ぐらつく荷台の上、後ろ向きに座って見た目よりも大きな背中に寄り掛かった。
ちっ、と小さな舌打ちの音。


「重てぇ!」
「しっつれいな!標準値超えてないもん、重くないよ!」
「つか微妙に上り坂になってんのわかってんだろ!寄り掛かんなよ!」
「なーさーけーなーい!男でしょ、このくらいの坂で泣き言言うなー」


そう言ってわざと背中に圧し掛かったら、宍戸はくっそー!と
一声吼えて、ペダルをこぐ足に更に力をこめた。
そうして目的のコンビニに辿り着いた時には、
キャップから覗く形のいい額はいい感じに汗に濡れていた。


「ごくろーさまー」
「……お前、標準値超えてないって絶対嘘だろ」
「ホントに失礼だよね、アンタって!!」
「あの重さはぜってー超えてるぜ。やってらんねー」
「超えてまーせーんー!試しに持ち上げてみたらどーよ!ホラ!」


どうせ宍戸のことだから、そんなこと出来っか!って真っ赤になって怒鳴って終わり。
そう思ってたら。……そう思ってたのに。


「……ちょっ!ちょっとぉっ!?」
「ち、やっぱり重てぇな」
「ヤダちょっとやめ……降ろしてーっ!!」
「だっ!あっぶねーだろ、暴れんじゃねーよ!!」


予備動作もなしに軽々と抱えあげられて、ジタバタもがく私を宍戸の腕がしっかり抱きしめた。
思ってたよりずっとたくましい感触に、かーっと頭に血が昇る。


「ぎゃーっ!!」
「降ろしてやっから暴れんじゃねーっての!」


地面に足がついた瞬間、ばっと飛び退いて距離を取った私を見て、宍戸はにやりと笑った。


「……標準値は超えてねーかもしんねーけど、やっぱ重かったぜ」
「あ、あんたねぇっ」
「持ち上げてみろっつったのはテメーだろ」


額に浮かぶ汗が日差しを受けて微かに光る。
心臓がドキドキいってて、次に宍戸が口にした台詞に言い返す余裕もなかった。




「あんまし男ナメてんじゃねーぞ」








05/04/08〜05/05/26 Web拍手にて公開
05/05/27 再公開