その言葉をはっきり口にするのは、あたしたちには似合わなそうだけど。
でもそれがホントの気持ち。






一生、ずっと、永遠に、愛してる。


Harukaze Kurobane











「ねーバネー」
「んあ?」
「バネってさぁ、長男じゃん?」
「だからどーしたよ」
「てことは一応跡継ぎ息子じゃん?」
「継ぐような財産ねーけどな」
「つーことはー……」
「何だよ」
「あー、でもなんかすごい微妙?」
「だから何だっつの!」
「んだからさ、黒羽 って、微妙に語呂悪くない?」
「ハァ?」
「かといって 春風なんてもっと語呂悪い?」
「……語呂云々はともかく婿入りは無理だろ」
「そーだよねー長男だもんねー。したらやっぱイマドキ風に夫婦別姓とかか!」
「うちのお袋はそれイヤだっつってたぞ」
「そうなの?おばちゃん意外に古風だー」
「嫁に来るってのは娘になるってことだから、ちゃんとうちの姓名乗って欲しいんだと」
「なーる。でもまぁおばちゃんとだったら嫁姑バトルの心配はないよね」
「お袋、昔っからお前のことめっちゃ気に入ってるしな」
「どっちかってゆーと障害はうちのお父さん?」
「だな、一人娘だしな」
「あっ、あたしアレ憧れなんだよね!『親父の一番長い日』!」
「何だそりゃ?」
「さだまさし!わかった娘はくれてやる そのかわり一度でいいうばって行く君を 君を殴らせろと言った〜♪ってヤツ!」
「……とどのつまり俺に親父さんに殴られろってか」
「……あっはっはっは」
「笑って誤魔化してんじゃねーよ!オラ!」
「ギャー!暴力反対!ドメスティックバイオレンスは家庭崩壊の第一歩よ!」
「そこまで話を肥大さすな!」
「ギブ!ギブ!あっそーだ、ねぇ結婚式はさ!」
「ああ?何でいきなりそっちに話が……」
「いいじゃん!でね、あたし絶対教会でウェディングドレスがいいんだけど」
「……好きにすればいーんじゃねーの」
「でもさぁ、バネは絶対タキシード似合わなそうだよね」
「うるせーよ!」
「でもそうだって!絶対紋付袴の方が似合いそうだよ。それ考えると神前か仏前の方がいい?」
「別に何でもかまわねーよ、俺は」
「そうなの?」
「大体結婚式なんてのは嫁さんの方が主役で、旦那は添え物みたいなもんだろ」
「随分穿った意見をお持ちで」
「こないだ親戚の結婚式行った」
「ああ、従兄弟のお兄さんの?」
「そうそう。嫁さんだけで三回もお色直ししてんのによ、旦那の方は着たきりスズメで笑えたぜー」
「うわぁ、それ切ないねー」
「だろ?でもまぁそんなもんだろよ」
「じゃあ教会で洋風ウェディングでいいんだ?」
「だからお前の好きにしろって」
「誓いの言葉とか指輪交換とか誓いのキスとか」
「……あ?」
「そーいうの、みんなの前でやってくれるんだ、バネ」
「…………」
「サエとか亮がやるとめちゃくちゃハマるから笑えないけど、バネがやるとなると面白いよね」
「ちょっと待て!」
「なにー?」
「前言撤回だ!神前か仏前にしとけ、俺は三々九度で酒が飲みてぇ!」
「何その訳わかんない理由!却下!!」
ー!!」
「『汝、健やかなる時も病める時も、これを愛し、生涯を共にすることを誓いますか?』」
「ああ?何だいきなりっ」
「予行練習!ほらぁ『誓います』は?」
「……ばーか、言えるかンなこと」
「なーんでよー!」
「何でもクソもねーよ、バカ」
「バカバカって何さー!あーそーですか、バネは私のこと愛してないと!そーいうことか!」
「あ?何でそこでそうなるんだよ!」
「あーあどうしよう、今からでもサエか亮あたりに乗り換えよっかなぁー。樹っちゃんもいいなぁ、優しいし」
「……
「何ですか黒羽君」
「……あのなぁ」
「はーい?」
「いちいち声に出して言わねぇでもわかるだろ!」
「何がー?」
「だからっ、そのっ……
愛してるってーのだよ!」
「…………」
「何だよその顔!まだ何か文句あんのか?」
「……やー、やっぱそういう科白はバネには似合わないなーと思って」
「てーめーえーはー!!」
「ぎゃーっ!暴力反対つってんじゃーん!!」
「ったく……」
「もー、すぐに腕力に訴えるのやめてよー」
「るせー」
「……ねーねーバネー」
「あァ?」
「愛してるからねっ」
「……そーかい」
「うん。バネの気持ちもちゃんとわかってるからねっ」
「はいはい」
「一生一緒にいようねー」
「……そうだな」











(05/02/14up)