はじめに



 現代の青年像を愛の目で見つめ続ける、ヒューマンエッセイストであり、私にとって畏
友でもある酒井さん(元新天地編集長)がこのたび青春説法パートU「可能性の扉をたた
け」を出版されました、その動機と脱稿までのご苦労に対し、心からの祝福と敬意を表し
たいと思います。
 「衣食足りて、礼節を知る」の格言がありますが、ファッションは百花繚乱、グルメは
飽食と昭和元禄を謳歌している今日、まことに残念なことには肝心の礼節や心の空洞化現
象、「精神飢餓症候群(メンタル、ハンガー、シンドローム)」が発生してガン細胞のよ
うに国内に蔓延し、さらに精神的ボートピープルとして世界を漂流しかねません。
 この混沌としたふ抜け社会を立て直し、21世紀のリーダーとして活躍される青年諸君
が、一度だけの貴重な青春を完全燃焼できる精神的基盤と行動指針をどこに求めるか。こ
の二点の疑問に著者は「現在に安住する者は若者にあらず」というキーワードから、一つ
は世界観、宗教観のマクロ的視点と、今一つは現在の自分をどうしたらよいのか、日常的
な「自分学」ともいえる自己啓発のミクロ的視点の両面から適確に応えています。いずれ
も酒井さん自身の汗とホコリにまみれた体験談(ベトナム難民キャンプ、韓国歴史の旅な
ど)と豊富なデータ、そして自己反省記など熱気と迫力をもって語りかけてくれます。
 馬で行くことも、車で行くことも、
 ふたりで行くことも、三人で行くこともできる。
 だが最後の一歩は、自分ひとりで歩かねばならない。
         人生という道(ヘルマン、ヘッセ)
 もう一人の新しい自分の創造へ、ガイドブックとして必ずお役に立つでしょう。
                         経営コンサルタント 石橋義弘