性格の悩みを持っている人は意外に多い


 今の自分から変わりたい、嫌な性格を変えたいがどうしたらいいか分からないという人
が多いと思います。性格の悩みは多かれ少なかれ誰もが持っている課題ですが、なかなか
これといった解決方法が見つからず、あきらめている人がほとんどです。
 書店を見ても、カーネギーの「道は開ける」から「マーフィーの成功法則」その他と多
くの本が並んでいますが、翻訳もののほうが多いせいか何となくピンと来なくて、あまり
読む気になれないという人が多いのではないでしょうか。私も高校時代から自分の性格が
嫌でたまらず、劣等感のかたまりみたいな暗い青春時代を過ごしていました。しかし気持
ちの持ちようで、暗い性格も少しずつ変わるということに気付かされ、その後の努力によ
って相当変わることができました。
「私は本当は内気で、内向的で、傷つきやすいんです」と言っても、誰もなかなか信じて
くれません。
 人間嫌いで人と話すのが苦手だった私も、今では仕事柄多くの人と話すようになってき
ましたが、性格の悩みを持っている人が意外に多いという事実に、改めて驚いている次第
です。

変わりたいと真剣に思わなければ変わらない


 誰もが劣等感や対人恐怖症やその他のさまざまな性格上の悩みを持っているわけですが、
大抵の人が変わることはできないと諦めてしまっています。
 ここで大切なことがあります。それは「人間は変わることができる」という原則であり、
それを言い換えれば「変わりたいと真剣に思わなければ、変わることはできない」という
人生の大法則です。
 この法則は、人生を有意義に過ごしている人にとっては周知の事実ですが、この法則を
知り、それを実際に応用している人は意外に少ないのです。
 最近スポーツの世界でも、イメージトレーニングといって理想のフォームを常にイメー
ジさせることによって、自分のフォームを完成させる方法が非常に有効であることが実証
されています。これも願うとおりになることの実証であり、人間の精神力がいかに大きな
ものであるかを教えてくれる一例です。
 「変わることができない」と思っている最大の理由は、自分の中にある嫌な性格がもと
もと自分の本性だと思い込んでいることにあります。闘うべき相手が自分自身であるとし
たら、なかなか闘えるものではありません。やはり自分はかわいいものですし、心に大き
な壁を巡らせて常に自分を守っているくらいですから、むしろ防御本能で「変わりたくな
い」とさえ思っています。
 しかし、自分の本性だと思っているものが、果たして本当に自分自身なのでしょうか。
ひねくれたり、ふてくされたりしている嫌な心は、そうなりたくてなったものではなく、
望まずしていつの間にか巣くってしまっている存在です。
 そして人間の性格のほとんどは、家庭の中の人間関係によって作りあげられたものです
から、両親の影響は決定的なものがあります。つまり両親が解決できなかった問題をその
まま相続しているわけですが、両親もまたその前の両親から解決できなかった課題を相続
している。これを私は「恨みの雪ダルマ式現象」と名付けています。愛されなかったとい
う寂しい心が、何倍、何十倍、何百倍にもなって現在の自分の心の中に存在しています。
 度重なる不信感と失望によって、心は冷たい氷のように閉ざされ、信頼や希望や愛情と
いった人間らしい素直な心が、表現できないようになってしまったのです。愛されなかっ
たという愛の恨みがどれくらい深いものか、それが性格の悩みとして表れているのです。
 このように分析してみる時、自分も願わず、先祖も願わずに苦しめられてきたこの問題
は、自分の本性ではなく、人間の本性でもなく、何かの原因で人類始祖の心に焼きつけら
れた精神的なショックによって生じたものであろうと推測することができます。
 つまり、今まで自分だと思っていた嫌な心は、自分自身ではなく、後遺症による傷跡の
ようなものである。そうと分かれば、いつまでも大事に抱えているのはむしろ、いまいま
しく、はっきりと決別すべきです。
 「こんな自分はもう嫌だ。私はこんな自分になるために生まれてきたのではないんだ。
分も両親も、先祖も、すべての人々も同じように苦しめられてきた。今まで自分だけと思
ってきたけれど、同じようにすべての人が苦しめられてきたなんて、許せない、絶対に許
せない。私は変わる、必ず変わってみせる。素晴らしい本来の自分に変わってみせるぞ」
 こうはっきり誓ってください。今までの人生のすべての悔しさと涙を思い出して、命懸
けで宣誓するなら、あなたは必ず変わることができます。悪への怒りをエネルギーにして
立ち上がるのです。

理想の自分の姿を具体的に思い浮かべる


 さてそれでは、過去の自分に決別してどんな人間になったらいいのでしょうか。もちろ
ん、人間の器や個性というものがありますから、まったく見当違いの理想像を思い浮かべ
ることはないと思いますが、こうありたいという理想像を思い浮かべてください。
「いつもにこにこしていたい」
「思いやりのある優しい人間になりたい」
「信念のある人間になりたい」
「正義感が強く毅然とした人間になりたい」
「人を楽しくさせられる人間になりたい」
「人の心の痛みが分かる人間になりたい」
「積極的に話しかけることのできる人間になりたい」
 自分はこうありたいというものが、誰でもひとつやふたつあると思います。今までだっ
たら恥ずかしくて、そんなことはとても口に出して言えなかったかもしれませんが、心に
うずくこうありたいという思いが、実はあなたに与えられている本来の性格なのです。
 意識と無意識下にある、愛の恨みによってあなたの本性は今まで閉ざされていましたが
凍りついた大地の中にも生命の種が確実にまかれているように、あなたの心の中にも善な
る本性が与えられていることを確信してください。
 さあこうして自分の信条が決まったら、それを大きく書いて机の前に張り出しましょう。
そして「私はいつもにこにこしていて、思いやりのある優しい人間です」というように、
一日何回も思いを込めて大きな声で朗読してください。電車に乗っている時も、心の中で
何度も何度もつぶやくのです。
 まず自分自身がそういう人間であると信じきって、次にそのように演じきることが大切
です。朝、起床した時にぼうっとして起き上がるのではなく、「新しい一日が今から出発
する。今日も何かいいことがあるに違いない。素晴らしい人との出会いや、楽しいことが
必ずあるに違いない」と、喜びと期待で胸をわくわくさせながら、さっと立ち上がるので
す。
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