なぜ私立中受験か?

 私立中学に進むには、かなりの時間とお金を投入する必要があります。それでも私立中学受験を多くの小6が受験するのは、なぜなのでしょうか?その理由をまとめました。

受験する理由@大学の推薦枠
 私立大学の附属なら、推薦ワクが大きいので、系列の大学まで進学するのに圧倒的に有利になります。下記は2005年春の数字
東海大浦安 高校卒業生392人のうち、東海大へ232人進学した。
千葉日大一 高校卒業生378人のうち、日大へ214人が推薦で進学した。
専修大学松戸 高校卒業生603人のうち、専修大へ99人推薦で進学した。
芝浦工大柏 高校卒業生301人のうち、芝浦工大に68人推薦で進学した。
 たとえば、専修大松戸は推薦で専修大学に進んだのは「6人に1人」だが、上位の成績をとらなくては推薦されないわけではありません。上位の生徒は「早稲田20人」「明治大41人」など、他大学を積極的に受験して外に出ますので、真ん中くらいの成績の生徒が推薦を活用して専修大に進みます。(中学からの生徒は外部受験させるので、専修大への推薦は狙わせないという指導がなされているようです。)
 中学受験の段階では、将来どんな方面に進むかハッキリとはわかりません。そこで、学力をつける進学校として利用して、成績上位になれれば大学受験で早稲田慶応を狙い、成績が中くらいだったら推薦枠を使って系列大学に進むという両面作戦がとれる中学が目立ちます。

受験する理由A学力がつき、大学受験に有利
 公立中学は、授業時間が削減され、以前より学力が低下しているのは明らかです。私立中は、十分な授業時間を確保し、学力アップを目指しています。次の表は「中2」の授業が毎週何時間あるかを示したものです。
. 公立中 八千代松蔭 東邦大東邦 麗澤 暁星国際 和洋
国府台
千葉大附
(国立)
英語 10
数学
国語
社会
理科
 私立中の数学は毎週5〜6時間です。中学受験を勝ち抜いた生徒なので、基礎的な計算力は十分すぎるほどあり、難しい応用問題を解くのに時間を使えます。
 英語は、公立中のほぼ2倍の時間数です。英語を小学校の時から習っている生徒は少ないのですが、勉強の姿勢が出来て吸収力がある生徒だけを相手に授業できるので、時間数だけでなく効率もよい授業ができるはずです。
 なお西千葉にある千葉大学附属中は、国立ですので公立中と同じ時間数になります。

受験する理由B先生の意欲がある
 公立の中学校でも良い先生は多いのですが、残念ながら「ハズレ」の先生もいます。公立の中学では、校長や周囲の先生からヒンシュクを浴びても、クビにはもちろん転勤も簡単にはできません。しかし私立中学では、やる気のない先生がいたら、志願者が大幅に減って、死活問題になります。私立中学校としては、放置できません。
 別な言い方をすれば、私立中には非行に走る生徒はほとんどおらず、余裕がありますので、中間テストで点数が80点から50点に落ちただけで「どうしたんだ?」と親身に話をしやすい環境にあるのです。公立だと20点以下の生徒が多数いますので、80点から50点に落ちた生徒にかまっていられないのです。
 ちなみに、教員の採用試験は公立と私立で選抜基準が違うので、どちらが難しいとか優秀とかは一概に言えません。ただ公立の教員になるのは、生徒が急増が一段楽した時期(現在45歳以下の先生)は、結構難しかったのは事実です。

受験する理由C友達が良い(!?)
 小学生のうちは、親の言うことを聞きますが、中2中3になると、親の指示に従わなくなります。親によるコントロールがきかなくなる時期ですので、どんな友達ができるかは大きな影響があります。
 家族より、友達を優先する時期ですので、どんな友達ができるかで、大きな違いになります。乱暴な言い方を承知で言わせていただくと、私立中に通わせる家庭は、子供にカネと手間をかける家庭ばかりですので、保護者から見ると比較的安心できる友達です。テスト前には十分に勉強して当たり前、深夜に外で遊ぶようなことは許されないという価値観の家庭です。友達の前では「くそババア」と呼んでも帰宅が遅くなると「あ、おかあさん、今日部活で話し合いかあって遅くなるね」などと電話連絡を入れたりするのです。
 ただ、友達が家の近くではないので、かえって親がチェックしにくいという面もあります。

受験する理由D施設・設備が良い
 私立中学の多くは、冷暖房完備です。近頃の夏の暑さは、半端ではなく、精神力で乗り切れるものではなく、冷房ナシでは勉強どころではありません。
 私立高校は各高校独自の自慢の施設があります。また、高校と共通の施設ですので、理科の実験道具も本格的なものがあります。広い運動場や温水プールなど体育施設も立派な学校が目立ちます。

受験する理由E高校受験は別の意味できつい
 公立中学に進むと、高校受験をすることになります。
 公立中からの高校受験は、私立中受験とは違った別の「つらさ」があります。
(1)高校入試は学力以外の面でつらいことがある
 テストで良い点を取っても、先生の印象が悪いと内申点が低くついてしまう。学力以外の面が過大に評価されるので、高校合格のために部活・ボランティアなどをやるという本末転倒の状態になりかねない。推薦を使えば受験に有利になるが、生徒の成績が高校側の基準を超えていてなおかつ欠席や素行に問題なくても、中学校が推薦を渋って保護者と摩擦が発生することもある。
(2)高校募集していない学校がある。
 千葉県内は関係ないが、都内の私立の難関中学の半分以上は、高校入試をしていない。麻布・武蔵・桜蔭・女子学院・早稲田・駒場東邦・白百合・芝など、高校からは受験すらできない。特に女子の上位校は、数が少ないのできつい。
(3)上位生には意欲がわきにくい環境
 放っておいてクラスで1〜2位が取れる成績上位の生徒にとっては、現在の公立の小中学校は、学力を伸ばす体制にはなっていない。昔に比べて学習内容が大幅削減され、授業のレベルが落ちた。それ以外にも、英語をきれいな発音で読むと冷やかされ、90点取れるテストでミスをしないようにする勉強では、向上心を持つのはなかなか困難だ。

しかし、中学受験は良いことばかりではありません。マイナス面もあります。
マイナス面@お金がかかる
 私立中受験にはお金がかかります。中学によって差はありますが、入学時に20万、毎年60万くらいかかります。その他、定期券、制服といった費用もかかります。千葉の学校は都内より安い学校が多いのですが、それでもかなりかかります。
 受験までにもお金がかかります。小5小6の2年間、大手塾で本格的に勉強すると150万から200万を覚悟する必要があります。選択制の授業を受けないなどで節約しても100万は超えるでしょう。
 お金がちょっと・・・という方にも、制約はありますが、道はあります。千葉大附属は「国立中」ですので、授業料が不要です。高校受験はありますが、環境はけっこう良いと思います。(都内の国立中は、開成中並の難関校が多いので、現実的ではありません) また女子中を中心に、かなり成績に余裕を持って合格すると「特待生」扱いしてくれて、入学金・授業料免除という学校もあります。

マイナス面A受験勉強に時間が取られる
 有名私立中に合格するには、必死に勉強して熾烈な競争を勝ち抜く必要があります。夕方4時に家に帰ってきて、おやつを食べて学校の宿題を済ませて直ちに塾へ。塾では5時から9時半まで授業。弁当も塾で食べることが多いです。週5日も通うのに加え、帰ってきたら1時間くらい宿題をしないと終わらない。全部終わって寝るのは12時・・・小6の受験生はこんな生活をしています。上位生は別ですが、勉強が嫌いな生徒、飲み込みが遅い生徒にとっては、かなりの負担になるはずです。
 ただし、勉強はつらいものの、塾は結構楽しいのです。塾の授業は難しいだけに、解けたときの充実感は何とも言えません。
 また、私立中の新規開講などで、定員が増えたため、以前は小5から鍛えても合格が微妙だった私立中でも、小6から十分合格可能になったところもあります。そういう中学の中から納得できる中学を探すことができれば、週3日通塾で宿題も少しの「のびのび受験」で無理なく合格させられます。

マイナス面B友達や担任との関係が悪くなるかも
 友達から遊ぼうと誘われても、塾に行って遊べないのは、つらいものです。
 担任の先生の中には、中学受験に批判的な人もいます。たとえば「受験するなんて勝手だ」「調査書は書きたくない」と受験に反対したり、「あなたは受験するのに、こんな問題で間違えるの?」とイヤミを言ったりされます。本来はけしからんことですが、理解のない先生に当たると、大変なのが現実です