成績不振の傾向と対策
中学受験をする生徒で、成績が上がらなくて困っている方は多いと思います。
代表的な症状と対策をご紹介します。
@塾のクラスが上がると、すぐ落ちる
Q進学塾のテストで良い点数を取ってクラスが上がると、すぐ次のテストが振るわずに下がってしまう。また次回のテストでは点数が上がるので、クラスが上がったり下がったりの繰り返しです。何とか上位のクラスに定着をして欲しいのですが。 |
考えられる理由はいくつかあります。
(1)もともとギリギリの順位
それぞれの生徒は「生物は得意だが水溶液は苦手」などで成績の変動はあるにしても、4教科総合の成績は大きく変わるものではありません。ギリギリの順位の生徒は、もともと上下しやすく、どちらのクラスになるかは、誤差の範囲なのです。
(2)先生との相性
担当する先生が違うと、先生との相性もあります。腕の良し悪しもあると思いますが、先生の授業スタイルに合っているかが大きいでしょう。
たとえば、勉強嫌いの男子は、指導歴30年のベテラン講師の分かりやすい説明よりも、若手講師が「おい、今度宿題忘れたら、くすぐりの刑に処す!」などと、くだらない冗談を言いながら教える方に引きつけられます。引きつける若手講師が基礎クラスを担当していれば得点アップ、分かりやすいベテラン講師だと点が低迷することもありえます。
(3)曜日のバランス
毎週日曜日に1週間習った範囲のテストをする場合、土曜日に習った教科は復習をする時間がとりにくくなります。算数は授業をうければ納得はすると思いますが、自宅である程度問題を解かないと、得点力はつきません。
土曜日に算数だと、その点不利になります。
(あまり勉強しない生徒は、土曜日に理社だと、授業を受けた直後で忘れていないため理社が良くなることもありえます) 同じクラスの他の生徒も同じ条件ですが、曜日に合わせた勉強のサイクルができないままの生徒もいると思います。
(4)自信の有無
上位のクラスだと、説明が速いので、理解できない点が比較的多い。生徒の中には、自信が持てる状態なら頭がスッキリして実力が十分発揮できるタイプの生徒がいます。
たとえば算数の文章題の宿題を出すのでも、基礎クラスは易しい問題10問、上位クラスは難しい問題が10問出されます。成績が境目の生徒ですと、易しい問題は8問正解、難しい問題は4問正解くらいでしょう。解説を聞く時に、易しい問題なら10問のうち2箇所だけ集中して聞けばよいのに対し、難しい問題は10問中6問(それも高度な問題)も理解しなくてはいけません。
難しい問題を消化不良を起こしながら解くと、頭の中がスッキリせず、自信がもてなくなってしまいます。自宅で宿題が終わる時に「よし、全部わかった。前問正解かもしれない」と思えて気分よく寝付けます。基礎クラスで精神状態が良いと、十分実力を発揮できる生徒がいるのです。
Aウチの子は優秀なのに偏差値40!?
Q小学校ではクラスで1番か2番の「頭の良い子」なので、中学受験をしても負担はさほどないと考え小4の秋から進学塾に入会した。3ヶ月後のテストの結果を見たら、何と偏差値は、たった40! なぜこんな低い成績なのでしょうか? |
A 中学入試の勉強は、小学校で習う内容が基礎にはなりますが、小学校とは進度がまるで違います。
以前から塾に通っていて塾で習った知識量が多い生徒を追い抜くには、半年くらいの時間が必要です。
他の子どもは1学期にある程度塾で習った内容でも、途中入会の生徒は初めて教わることになります。たとえば国語のことわざを10個習う場合、1学期から通っている生徒なら5個は既に習ったので「復習」となり新たに5つ理解すれば良いのですが、途中入会の生徒はほぼ全部が初めて習うことになります。自宅で復習する時間が同じなら、途中入会の生徒は低い点数になってしまいます。
また、中学受験は成績優秀な生徒が多いという事実もあります。小学校で平均点に達していない生徒もより良い環境を求めて受験することがありますが、成績優秀な生徒が中心です。たとえて言うなら、小学校で1番野球が得意な子どもが、少年野球の強いチームに入ると、更に上手な選手が多くて補欠にしかなれないのと似ています。小学校では100点満点を連発する生徒でも、成績上位生中心の進学塾では、簡単に平均点に達しないのは当然といえます。受験勉強を始めて3ヶ月で40なら、あとは偏差値が上がるだけ、とも考えられますので、長い目で見ましょう。
このため、授業を「なるほど」と理解できているのであれば、塾に通い始めて3〜4ヶ月くらいは成績が上がらなくても様子を見るのが良いと思います。
Q毎週のテストの前に自宅で復習した時は、かなり理解はできています。テストでも覚えたことがテストに出されて、高得点を期待されるのに、毎回のようにミスをして、大きく点を落としています。覚えていないで点を取れないなら仕方ないのですが、時間をかけて覚えたのにミスをするのはどうしてでしようか? |
A◆「途中計算を書かない」
算数で途中の計算式を書かないと、ミスは増えます。たとえば「直径10センチの円の面積を求めろ」という問題でしたら、筆算だけでなく「5×5×3.14」という計算式も書くのです。半径は5センチになるのに「10×10×3.14」と勘違いしても、計算式があると軽く見直しただけで「あれ?変だな」と気づきやすくなります。
筆算はハッキリ書いて消さないのも大切です。(そのためには、問題がぎっしり埋まっている問題集を解くときは、たとえば筆算ノートを用意すると良いでしょう) 冗談ぽく「『けして』良い事ないぞ」と掛詞を使って注意することもあります。
複雑な面積を出す問題なら、途中で出た数字に「円柱の
側面積」などとメモすると勘違いが防げます。
算数は5年の後半あたりから問題文が長くなり、初めから「よし、こうすれば解けるぞ」と見通しが立たないことが多くなります。「何かよくわからないけど、速さの問題だから図を書いてみよう」というように、
「わかってから鉛筆を動かす」のでなく「分かるために鉛筆を動かす」という発想が必要になるのです。そして
途中で出た数字を「太郎・分速75m」などと単位と言葉を添えてメモして次を考える習慣が必要になります。
◆「テストの問題用紙に書き込みがない」
テストの問題用紙に書き込みがないと、勘違いのミスが増え、見直すときの集中力が低下してしまいます。
国語で「15字以内で書き抜け」という問題が出たら、怪しそうな部分を5字ずつ区切って印をつけます。たとえば こうします。
|セリヌンテ|ィウスは、|すべてを察|した様子で|うなずき、|刑場いっぱ|いに鳴り響|くほど高く|メロスの右|ほおを殴っ|た。
こうすると、飛ばして次の問題に進んだ後で時間が余りもう一度考える時に、先ほど探した部分がハッキリします。(それ以外のところを中心に探せばよい)
正解と思って解答欄に書く前に書き抜く部分を囲むと、目立つので写し間違えがなくなります。
理科社会でも、「漢字2文字で」などの条件は丸で囲んで目立つようにしたいものです。要は、どんどん手を動かして書き込み、「覚えながら考える」のでなく「考えるだけ」にして、頭を楽にしたいのです。
Q小4ですが、国語はもちろん、算数や社会の問題文を正確に読み取れなくて、点数を落とすことが目立ちます。どうしたら良いでしょうか?
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A小学4年生くらいですと、
具体的な例を示さないと理解が難しい面があります。
問題文に「
20で割ると4余る数」と書かれていても、「
20を割ると4余る数」との区別がうまくできない傾向があります。そんな時は具体的な例を示します。「100円
を2人で分けると100円÷2=50円でしょ?これは『2で』割ったの?『2を』割ったの?」とでも説明します。イキナリ「÷の前が『を』後が『で』だよ」などと軽く説明するだけでもOKの生徒もいますが・・・。
1つ分からないと頭の回転がストップする生徒も珍しくありません。
国語の文で、戦争中の「疎開」中の物語だと、本文に説明はあっても「疎開」をイメージできなければ読もうという意欲が消滅してしまいます。小問3つから成る算数の問題で1問目が分からない場合、2問目・3問目は「もっと難しくて分かるわけない」という先入観を持ってしまい、易しい問題でも読む気力がなくなってしまいます。
指導する時は「(2)の問題は難しいが(3)は気合でできる。頑張れ!」などとじっくり読んで考えればできることを示すのが基本です。
文を論理的に理解する力の不足が原因の時もあります。たとえば 「山梨県の県庁所在地は甲府」と「甲府盆地は扇状地でブドウの栽培が盛ん」という2つは暗記した生徒がいたとします。ところがテストで「山梨県ではどんな果物の栽培が盛ん?」と少し形を変えて出題されたら、手が出ない生徒がいます。
この原因として「問題文を理解する読解力(論理性)が不足している」のかもしれません。決定的な対策は浮かびませんが、読解力と気力は学年が6年になるとついてくる可能性が高いと思います。
できることの一つに、日常生活で説明をする習慣をつけることがあります。食べたいものがあったら、なぜ食べたいのか、どこの店にどんなものが売っているのかを説明させるのです。女子は、メモ用紙にお手紙を書いて友達に回すのに対し、男子は母親にが何か尋ねても「別に」「うるせー」では、女子の方が国語の点数が良くなるのもうなづけます。厳密な因果関係が証明されているかは不明ですが・・。
Q毎週決められた狭い範囲のテストでは、それなりの点数が取れますが、出題範囲が広く何が出るか分からないテストでは、偏差値が急に下がってしまいます。なぜでしょうか? |
A決められた範囲のテストは、直前に勉強時間を確保して覚えた生徒が良い成績を取ります。勉強量が圧倒的にモノを言うテストです。一方、範囲が決まっていない(広い)テストになると、なかなか直前に全範囲を復習することは難しくなります。
当然良い偏差値を取る生徒の層は違ってきます。
範囲が決まったテストで良い偏差値を取るのは、直前に決まった範囲をじっくり勉強した人、突っ込んで言えば「途中入会でも飲み込みが遅くても、時間をかけた生徒」です。逆に範囲が決まっていないテストで良い点を取るのは「授業を1回聞けばほぼ理解できる飲み込みが早い生徒」「テスト前にあまり勉強していない生徒」です。
まあ範囲が広いテストで点が落ちるのは、現在習っている範囲はきっちり身についているとも言えますので、小4小5のうちは、あまり深刻に考える必要はないと思います。少なくとも、子どもの責任ではありませんから、叱るのは的外れです。
野球に例えると、「範囲が決まっているテスト」は、「外角高めにカーブが来る」と分かっているボールを打つのと似ています。コース(出題範囲)が決まっていれば、球が速くても(問題が難しくても)打ちやすいのです。出題されるパターンが少ないと頭が混乱しないで、問題に取り組めるのです。
あまり時間に余裕はないと思いますが、毎週土曜日あたりに半年前に教えた「つるかめ算」の基本問題あたりを1問解く「復習の時間」を、20分くらい作るのも良いでしょう。