家庭教師の活用
生徒の自宅で1対1の指導をする家庭教師。その長所短所を知った上で、効果的に活用しましょう。

@家庭教師の長所
自分の希望する内容を教えてくれる 集団塾では、自分の希望する内容だけ教わるのは困難だ。「生物や天気は大丈夫だけど星の動きが分からない」とか「文法はほぼ大丈夫なので長文だけ鍛えたい」という要望にも応えられる。
分かるまで
質問に答えてくれる
中3なのに中1の内容が分からない生徒に、戻って教えることができる。塾では基礎クラスに入ったとしても、どこでつまずいているかは人それぞれなので、家庭教師だと無駄なく無理なく基礎に戻って説明・練習を受けられる。
日時の調整がしやすい 部活で遅くなる、近くに塾がないなど、時間的に通いにくい場合でも、家庭教師なら問題ない。部活で遅くなるなら午後8:30〜10:30に教えることも可能だ。また病院に通うなどで、その週によって教わる日を変更するのも難しくはない。
向こうから来てくれる 保護者の立場だと、「きちんと授業を受けているか」心配だ。更に「塾に行くと言ってコンビニで本を立ち読みしてサボってないか」「寄り道しないか」「夜道で危なくないか」という心配がある。家庭教師なら、そんな心配はない。

A家庭教師の短所
「料金が高い」または
「時間が短い
最大の短所が、これである。
学習塾は、中学生のクラス授業なら、1時間あたり700〜1100円くらいの塾が多い。家庭教師は保護者が払う金額は、その2〜3倍くらい(業者を通すともっと高い)になるので、「金額の負担が増える」か「指導時間が短い」かのどちらかになってしまう。
当たり外れが激しい 指導するだけの「学力」があるか、生徒との「相性」は良いか、遅刻しないなどの「責任感」はあるか、など様々な面で「当たり」の先生と「ハズレ」の先生がいる。これは塾選び以上に激しく、良い先生を探すのは大変。
受験情報に弱い たいていの塾に通っていれば、受験の情報は結構入ってくる。しかし家庭教師だと、その先生の出身校のように偶然よく知っている学校のこと以外は、あまり良く知らない。入試制度の変更のような情報も、詳しくないことが多い。
場所と保護者の手間がかかってしまう 散らかった部屋、汚い部屋に先生を呼ぶのは抵抗がある家庭が多く、片付けに手間をかけ修繕に金をかけてしまう。お茶菓子の用意にも手間と金をかけてしまう。無用なことにエネルギーは注がないでいいのだが。
教えられる教科に限りがある 全教科教えられる先生はごくごく一部だけだ。英数国はともかく、1人の先生が理科と社会を教えられることは期待できない。有名大学の学生でも、「世界史は完璧だけど地理は勘弁して」「化学はバッチリだけど星の動きはちょっと・・・」のように苦手分野を抱える先生が大半だ。個別指導塾では他の先生に交代して教われることが多いが、家庭教師だとなかなか難しい。
決められた日時に来てくれない 集団塾にもないし、個別塾でもほとんどない現象。生活のかかっていない学生に多い。週2回なら毎月8回来ることになるが、そのうち2回くらい「その日は都合悪い」と指導日を変えて欲しいといわれることもある。個人差が激しいので、立派な家庭教師も多いが。

B家庭教師が有効な場合
 家庭教師は料金が高いので、どんな場合でも使えるわけではありません。平均を少し越えたくらいの中2が、高い料金を払って家庭教師をつける必要は、あまり見当たりません。そこで、家庭教師が特に有効な場合は、どんな場合かを主観を含めてまとめました。

(1)成績がかなり低い生徒
 テストの問題の意味が分からない、学校の授業の説明もほとんど理解できない場合は、塾ではなく、1対1の家庭教師が適しています。中学校の35人のクラスで言うと低い方から数えて3人目までの生徒です。
 たとえば中3なら中1の内容まで戻って説明する必要がありますが、中1の問題集でもスラッと解けるわけではありません。じっくり説明して、適当な問題を細かく選んで(あるいは作って)解かせる必要があります。
 勉強の習慣がついている生徒ではないので、「1月Januaryから12月Decemberまで書けるように練習して」と指示を出すだけでは、キチンと練習できる可能性は低いのが現実です。たとえば1月から4月まで4分間練習させて「4分で4つ書けたから12ヶ月は12分で書ける!練習頑張れ!」と練習の仕方を実感させて励ます。あるいは、あらかじめ正しいつづりを書き込んだ練習用紙を用意して「これを10枚埋まるまで練習だ!」と言って渡すのも良いでしょう。要は、学力アップのために生徒に応じた手間をかける必要があるので、1対1の家庭教師は有効な指導形態です。


(2)塾の完全理解を目指す生徒
 有名私立中を目指す進学塾の授業を、完全に理解するために家庭教師をつけるのも有効です。中学受験・高校受験ともに進度が速い進学塾は、少し消化不良を起こして当然なくらいです。そこで、苦手な分野を解消するために家庭教師をつけるのです。
 中学受験のプロ教師は時給5000円は覚悟する必要がありますが、週1回でもいいので、指導経験のある優れた先生に頼むべきです。その代わり、成績が半年たっても上がらないとか指導方針がいい加減などで満足できなかったら、容赦なくクビにしましょう。(11月から1月の繁忙期でなければ、腕の良い先生は探せると思います)
 高校受験なら、有名大学の学生なら英語数学はさほど難なく指導できます。極端な苦手教科を抱えるなどの特殊事情がなければ、無理して時給の高い人に教えてもらう必然性は高くないでしょう。


(3)定期的に塾に通いにくい生徒
たとえば、こんな生徒は家庭教師に向いています。
「音楽大学に将来進むためにピアノを習っていて、発表会の前は勉強どころではない生徒」
「病気で、不定期に通院しており、決められた曜日に塾に通いにくい生徒」
「クラブ活動に力を入れており、塾の開始時刻に間に合わない生徒」


(4)意欲の乏しい生徒
 塾に間に合うように自宅は出るが、コンビニで雑誌の立ち読みをして毎回遅刻するような意欲のないサボり癖のある生徒は、あまり塾では得るものは多くないかもしれません。家庭教師なら、必ず定刻に勉強を開始できます。
 先生は毎回保護者と会うので、成績を上げて欲しいという無言の圧力をかけることができます。成績が上がらないと家庭教師の先生は、保護者に顔を合わせるのがつらいのです。一部の塾と違って「やる気ないのなら成績上がらなくて仕方ない」と捨ててかかるわけにはいきません。

逆に言えば、
(1)部活に非加入か遅くならない部活で、塾通いできる時間がある
(2)成績は中くらいで近所の県立高校志望で特に進学に熱心な私立を目指すわけではない
(3)ほどほど真面目で宿題忘れたり寄り道したりしない
・・・・こんな生徒であれば、料金の高い家庭教師を利用する積極的な理由はないと思います



C家庭教師の派遣業者
家庭教師を家庭に派遣する業者は、だいたい次のような仕組みをとっている。
(1)教えたい人は、あらかじめ業者に登録する。電話登録OKのいい加減な業者もあるし、筆記試験まで行う業者もある。
(2)家庭からの申込で、業者が先生を選び、家庭で面接・お試し指導をする。
(3)この先生でいい、ということになって指導開始。
(4)毎月の指導料金は、家庭から派遣業者へ。先生は業者に報告書を出して、給与をもらう。

残念なことに、家庭教師派遣業者には利益を出すことに熱心な業者が目立ちます。大手イコール安心できるとは限らないのが家庭教師派遣業者です。毎回の生徒の指導の支援をほとんどしないで、家庭からもらった金額の50%を搾取するなど良心的でない業者が目立つのです。

  
     「悪徳業者」の臭いがするのは、こんな業者★
訪問勧誘をする業者 予約ナシでの訪問勧誘をする営業マンは、家庭からかなり冷たく応対されてしまう。このため、月給25万円では全く割が合わない。このため業者は高額の契約報奨金を払う必要があり、家庭からは非常に高い料金をとらないと利益が出ない。 詳しい話を詳しく聞く場合は、教師の質はともかく、非常に高額ということは覚悟しておくべき。
先に料金を言わない、料金表を渡さない業者 「塾と変わらない」などと言うだけで、金額を言わない業者は、バカ高いと思ってよい。 「体験指導をさせて子どもと先生が仲良くなった後」に高い料金表を見せたら、子どもの気持ちを考えると断りにくい。 教師の質は良いかどうか不明だが、こんな汚い手法を取る業者は避けるべき。
教材とセットの業者 教材は、学力や志望校によって合わない教材がある。レベル別に何種類か選べるならともかく、高価な教材を先に買うのは、自分に合うか不明なので乱暴もいいところ。毎月1教科3000円でも5教科36ヶ月分なら54万円になってしまう。 初めに「メインが教材販売」とは絶対言わないので、見分けにくいのが困る。巧妙にクーリングオフをしにくくしている業者が多い。
契約期間が長期 「やめたい」と通告すれば1ヶ月以内にやめられるのが、世間一般の常識ではないでしょうか。しかし1年契約だと、問題を解かしている間にマンガ本を読むとか半分以上遅刻するような教師でも、解約しにくい。派遣業者が口頭の約束を破ったため解約しようとしても、違約金を請求されかねない。
<被害の例>東京都のホームページ
  http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2004/12/20ecl500.htm
  http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2005/12/20fcd400.htm
とにかく、
不満なら1ヶ月後にやめられるのが最も重要です。毎月の費用は高くでも、効果があれば必要な出費と納得できます。不満で解約するのに違約金を取られたら、これは腹立たしい限りです。

D業者選びのコツ
(1)大まかでも料金が示してある業者
 教える先生の実績などで料金が多少変動することは当然ありますので、明確に金額を示すのは無理かもしれません。しかし、「学生講師が中3を週2時間教えたら毎月26000〜32000円」のようにの大まかな金額は公表すべきです。示さない業者は、私なら怖くて問い合わせる気にはなりません。
(2)業者を家庭に呼んで話を聞くのでなく、保護者が業者の事務所に行って説明を聞くのも手
 派遣業者の事務所に行けば、どんな業者かが推測しやすくなります。壁に「泣き言は許さん、1人毎月10人獲得!」という張り紙があったら強引な業者と推測できます。事務員が全員茶髪のフリーター風でしたら、トラブルが起こったときに対応する責任者がいないのでは・・・と思えます。(そもそも強引な業者は、事務所で説明するのを嫌がる可能性が高いのですが・・)
(3)クチコミも有効。ただし業者と先生を区別して。
 実際に指導を受けた家庭からの評判も参考になります。良い業者だったというクチコミは大変貴重です。
 ただし、もうけ主義の悪徳業者でも、たまたま派遣された先生が良かった可能性もありますので、業者の対応がしっかりしていたのか、派遣された先生個人が立派だったのか分けて考えた方が良いと思います。

(4)2つの業者を比較する
 最初から2つの業者を比較するのも良いでしょう。比較するとシステム・契約条件・料金など様々な面で長所短所が見えてきます。はじめに「業者名は言わないが他の業者と2社から話を聞いている」と伝えておくと、「根性で粘れば契約を取れるかもしれない」と考える業者が断念しやすくなるかもしれません。
(5)受験雑誌
 学研などの出版社から受験案内・受験雑誌が出されています。その受験案内に広告が載っている家庭教師派遣会社は、各地の消費者センターに苦情が多数寄せられているような問題ある悪徳業者はあまり載っていないようです。出版社にとって受験案内の広告は、貴重な広告収入を得る手段ですが、あまりにも苦情の多い業者は広告掲載を断らざるを得ないためです。突然電話で勧誘された業者を選ぶよりは、「当たり」の業者に出会える確率が高くなるでしょう。
(6)求人広告を時間をかけてチェックする
 相当時間がかかりますが、日曜日の朝刊折込の求人広告には家庭教師や教材訪問販売業者の求人広告が載ります。無料配布のタウンワークなどの求人誌にも派遣業者の求人が載ります。「電話登録OK」となっているのに、家庭には「厳選した講師陣」とPRするなどの怪しい業者がチェックできます。

E家庭教師Q&A
Q:中学生の家庭教師は有名大学の学生が良い?
東京大学や慶応大学などの有名大学の学生なら、無名な大学の学生に頼むより中学生の学力を伸ばしてくれそうですが、実際はどうなのでしょうか?
有名大学の方が良い場合があります学力低下は大学生にも広がっています。偏差値55以下の中学生でしたら先生の熱心さでカバーできますが、偏差値60以上(中学校のクラスで上位2割)になると、学力がない大学生は手に負えなくなります。
 たとえば英作文「たくさんのお金が机の上にあります」で「There is a iot of money on the desk.」とするところを「『is』を『are』にしてはいけないの?」と質問されたら、英語力のない先生では回答に困ってしまいます。生徒に教えるには、自分で解くより難しいのです。
 有名大学の学生が有利なのは「偏差値60以上の成績上位生を鍛える場合」です。また「英数国」とか「数学と理科」のように複数教科の指導を希望する場合も有名大学の学生は有利です。
 偏差値55以下の普通の生徒であれば、先生との相性など他の要素もあるでしょうから、絶対有名大学の学生にこだわる必要はないと思います。
 有名大学にこだわる必要がない場合は、「英文科の学生に英語だけ習う」など「1教科だけ」の指導の場合があります。大ざっぱに言えば、日本大学レベルより低い大学の学生は、得意教科だけ教えるのは問題なくても、複数の教科をしっかり教えるのは厳しいと思います。
 なお、「高校は超有名校だが大学は無名大学」という学生は結構使えるようです。大学は推薦入学が広がったため基礎学力に欠ける学生が混ざっていますが、有名高校に入れたということは間違いなく高校入試の知識があるということです。ですから英語数学の基礎学力がある学生を選ぶのでしたら、大学名と共に出身高校も見たほうが良いでしょう。

Q:中学入試のプロ家庭教師はなぜ高いのですか?
大手塾の時間講師の求人広告を見たら、時給は3000円くらいでした。ところが中学受験のプロ家庭教師は時給5000円以上です。いくら何でも高すぎませんか?
A:確かに中学受験の家庭教師は高いのが現実です。高い理由として次のようなものが考えられます。プロ講師の立場からの事情説明です。
(1)需要と供給の関係
 中学受験の問題は、高校入試と比べて特殊です。有名大学卒の人は、高校入試の数学なら教えられても、中学入試の特殊な算数は指導困難です。バリバリ教えるには、指導経験が欠かせません。必死になって成績上げたいという受験生の数に比べて、経験豊富な実力派の先生の数が、限られるのです。
(2)働ける時間が少ない
 大手塾の時間講師だと、1日に複数のクラスを教えられるので、4〜5時間の勤務が可能です。時給3000円でも4時間教えれば12000円の収入になります。家庭教師は1日2時間の指導が多いので、同じ収入を得ようとすると時給を上げなくてはなりません。
(3)仕事が不安定
 不安定という事情もあります。大手塾では年度の途中でクラスの増設はあっても「1学期は週3日で2学期から4日」というように微増です。しかし家庭教師は、入試前の12月は休みナシで1ヶ月に80万円稼ぐ人でも、入試が終わった3月は10万円しか稼げないことも珍しくありません。
 成績が上がらなくてクビになるのは仕方ないのですが、「12月に推薦試験に受かったから
とか「塾で上位クラスに上がれて目標が達成したから」という一方的な理由で解雇されるのが家庭教師の世界です。
(4)一定の年収確保
 もしプロ家庭教師の時給が3000円だった時の年収をシュミレーションしてみます。1日2時間半の指導で1日7500円の収入。2月〜5月は仕事が少ないので週3回、6月〜7月は週4回、8月は夏休みで毎日、9月〜11月は週5回、12月から1月は毎日、とすると年間約230日になります。年収は7500円×230日=172万5000円です。
 時給3000円だと年収200万に達しません。優秀なプロ講師は時給5000円とか8000円といった高い時給で生き残り、実力がない家庭教師は生活できないので他の仕事に転職していくことになります。
 プロ家庭教師は時給が高いだけに遠くまで出かけます。私・ブンブンも2時間教えるのに往復3時間かけて通ったのは珍しくありません。準備も結構必要なので、直接教えるのは2時間半だとしても、かなりの時間が必要となります。また申し込みがあったらすぐ指導にいけるように、あまり他の仕事を本格的に行うわけにもいかないのが現実です。


 以上が高い理由ですが、時給が高い先生=良い先生ではありません。
 昔、大手派遣会社で教えていたころ、他の先生に満足できなくて後任として2回教え始めたことがあります。私より時給が高い(1万円近い!)のに、ひどい教え方をしていたのに唖然としたものです。進学塾についていくために中学受験の算数を教えてるのに独自に方程式でつるかめ算を教えていた、私が解答を見ないで文章題3問教えたら「前の先生と違って答を見ないで解けるんだ、すごいね」と言われた等など・・・・

 予備校業界では時給が高いとリストラの対象になりやすいので、時給アップを望まない人もいると聞きます。家庭教師の立場から見ても、時給1万円だとすぐ結果が出ないとクビになる可能性が高くなるため、私の場合は腕にかなりの自信はあるつもりですが、時給10000円を取るのは怖いのが正直なところです。

CM::管理人ブンブンも家庭教師をしています→→→詳しくはこちら