B推薦入学
 高校入試では、推薦入学はかなり利用されるようになってきた。併願推薦も含めて推薦を全く利用しない生徒は少数派になっている。非常に複雑な面があるので、勘違いしないで活用したい。

本来の意味は次のようなものである。しかし、現在はかなり複雑になってきている。
「推薦入学」・・・一般受験の前に、通知票の成績と面接・作文程度で合格を決める制度。中学校からの推薦が必要である。
「単願」・・・・その高校しか受験しないかわりに、点数の上乗せなど優遇する制度。他の高校を受験しないということは、ほぼ確実に合格させるということ。最近はほとんど見られない。「第一志望」は他校と併願することが大半なので意味が異なる。

(1)推薦入学(A推薦)
 第一志望が私立高校の時に使える。手順は次の通り。
@高校が「通知票の成績が5教科15以上」「欠席日数20日以内」などの推薦条件を公表する。
A推薦で合格したい生徒で、基準を満たした生徒が、推薦して欲しいと中学に申し出る。
B中学の先生が高校に出かけ、内申点などの成績を見せて、推薦で受け入れてくれるか相談する。
C高校側から推薦OKの了解が出たら、中学校長が正式に推薦する。
D受験生は一般受験より早い1月に、形式的に面接・作文(高校によっては筆記試験)を受験する。
E99%以上の確率で、他の生徒より一足早く合格が決まる。
A推薦を使えば、合格可能性40%の生徒を99%に上げることが可能となる。

(2)併願推薦(B推薦)
 第一志望が公立高校の場合、必ず入学しなければならないA推薦は活用できない。そのため、辞退できる併願推薦、別名「B推薦」を使うことになる。
 手順は、A推薦と同じ。違うのは、辞退できる代わりに、推薦基準が高いことだ。イメージしやすいように言えば、合格可能性80%を99%に上げる手段である。
流通経済柏V類 東葉 東海大浦安 二松学舎沼南 潤徳(総合)
推薦入学(A推薦) 3科13 5教科16 9教科35 5教科17 3科9
併願推薦(B推薦) 3科14 5教科14 9教科38 5教科17 3科10
  注:オール3の生徒は、3科で「9」、5科で「15」、9科で「27」の内申点となる。

(3)自己推薦
 近頃増えているのは、中学校長の推薦書が不要の「自己推薦」だ。内申点などの一定の基準を超えた生徒が、自分で自分を推薦して応募するのである。
 埼玉県の私立高校を中心に内申点の基準がない高校が目立つが、こうなると事実上の一般入試になる。
 実は、入試日程を早い時期に設定すると、早く合格して安心したいという受験生が殺到する。このため、名前だけ推薦と呼ぶ事実上の一般入試を早い時期に行って、多くの受験生を確保したいと高校が考えているのだ。たとえば浦和学院は、併願推薦の受験者が3722人なのに対し、一般受験は何と54名だけになってしまっている。


(4)第一志望

 その私立高校を第一志望とする生徒に、一定の点数を上乗せする制度。合格したら必ず入る代わりに、一般受験の300点満点で10点とか20点の上乗せをしてもらう。
 合格がギリギリの生徒にとって、300点中180点前後が合格ラインなので、ギリギリの生徒にとって10点でも加算してもらえれば心強い。
 近頃はA推薦を使う場合が多いので、A推薦が使えない時だけしか活用されない。

(5)事前相談
 入試を更に複雑にしているのが「事前相談」だ。一般受験をするのだが、試験当日に普段の力を出し切れない可能性があるため、「本当は十分合格する力があるので、選考の時に点数が少し足りなくても配慮してよ」という理屈である。
 内申点が併願推薦の基準に足りないなどで推薦の条件から外れる生徒が対象となる。ただ、実施している高校は多くなく、募集要項に明確に公表しないことが多い。優遇の度合いは併願推薦より小さいので、不合格になることも当然ある。

. 推薦入学
(A推薦)
併願推薦
(B推薦)
自己推薦 第一志望
内申点の基準    基準を超える必要がある 高校によって異なる
(内申点が低くても応募できる高校あり)
多くの場合、内申の基準はない
優遇の度合い 非常に大きく優遇される 一定の優遇がされる ほとんど優遇されないが、チャンスが2回になるメリットがある。 10点〜20点の加点
辞退して他校に進学可能? 第一志望が条件。辞退して他校には進学できない。 第二志望でもOK。(高校によっては公立落ちたら必ず進む条件となる) 高校によって異なる 辞退できない。
中学校長の推薦   推薦書が必要 推薦書は不要。 推薦は不要だが、協力的でないと困る
入試日程    早い推薦日程 遅い一般受験日程
どんな生徒向け? 偏差値60以下の私立高校を第一志望とする生徒 公立第一志望だが、早い時期に私立高校に合格して安心したい生徒。 自己推薦を行っている高校なら、一般受験の前に自己推薦を使うとチャンスが増える 推薦基準に達しない私立を受験する生徒。

■公立の特色化選抜は?
公立高校で実施されている特色化選抜は、自己推薦の一種といえる。
★中学校長の推薦は不要
内申点の基準はない。内申点が低いと合格は難しいが、受験はできる。
★「内申を中心に面接・作文も加味」して合格者を決める学校が多いが、上位の公立高校を中心に独自の筆記試験で合格者を決める高校もある。
★特色化選抜に不合格でも再度一般受験できるので、公立高校を第一志望とする生徒の9割以上は、特色化選抜を受ける。
★スポーツ枠の合格者もいる。一般の受験生より有利になる。


■私立の推薦基準は相談で下がる??
 内申点の基準は、発表された後に事実上下がることがある。
 たとえば「5科の内申16以上」という学校に、オール3の生徒(内申は3×5教科=15)は、本来は基準に達しないので推薦は不可能だ。しかし、「生徒会役員・学級委員・部長の経験者」「英検3級合格者」「3年間欠席がない皆勤者」などの生徒は、内申点を「1」オマケしてくれることがある。
 11月から12月にかけて「今年は応募者が少なそうだ」と感じた私立高校は、条件を緩和して声をかけてくることがある。たとえば、「3年次の欠席10日以内」という推薦条件を出していても、「骨折で12日間入院したのが響いたから気にしない」ことにする。あるいは「その生徒の中学からは毎年真面目な生徒を送ってもらっているし、入試相談で親子とも好感持てるから、内申が『1』足りなくても不問にする」ことがある。
 運次第なので、期待しすぎてはいけないが、勉強して成績を上げる努力をするとともに、担任の先生にお願いしたり、高校の相談会に行ったりするのもいいだろう。

■各種注意点
@有名私立は、推薦が使えないことが多い。
 偏差値60以上の高校は、内申基準を満たしても大量の不合格者を出す推薦も目立つ。そのため、推薦を使わずに一般受験で勝負する場合が多い
A通知票に「1」があると困る
 通知票に「1」がつく生徒は、絶対評価になって減少した。このため「1」がついている生徒は、不真面目な問題児ではないかと疑われて不利になる可能性大。通知票に「1」がある生徒は推薦不可と明記している高校もある。
B推薦でも筆記試験アリの高校もある。
 都内の私立高校は、原則として筆記試験はない。(一部の学校は「適性検査」という名目で実施しているが)  しかし千葉県の私立高校は、筆記試験がある高校も多い。