題。これは使われた金額があまりにも大きくて、それが何故表沙汰に今までならなかったのか。その方が不思議である。たった一人の事務局長にかき回されたとは情けない話。年金のほかに政治資金もあってこの事務局長が幾ら着服したのか、まだ判っていないが、相当の額だろう。酒屋さんは仰天したり、がっくりしたことであろう。

 4.北海道の警察署員が請求書を水増しして、業務上の横領と詐欺の疑いで2人が逮捕された。ともに会計係の立場を利用したもので、その額は合わせて3000万円、この二人の勤務する警察署は札幌と函館と分かれているから、二人が話し合って行ったのではない。如何に警察の上司の監督が杜撰であるか判るが、罪を犯せばどのようなことになるか、一番よく承知している警察官が犯した罪である。こうした公務員は税金によって給与が支払われている人たち、国民は詐欺師のために税を納めているのではない。しかし着服された金額は永久に納税者には戻らない。

 5.北海道札幌にある浅井学園では補助金の一部が、理事長の自宅補修工事に流用された事件、学校は建物などの改修には国から補助金が交付されるが、それを悪用したわけで、理事長ワンマンの学校法人ではあり勝ちのことである。業者と裏でどのようなことがあったか判らないけれど、これを理事長が全く知らないということはない。    

 これらは僅か3日の間に新聞に掲載された記事の中から拾ったものである。この他には民主党西村真悟代議士の鈴木浩治元秘書が弁護士法違反まの事件、示談交渉の本来の職業である「秘書」の仕事の上ではなく、資格を持たない「弁護士」としての仕事をして報酬を得ていた犯罪と考えたので職業上ではないと考えて対象外としたが、しかし紙一重、私腹を肥やしたことには変わりない。

 何故日本人はお金のために罪になることを平気で犯すようになったのか。これは社会環境の所為ではなく、本人の自覚の欠如というか、我々の常識では考えられない行為というより他はない。 日本人は信仰心がないと言う。しかし信仰心の有無とは関係なく、正と不正を見分ける心は子供の内に教えることが肝要と思う。小学校、中学のうち、つまり義務教育うちに人としての道徳をしっかり身につけさせることが大切である。この年齢の時に覚えたことは意外と忘れない、つまり身につく。ここまで考えると、反道徳的犯罪が多いのは文部科学省にもその責任の一端があると言いたい。

(2005.11.20)

 前術した西村代議士の秘書の犯罪は紙一重と書いたが、何と代議士と秘書とはグルであったことが判明した。こうなると政治家が詐欺まがいの犯罪を犯したことになる。代議士が職業かどうかの判断は判らないけれど、その地位を利用しての犯罪であることは間違いない。国民から選ばれた代議士の罪は最も嫌悪する。このことを追記しておく。

(2005.11.25.)

追記の第2号。姉歯建築設計士の問題は、国も放置できないとの見解を示すところまで大きくなっていった。それはイーホームズという構造計算の審査をしていた会社について、姉歯事務所は「ここが最も審査が甘い」と判断したのでここに依頼したと述べている。もう一つは九州の木村建設、最初社長は姉歯を信頼していたような発言であったのが、この会社の東京支店長が「鉄筋の量を減らせとか、リベートを要求していた」ことが明らかになって、社長も兜を脱いだ形になってしまった。イーホームズも木村建設も本来の事業の立場を利用しての罪、この両者の行為は許されない。私に言わせれば職業倫理の欠如、建築業界が耐震性を無視し、住民の安全性をも考えない業者が一部にせよ存在することは、何処を向いて仕事をしているのか、と言いたいし、強く反省を求める。

(2005.11.26.)

西村代議士が逮捕された。弁護士会を退会したりしてきたが、議員も辞職せざるを得ないだろう。民主党に不正を犯して議員辞職に追い込まれた人が多いのは、どうしてだろう。前原さんも頭が痛いことだろう。 また建築設計士の事件は、国会で参考人を呼んで審議するということになってしまった。この問題ではだれが加害者で、だれが被害者かが輻輳している。が一番の被害者は何も知らずに入居した人たち、そう思えば国会で取り上げられるのも当然だろうが、どこまで真実が明かされるのか、それは保証の限りではない。

(2005.11.29.)