ミニカウンセリング 愛と性の悩み



 19歳の女子大生です。クラブの先輩と付き合っていますが、時々私たちの愛は本物な
のだろうかと不安になることがあります。彼の心をつなぎ止め、愛を本物にするためには
どうしたらいいのでしょうか。


 心の片隅にある直感というものは、恐ろしいほどの正確さで、自分の内にある問題点を
指摘してくれるものです。
 愛の喜びを感じながらも、それ以上の不安を感じるというのは、やはりその愛が不完全
であることを、本心が知っている以外の何ものでもありません。そもそも19歳というあ
なたの年齢で、愛という言葉の意味がどれだけ分かるでしょう。「愛」という言葉に酔い
しれているだけであり、相手はたまたまあなたの身近にいたというだけの人ではないでし
ょうか。
 十代後半から二十代前半にかけての頃は、恋に恋する時期であり、夫婦の愛に入る前の
準備期間のようなものです。ふとしたきっかけで知り合った異性が、いつの間にか心の中
で大きな存在となり、理想の異性となっていきます。
 恋しているのは実際の彼ではなく、あなたの心の中にある理想の男性像であり、彼はあ
なたの恋の夢を実現するために、必要だけなのではないでしょうか。
 その証拠に、実際の相手の姿を知ると「私が愛していた人はこんな人ではなかった」と
失望し、再び夢の恋人を捜し求めようとしてきたのが、男女の現実だったのです。
 恋の思いの中に身を置くことは、たしかに喜びがあり、小さな野の草花さえも美しく見
えてきます。「人は恋をすると詩人になる」と言われるように人生が輝いて見えてきます
が、それは砂漠の蜃気楼のようなものであり、恋の喜び自体を求める人は、結局何も得る
ことができずに人生を終わってしまうようになります。
 心の中から理想の異性像がなくなったとき、初めて異性を真に愛することができると心
理学者は分析しています。本物の愛なら、彼の弱さや足りなさを知って、自分が支えてい
こうと思うもので、姿かたちや学歴や財産ではなく、彼の生き方や価値観に共鳴し、共に
支えあって生きていこうとするものではないでしょうか。
 男性と女性は、磁石のN極とS極のように自然に引き合うものであり、異性を好きにな
るのには何の努力も要りません。
 ところが、愛するということは相手の問題点も生き方も全部知ったうえで、相手の幸福
のために尽くしていこうというものですから、好きだから好ましいからという条件つきの
ものではなく、努力と意志力を必要とするものなのです。
 恋愛は、愛に到達するための入り口にはなりますが、人生の目的そのものではありませ
ん。
 あなたが本物の幸福をつかみたいのなら、恋愛感情の中に流されていきがちな自分の心
をコントロールし、実際の彼の姿を正しく知るように努力して下さい。
 そして、彼のいやな姿を知った時、自分がどのように対処できるか研究してみてくださ
い。「許せない」「とても耐えられない」というのであれば、あなたはまだ人を愛せる段
階ではないということです。
 今のあなたに必要なことは、不確かな彼との間を手錬手管を使ってなんとかするという
ことではなく、もっと男性を見る目を肥やし自分の心を磨き、やがて良き妻と良き母にな
るための準備をするということです。
 男性は彼一人ではありません。恋している時は、彼こそすべてであり彼を失ったら二度
と彼のような人には出会えないに違いないと思い込んでしまうものですが、心の目を広く
持たないと、目の前の男性に心を奪われて、本来あなたに最もふさわしい人を逃してしま
うことにもなりかねません。
 あせる必要は全くありません。自分を磨き、内外共に魅力ある女性となる努力をして下
さい。何か一つ自信を持って打ち込めるものを持ち、常に向上心を持ち、不平不満を言わ
ず、笑顔と誠意で人に接するようにして下さい。数年後、男性のみならず女性までも、あ
なたを眩しく見つめるようになることでしょう。


 まだ特定の恋人はいませんが、女性のことを考える時、相手を大切にしロマンチックな
恋をしたいという思いと、性の対象として見たいという欲望が心の中でいつも葛藤し、と
ても不自由です。
 電車やエレベーターの中で、若い女性を見ては品定めをしている自分に、ほとほと愛想
が尽きますし、雑誌のヌード写真をこっそり見てはため息をついている自分も、あさまし
いものだと思います。こんなことで悩むのではなく、みんながやっているように適当に遊
んだら楽なのかもしれませんが。


 男性は誰もが性欲の奴隷のような存在であり、愛と性欲の葛藤の中でどうしたらいいの
か分からないというのが、正直なところではないでしょうか。心が葛藤し迷っていること
を人に知られたくないために、純愛派かプレーボーイ派かどちらかのふりをして強がって
いるのです。
 青春という言葉が過去のものとなった世代からのアドバイスとして、二つのポイントを
挙げておきたいと思います。
 まず初めに、ロマンチックな恋に憧れているという段階では、真実の愛とは程遠いとい
うことです。男性ならば誰でも、アイドルタレントのような存在に心引かれるものですが、
それは「かわいらしいから」「美しいから」という姿かたちによるものであり、その女性
の生き方や人格を知って、それを大切にしてあげようというものではありません。
 その女性の中に、自分にとっての理想の女性像を投影し、理想の女性像に恋しているの
ですから、実際の相手の姿を知ると幻滅して、百年の恋もさめてしまうようになってしま
います。
 また、どんなに「かわいらしく」「美しく」ても、交際するようになり一緒にいるよう
になると、それが当然のこととなりますから、「かわいらしさ」や「美しさ」は、心引か
れる条件とはならなくなってきます。それどころか気配りのなさやプライドの強さ、わが
ままなところ等が目につくようになると、「かわいらしさ」や「美しさ」がむしろ無神経
さや醜さに見えてきますから恐ろしいものです。
 若い女性は、若さだけで美しいものです。しかし、女性の本当の美しさや魅力というも
のは、二十代後半になり、若いことによる魅力ではごまかせなくなってきた時に、はっき
りと現われるようになってきます。
 「かわいらしさ」や「美しさ」「若さ」という非常に紛らわしい表面の奥にある、人間
としての大切なものを見抜く目を、まず養うことがあなたにとって一番大切なことです。
 次に、若い男性が決定的に誤解していることを指摘したいと思います。つまり、性体験
それ自体ではそんなに快感は得られないということです。
 十代後半から二十代前半の男性は、最も強い性欲に振り回されていますから、とにかく
性関係を結ぶことしか眼中になく、性関係を結べば素晴らしい快感を得ることができると
思い込んでいます。
 しかし実際の性関係は、当然のことながら両者の心と体との相対的関係のなかで行われ
るわけですから、男性の一方的な性欲だけではうまくいかず、思ったほどの快楽が得られ
ないのが現実です。
 結婚当時よりも夫婦として年期が入ってきた時の方が、性生活の快楽が大きいという事
実からも分かるように、お互いの心が愛情によって深く結ばれ、その上で肉体的にも結ば
れた時、初めてお互いが快感を得ることができるものなのです。
 女性は男性と違って、性関係がなくても結構平気でいられます。肉体を愛撫されるより
も、心を愛して欲しいというのが女性の願いです。
 男性は、女性も男性との性関係を求めているはずであると思いがちですが、女性は男性
と根本的に違うということをよくよく知っておく必要があります。
 つまり男性の快楽指向に対して、女性は愛情指向であるということであり、風俗営業の
女性ですら、やがては愛情のある人と結婚したいと思っているのが現実です。
 回りくどくなりましたが、本当の意味での性の快楽は、相手への思いやりと愛情が必要
であり、生涯の伴侶となる人と結婚して、心が満足した状態でなければ得られないと、私
は考えています。
 あせる必要は全くありません。その愛がいつ崩れてしまうか分からないという、不安な
心のままでは、性関係の中で本当の意味で心を解放することはできませんから、心と体が
共鳴するような深い快楽は得られません。
 興味本意の性体験は失望と、自分自身の中で大切にしていた何か、つまり青春を力いっ
ぱい生きようとしていた誇りや愛情を失ってしまうという結果になりかねません。
 性を安易に扱った人は、心の張りや人間としての愛情や喜びに欠けるようになってしま
います。
 性を大切にすることは、自分の生き方や心を大切にすることを意味しています。性生活
は、夫婦間にのみ許される男女の深い理解の仕方であり、性の快楽は夫婦で築き上げてい
く世界なのです。
 やがて幸せな結婚生活を送ることができるように、性の興味や誘惑に負けないよう努力
して下さい。

 二年前に熱烈な恋愛をして結婚したのですが、結婚してからこんななずではないという
ことが多く、はた目には仲良く見えても何かしっくりとせずに悩んでおります。趣味は旅
行で一緒だったのですが、結婚後は主人の仕事が忙しいせいもあって、以前のように一緒
に行くこともなくなりました。浮気をしているふうではありませんが、帰りも遅く会話も
とだえがちです。いったいどうしたらいいのでしょうか。

 結婚してからこんなはずではなかったというのは、あなただけでなく御主人の方も同じ
ではないでしょうか。結婚する前、いくら好ましく思えても趣味が同じであっても、二十
数年間異なった環境の中で育った二人が急に生活を共にするようになって、まず巧くいく
はずがありません。
 歯磨きの仕方からお金の使い方、料理の好み、感情表現の仕方まですべてが違いますか
らびっくりすることの方が多く、恋愛時代に相手に描いていた理想が高ければ高いほど、
その落差にショックを受け、夫婦としての冷却期間が生まれてくるということになってし
まいます。異文化の中で生活するようなものですから、そのカルチャーショックをどう乗
り切るかが問題です。
 夫婦は一心同体であるという言葉がありますが、これは何十年と連れ添った結果のこと
であり、まずは他人であると意識することが大切だと思います。他人といっても最も近い
他人という意味ですが、自分と違う価値観と人格を持った他人と共同生活をするために、
思いやりや忍耐が必要であり、これが本当の意味での夫婦の愛情ということになります。
 あなたは恋愛時代の理想や、夫はこうあるべきだというような理想を持っていて、心の
奥底で御主人を批判してはいないでしょうか。人間は、自分が受け入れられているかどう
か敏感に感じるものであり、特に男性は女性よりもナイーブで傷つきやすい心を持ってい
ますから、あなたの何気ない言葉や態度でショックを受け、心を閉ざしてしまっているの
かもしれません。
 人間は人の欠点はよく見えますが、自分の欠点は見えにくいものですから、相手を一方
的に批判し攻撃してしまいがちですが、問題のあるのは自分も同じです。自分の欠点や問
題を相手も我慢しようとしているのですから、自分も相手を許し受け入れてあげなければ
なりません。それができる人が真の意味での大人ということであり、夫婦になるためには、
実は相手を受けとめることのできる度量、つまり本当の意味での愛情を持った人間になっ
ている必要があったのです。
 結婚生活とは、自分の全身全霊を持って相手の幸福のために尽くす生活であり、相手の
足りない所や欠点を見つけたら、むしろ自分がその穴を埋め、支えてあげなければという
ものではないでしょうか。
 「うちの主人は子供みたいで駄目な所だらけですけど、そうだからこそ私が必要なんで
す。」とにっこり笑いながら尽くしてくれる夫人なら、容姿を越えて夫にとって最もかわ
いい妻と言えるのではないでしょうか。
 男は家を出ると七人の敵がいると言われるように、上下左右に気を使いながら神経をす
り減らし、くたくたになって家に帰ってきます。もちろん妻の方も近所付き合いがあった
り、炊事や掃除や育児があって疲れているわけですが、夫の立場から言えば「お帰りなさ
い。ご苦労さまでした」と、温かくやさしく迎えてほしいわけです。
 近代的女性からすれば、そんなのは男性のエゴということになるのでしょうが、家庭く
らいは、わがままを言ったり甘えたりできる場であって欲しいわけです。もちろん夫だけ
一方的に甘えるのではなく、時には妻も甘えたりわがままを言ったりできる関係ができれ
ば理想的です。願わくば、お互いが同時に感情的になったり、わがままを言ったりしない
ように、どちらかが先に折れることが必要です。負けるが勝ちと思って下さい。
 この広い世界の中で、一人の男性と一人の女性が出会い生涯を共にするようになったわ
けですから、二人の出会いには何らかの運命的な意味があると考えられます。相手が自分
にとってふさわしい人と思い込み、最愛の夫婦となれるように努力して下さい。
 夫婦の愛の世界は、二人で育て築きあげていくものです。恋愛感情とは根本的に違うも
のであり、信頼と誠意によって作りあげられる着実な世界です。来世において再び巡り合
う時にも、必ずあなたと夫婦になりたいという愛情の世界を築いて下さい。
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