千葉県民の受験校選び

千葉県に住む私立中学受験生が、受験校を選ぶ時の現実と注意点をまとめました。
@千葉県内の私立中は少ない
 東京都内は、生徒数も多いものの、私立中学の数も更に多いので、定員割れを起こす私立中学も珍しくありません。定員35人で受験生を募集しても、応募者が20人とか30人という中学校も、女子校を中心に存在します。(少子化は都心部で急激なためで、定員割れ=ひどい学校ということではありません)
 しかし千葉県には、人口の割に私立中学が少ないので、成績が低くても入れる中学は、あまりありません。東京都内のように、定員割れする私立中は、基本的にありません。
 次の表は、「千葉県」と「東京の千葉寄り」での偏差値の分布ですが、東京都内には、偏差値34以下の私立中が多数あることがわかります。千葉県内の34以下は少ないうえに一定の倍率を保っていますので、差は数字以上にあると思います。

 偏差値 65以上 64〜60 59〜55 54〜50 49〜45 44〜40 39〜35 34以下
東京都の千葉県寄り私立中 ○○○○○○ ○○ ○○○○ ○○○○○○ ○○○○ ○○○○○○ ○○○○○○○○○○ ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
千葉県 ○○ ○○○○ ○○○○ ○○○
※「東京都の千葉県寄り私立中」とは、江戸川区・葛飾区・足立区・荒川区・墨田区・江東区・台東区・北区・文京区・中央区・千代田区の11区で算出。偏差値は四谷大塚80%偏差値(1回目入試)を利用し、データなしの学校は管理人が各種資料から判断し表を作成した。。

A千葉には推薦入試もある
 千葉県内の私立中学には、推薦入試を実施する中学があります。東京都内の私立中は、推薦入試が基本的にできませんが、千葉は可能ですので多様な入試を行えます。
推薦入学とは、次のようなものです。
(1)第一志望の生徒が対象で、小学校長に推薦してもらう。合格したら必ず入学する。
(2)一般入試の前に推薦試験を行う(多くは12月に実施)
(3)高校入試のように内申点の基準は基本的になく、たいていは成績が低くても出願できる。
(4)人気校は倍率が高く、推薦に応募しても大量に不合格者が出る。
昭和秀英などの人気校は高い倍率で、推薦といってもたいして合格しやすくなりませんから「推薦は案外使えない」のが現実です。受験生にとって「使える」のは、合格しやすい学校の一部だけです。
塾が推薦する「塾推薦」のようなものも導入していることがありますが、合否を決める際に若干優遇する程度のものです。

B千葉の入試は早くスタート
 東京都と神奈川県の私立中入試は、2月1日以降に実施しなくてはならないという協定があります。しかし、千葉県と埼玉県は1月に実施できます。ですから、千葉県内の受験生の入試日程は、こうなります。
(0)推薦入学・・・第一志望の県内私立中学が、推薦入試を実施していれば、年末に受験する。
(1)1月入試・・・千葉県内の私立中を1月20日から受験する。(昨年度は1月19日が解禁日でしたが1月20日開始に戻ります) 日程が「市川学園を1/20に受けて、昭和秀英を1/22に受ける」というような、複数の中学を併願もできる。また和洋国府台のように1/20と1/23の両方受けられるような学校もある。2007年1月の入試日は、未定の学校が多数あります。。
(2)2/1から都内・・・2/1〜2/3が、都内の私立中の入試となる。千葉県内から都内の私立中を第一志望にして通う人も多い。
(3)2/4前後の2回目入試・・・千葉県内の私立中は、2/4前後に、定員の一部を持ち越して、もう一度入試を行う学校が多い。これは、1回目で合格した人が辞退するのだが、人数が読みにくいので、2/4前後の2回目入試で調節するという面もある。応募倍率は高いが、欠席者が多く、番狂わせも多いので、再度挑戦する価値はある。
(4)補欠繰り上がり・・・志望校に不合格でも、2月中旬は補欠繰り上がりの可能性がある。補欠繰り上がりの出し方は様々で「あらかじめ補欠を発表する」「突然電話で通知する」「補欠は基本的に出さない」など色々な学校がある。可能性は高くないので、期待しすぎてはいけないが。

C1月の高倍率を覚悟する
 都内に住み生徒は、一足早く入試をする千葉県内の私立中に合格して、安心して都内の第一志望校に挑戦しようと考えます。そのため1月の千葉の入試は、高倍率の激戦になります。都内から受けに来る受験生は、合格しても他校に合格して入学を辞退する場合が多いので、多数の合格者を出します。  
2005年入試の数字です 市川学園
1月20日
専修大松戸
1月20日
和洋国府台
1月20日
渋谷幕張
1月22日
開成
2月1日
早稲田実業
2月1日
豊島岡女子
2月2日
受験者数 3784人 948人 708人 2321人 1081人 920人 995人
合格者数 1487人 403人 643人 930人 382人 250人 373人
定員  300人 100人 120人 180人 300人 225人 140人
 1月の千葉県内の私立4校を見ると、定員の5倍くらいの合格者を出していることがわかります。主に都内からの辞退者を見込んで多数の合格者を出しているのです。一方、都内の学校(特に2月1日校)は、第一志望が多く、合格者をあまり余計に出しません。

 中学入試は、成績の良い上位生に圧倒的に有利にできています。千葉の上位生は、地元の渋谷幕張・市川・東邦・芝浦柏などの上位校に合格して進学先を確保し、安心した上で都内の有名校に挑戦できます。
 しかし、成績が低迷している生徒には厳しく、地元の私立中は都内からの「お試し受験組み」が大挙して押し寄せ合格をかっさらっていきます。都内と同じ日程で都内からの受験生が少なければ、地元の私立中に入れたのに・・・と嘆きたくなるのです。


D千葉県内の私立大附属は、進学校の位置づけも
 県内には、早稲田・慶応・立教・明治などの付属校がありません。日大・東海大より難関私大の付属校の所在地の分布です。千葉県内には、日大より難関の大学付属校がありません。
東京23区 東京都下 神奈川県 埼玉県 千葉県
早稲田実業、慶応中等部、立教池袋、立教女学院、明治大明治、明大中野、学習院、学習院女子、青山学院、 法政第一、明治大中野八王子 慶応普通部、慶応藤沢湘南、法政女子、法政第二、日本女子大、 立教新座、
(高校からなら慶応志木、早稲田本庄)
ありません
 その一方で、千葉県内の私立中は、大学がついているところが目立ちます。
  大学がついている「附属中」   大学がない「進学校」
偏差値
50以上
東邦大東邦、芝浦工大柏、専修大松戸、麗澤 渋谷幕張、市川学園、昭和秀英、国府台女子学院
偏差値
49以下
千葉日大第一、東海大浦安、和洋国府台、聖徳大付属 暁星国際、日出学園、東京学館浦安、昭和学院
 千葉県内の私立中高は、付属校だが進学校としての位置づけが高い学校が目立ちます。系列大学に半分以上進むのは、東海大浦安くらいです。他の付属校は、他大学受験を積極的に勧めています。付属校を進学校として利用することができます。

E高校から入学も可能
 東京都内の私立中は、高校受験では入れない高校が目立ちます。男子では、麻布・芝・早稲田など、女子では、桜蔭・女子学院・白百合をはじめ多数あります。
 しかし千葉県内の私立中は、高校からの入学も可能です。渋谷幕張や東邦大東邦などの上位校は、高校受験では少人数しか入学させないので厳しい入試になりますが、入学の門戸は開かれているのです。
 中学から通う生徒にとっては、高校から別の種類の生徒が入ってくることで、よく言えば刺激になります。欠点としては、工夫しないと中3で高1の学習を終える先取り学習がしにくくなったり、内部生と外部生がなじむまでに時間が必要という点があります。

F都内に満員電車で通う?!
 都内の私立中に通うとなると、満員電車に揺られることになります。
 満員電車がつらいかは考え方次第ですが、都内でも通学時間が短い中学もあります。
 常磐線沿線では、北千住駅から徒歩2分ほどの足立学園、千代田線の千駄木から徒歩7分の駒込は、乗り換えナシで通学できます。総武線沿線からは、お茶の水・飯田橋周辺に多数乗り換えナシで通える学校があります。
 千葉県内で駅から歩いて10分以内という学校は案外少ない一方で、東京都内は駅から近いので、都内の学校が意外と短時間で通えることがあります。
 通学時間については、こちらのページをどうぞ。(現在「常磐線沿線から」と「千葉県内の私立中」が完成)

G千葉県内の私立は、大学合格実績が良くない?!
 千葉県内の私立中は、学力アップも重要ですが、明るく楽しく伸び伸びと学校生活を送れることを強調する学校が多くなっています。「6年間苦労して東大に行こう!」という宣伝文句を打ち出しそうな学校は、ありません。
 千葉県以外なら、巣鴨、桐蔭学園、江戸川取手のように徹底した受験指導が売り物の進学校があります。また都内の中堅校も、他校と差別化を図る上で必要な、進学実績を出すべく、徹底した指導を行っているところが多数あります。
 このためもあって、同じ偏差値の私立中では、千葉県内の私立の方が、都内に比べて有名大学合格実績で劣る傾向があります。
 この理由は、いくつか考えられます。
(1)データの「誤差」のため
 千葉県内の私立中は、併願しやすいために、合格者の平均偏差値が60の中学なら、63とか65の生徒は都内の他校に進学してしまいます。そして実際に入学するのは、偏差値57とか55の生徒が多いのです。データの取り方の関係で、千葉県内の私立中は、都内より高めに偏差値が表示される傾向があるのです。
(2)都内は有名大学付属もあるため
 都内に住んでいれば、大学付属か受験校か幅広く選べます。成績上位の生徒で「大学受験で苦労したくない」とか「部活動を思いっきりやりたい」いう生徒は、大学付属に進むという選択肢があります。
 ところが千葉県内の私立は、日大より難関大学の付属校はありません。付属校を希望する千葉県内の上位生にとっては、適当な私立中がありません。都内の上位受験校に進む生徒は、付属校も選べたのに大学受験を覚悟して入学したことになりますが、千葉県内では違うのです。
 たとえば、四谷偏差値56前後の男子なら、入学後は無理せず伸び伸びと過ごさせたいと考える家庭は「明大明治」「立教池袋」などの付属校が選択できます。同レベルの生徒が受ける「巣鴨」「本郷」「城北」を選んだ生徒は、積極的に大学受験をしようという考えの生徒・保護者が大半を占めます。一方、千葉県の私立は、系列の大学に大部分が進む附属校は東海大浦安くらいで、他の付属校は「大学付属だけど、むしろ外部受験に力を入れる受験校」が目立ちます。都内のように「無理して受験せず系列大学に推薦狙いで付属校に進みたい」という生徒が集まる学校が基本的に無いので、「大学受験では頑張るぞ」という生徒が、のんびりしたいという生徒に混ざったまま渋幕・東邦・市川・昭和秀英・専松・芝浦柏の各上位校に散ってしまうのです。
(3)都内は生き残りで「捨て身」の戦術を取る学校があるため
 都内の私立中は、少子化で受験生集めに必死です。そのために、一番確実なのが、進学実績を上げて差別化することです。「明るく楽しく」では、なかなかアピールできないので、有名大学に入れるしかないのです。
 しかし千葉県内の私立は、将来的には不透明な部分はあるものの、公立中の授業時間数削減で私立中人気が高まっていて、当面一定数の生徒を確保できていて、ほぼ順調といえます。こんな順調な時に、今までの「学力アップも図るが、のびのびと楽しく」という路線を捨てるのは、リスクが大きいのです。「6年間苦労して東大に行こう!」とでも打ち出すと、今までの受験者層に敬遠される可能性大ですから、入学者が大学受験をして実績をPRできる6年間、人気が保てるかどうかわからないのです。
 現在多くの私立中がとっている「学力アップも図るが、のびのびと楽しく」という路線でしたら、無理はありません。渋谷幕張もこの路線で偏差値を上げてきたのですし、厳しく鍛える学校を敬遠する保護者が多いこともあり、現実的な対応といえます。
 ですから「絶対に有名大学合格するぞ、楽しくなくていい!」と強く考える家庭は、千葉県内でなく、都内の私立中に足を伸ばすことをおすすめします。