金色の髪がふわりふわり、風に揺れる。
まるで御伽話の王子様みたいな、綺麗な金色の髪。
でもね、眠ってるのは普通はお姫様のはずなのよ、ジローちゃん。

「そんでもって、起こしに来るのは王子様のはずなんだけどねぇ……」
「……ぐー……」

夢の国の王子様は、私の声が聞こえているのかいないのか、ごろりと寝返りを打つ。
羨ましいくらいやわらかなその髪にくっついた草を取ろうと伸ばした指で、
髪も少しだけ一緒につまんで引っ張ってしまった。
呑気なその寝顔が少しだけ歪んで、眉間にほんの少ししわが寄る。
うっすらと開いた、どこか焦点の合わない目がじっと私を見つめた。

「……あに……?」
「ごめん、髪にね、草がついてたの、取ろうとして」
「……あー……あんがとー……」
「どういたしまして……って言うか!起こしにきたのよ、ジロちゃん!起きて!!」
「んあー?」

半閉じの寝ぼけまなこがジーっと私を見る。

「ねみー……」
「寝ちゃダメー!もう部活の時間なんだってば!ジローちゃーん!」

その目が完全に閉じそうになるのを、必死に耳元で怒鳴って止めている私に向かって
ジロちゃんは半分夢の世界に行ったまま、ほにゃらっと笑って言った。

「……ちゅーしてくれたら起きるー……」
「……は!?」
「してくんないなら、おやすみぃー……」
「ちょっ!ジローちゃんっ!?」

半端じゃなく睡魔と仲の良い眠り王子は、再び気持ちよさげに目を閉じようとする。
ヤバイ、二度寝されたら起こすのがもっと大変になるっ!!

「だ、誰も見てない、よねっ……?」
「んー……あにがー……?」

仕方ない、背に腹は代えられない……!
周りに人気がないのを確認してから、私は素早く、ジロちゃんの唇にキスをした。
キスをねだった本人は、何度か瞬きして、そして。
慌てている私をよそに、がばっと勢いよく身を起こして、それはそれは嬉しそうに笑った。

「おっはよー!」
「……オハヨ」
「わざわざ起こしに来てくれたんか、サンキュー!!」
「どーいたしまして……」

たった数分の間に、なんだかぐったり疲れちゃった私を見下ろして、
ジロちゃんはにっかりと悪戯っ子みたいに笑って言った。

「ホントにちゅーしてもらっちゃったJ!やっりー!」
「大きな声で言わないで……」
「すっげーなー!ホントに気持ちE!」
「……は?何が?」
「おしたりがさー、ちゅーしてもらうと気持ちよく目が覚めるから試してみ?って!ホントだったー!」
「……そう、忍足が、ね……」



無論のこと、忍足にはしっかり天罰を食らわせた。







05/05/27〜05/07/31 Web拍手にて公開
05/08/01 再公開