内申書について
「内申書」とは、「調査書」とも呼ばれる。高校受験をする生徒が、中学校の時にどんな状況だったかを、中学校が高校に伝えて合格させるかどうかの参考にする書類である。
何が記載されるか
内申書に書かれる内容には、次のようなことがある。
@中学校での成績(通知票の数字)
英語が「4」、美術が「3」などという通知票の成績が、高校に報告される。中3の1学期に「3」で2学期に「4」だった場合は、どちらになるかは生徒には不明。通知票で「1」がつくと、不真面目な生徒と思われて、非常に不利になることがある。
中1から中3の2学期までの成績が報告される。中3の3学期は時期的に間に合わないので記載されない。
A欠席・遅刻の日数
欠席・遅刻が多いと不利になることがある。年間10日以内であれば、まず問題はない。
年間60日以上の欠席だと、高校側は気にしないわけには行かない。たとえば「交通事故で複雑骨折したため」というように原因がハッキリしていて、高校入学後影響がないと判断されれば、不利にはならないはず。私立高校受験の際は、個別に相談会の席で欠席が多い事情を説明しておくと、理解してもらえることも多い。
B特別活動の記録
学級委員やクラブの部長を務めた、テニス部で市内大会優勝といった勉強以外の活動で有利なことがあれば、記載する。
英検3級合格などの資格も書いてアピールする。「英検3級合格」は、偏差値60以上の高校では合格して当たり前なので役立たないが、偏差値40台の私立高校では学力を示す武器になる。
C生活態度
「基本的な生活習慣」「責任感」「公共心」などの各項目を評価する。A・B・Cの三段階評価のことが多く、Cがつくと相当不利になる。とはいえ、「雨の日に他人の傘を無断で使って帰った」とか「修学旅行の時に禁止されているゲームボーイを持ってきて没収された」くらいのことは、書かれないと思ってよい。警察沙汰の騒ぎを起こしても書かれないこともある。
絶対評価とは?
三年前までは、「相対評価」といって、通知票で「5」をつけられる生徒は7%と決まっていた。全員良い成績でも「1」を7%つけなくてはならない制度だった。(実際は端数処理の関係で、5は9%くらい、1は5%くらいという話もあるが)
そこで、人数制限がない「絶対評価」を導入することになった。何人の生徒に「5」をつけるかは、先生が決めるのである。全員非常に優れた成績なら、全員「5」をつけてもいい理屈だ。
■問題点@・・
簡単に「4」がつく
絶対評価を導入した結果、通知票はインフレ状態になってしまった。東京・神奈川・埼玉でも以前より甘くついているが、
千葉は他の都県より明らかに甘くついている。具体的なデータを示す。
昔の
相対評価 |
5
7% |
4
22% |
3
42% |
2
22% |
1
7% |
100人中 1位 7位 20位 29位 51位 71位 86位 93位 97位
2005年の
絶対評価 |
5
22.1% |
4
30.8% |
3
33.7% |
2
10.1% |
1
3.2 |
下のグラフは、2005年の千葉県公立中学の絶対評価の分布である。「5」がついた生徒は全体の20.3%にも達している。「5」と「4」を合わせると50%を超えてしまうので、学年でちょうど真ん中の成績の生徒は、ギリギリ「4」が取れることになる。平均点に達していない生徒も「4」が取れることがあるというのは、どうも変な気がする。
■問題点A・・学校間格差がある
昔の相対評価だと、通知票の平均は「3」であった。端数処理などで若干上乗せがあっても平均は「3
.1」くらいだったと思われる。しかし、2003年度の千葉県の平均は「3
.550」であった。
つまり「4」が5科目、「3」が4科目の「444443333」が平均になっているのである。
現実的には、理科の先生は甘くて簡単に5をつけたとしても、同じ中学の他の教科の先生も甘くつけるわけではないので、どこの中学が圧倒的に有利ということはあまりない。
しかし、中には平均値が高い中学もある。千葉市の某中学校は、平均がほぼ「4」になっている。レベルの高い生徒が多い地域なので、必ずしも甘くつけているわけではないと思うが、他の中学から見れば、不公平感はぬぐえない。
■問題点B・・先生の主観が入りすぎる
絶対評価とは直接関係ないかもしれないが、先生の主観が入りすぎる。
私・ブンブンは昔、小学6年の9月2日に社会の教科書を忘れたのだが、担任の教師はそれを見て「お前には2学期に『5』は一個もつけないぞ。決めた!」と激怒し、1学期に4つあった「5」を2学期は全て剥奪された覚えがある。2学期の授業初日で、社会以外の教科の成績も決め付けるのだから、感情的すぎる。
中間・期末テスト両方ともクラスで1番だったのに「3」がついたというような話は、よくあることで珍しくない。まあ「管理教育の横綱」と呼ばれた千葉県ですからね・・・
提出物や授業態度、積極性などを総合的に考えたというタテマエはあるのだろうが、先生の好き嫌いで通知票をつけられてはたまらない。誰だったか
「通知票は『良い子ちゃん指数』だ」と言った人がいたが、確かに成績が良くても反抗的だと「5」はつかないから、実に適切な表現だと思う。中学入試をさせる理由のひとつが、「先生から嫌われると内申点が悪くなって不利」という点なのもうなづける。
【最新資料】千葉県の内申
平成18年度千葉県公立高校入学者選抜における調査書の評定に係る調査結果の概要
(
平成18年3月卒業見込み者の第3学年12月末日における調査書の評定の分布)
|
5の生徒
の割合 |
4の生徒
の割合 |
3の生徒
の割合 |
2の生徒
の割合 |
1の生徒
の割合 |
国語 |
20.9% |
29.5% |
34.6% |
11.8% |
3.2% |
数学 |
22.8% |
26.6% |
31.9% |
14.8% |
3.8% |
英語 |
23.7% |
24.3% |
32.1% |
16.2% |
3.7% |
理科 |
22.7% |
29.0% |
33.5% |
11.5% |
3.3% |
社会 |
23.8% |
27.3% |
33.2% |
12.4% |
3.4% |
音楽 |
24.4% |
34.0% |
32.4% |
6.4% |
2.8% |
美術 |
20.8% |
35.6% |
34.6% |
6.2% |
2.8% |
保健体育 |
21.2% |
34.4% |
36.0% |
5.5% |
2.9% |
技術家庭 |
18.9% |
36.9% |
35.2% |
6.3% |
2.8% |
★「5」と「4」でほぼ過半数。ちょうど真ん中の生徒はギリギリ「4」がつく!「3」は真ん中じゃない!
★実技教科は「1」と「2」は10%もいない100人中90番で「3」がつく。実技で「2」「1」だと他の生徒に差をつけられてしまう
東京都の内申
平成18年度千葉県公立高校入学者選抜における調査書の評定に係る調査結果の概要
(平成18年3月卒業見込み者の第3学年12月末日における調査書の評定の分布)
|
5の生徒
の割合 |
4の生徒
の割合 |
3の生徒
の割合 |
2の生徒
の割合 |
1の生徒
の割合 |
国語 |
13.8% |
26.7% |
40.7% |
14.4% |
4.3% |
数学 |
15.6% |
24.3% |
37.7% |
16.1% |
6.4% |
英語 |
16.5% |
23.5% |
37.3% |
17.0% |
5.7% |
理科 |
14.4% |
26.2% |
40.6% |
14.3% |
4.4% |
社会 |
15.4% |
25.1% |
38.9% |
15.7% |
4.8% |
音楽 |
13.8% |
27.9% |
43.0% |
11.8% |
3.5% |
美術 |
12.1% |
28.1% |
44.5% |
11.6% |
3.7% |
保健体育 |
11.4% |
29.3% |
44.7% |
10.9% |
3.6% |
技術家庭 |
11.5% |
27.5% |
45.9% |
11.8% |
3.3% |
千葉県は、東京都よりも圧倒的に甘くついています
千葉県内では英数国理社の「5」は22%前後ですが、東京都は15%前後です。「5」と「4」の合計も、千葉県ではほぼ50%なのに、東京都はほぼ40%です。最新の資料は見ていませんが、埼玉や神奈川も、東京都に近い数字です。千葉県だけインフレ状態です。