さんっ!!!大丈夫ですかっ?!」

「あれぇ〜?チョータローだぁ〜」








こんばんわ、鳳長太郎です。


今、息を切らせて走ってきた俺の前には酔っ払いが約一名。


真夜中だと言うのに怒鳴りたしたい衝動に駆られている俺は、


どこか間違っているでしょうか?












HELP!!!












さん………何やってるんですか……?」




何とか声を抑えて目の前に居るさんに質問をした。

今は夜中の2時過ぎ。

普段ならとうに寝てしまっている時間だ。

でも俺は今恋人であるさんの家の玄関に居た。






「えぇ〜?チョータローも何でこんな所に居るのぉ〜?」

「貴女があんなメールを送ってきたからですよ……」




















そう、俺はさっきまで部活で疲れ果て、深い眠りの中に居た。

夢も見ないくらいの、深く、心地よい眠り。



でも夜中の2時を回ったころ、突如携帯電話のeメール着信音が鳴った。
そして寝ぼけ眼でそのメールを開いてみるとさんからで、




『いまじたくたすけて』



とだけ書かれていた。

全部が平仮名だったせいで最初はピンとこなかったけれど、頭が覚醒してくるに連れて顔から血の気が引いてくるのが自分でも分かった。



『今、自宅。助けて』



もし漢字に変換したらこうなるのだろう。

分かった瞬間俺は服を急いで着替え、家を飛び出していた。














「何であんなメールを送ったんですか…?」

「えーと…鍵が見つからなかったの。」

「え……?」

「いつも入れてる場所に鍵が見つからなくってぇ…チョータローにメールしたの。」

「でも今は家の中にいるじゃないですか。」

「ポケットの中に入ってた。」




つまり要約してみれば、さんは友達かなにかと飲みに行っていつも以上のお酒を飲んで帰ってきた。

そして鍵を開けようと思ったらいつも鍵を入れている場所に鍵が見当たらなかった。

そして俺にメールを送った。


”自宅の鍵が見当たらないの。家の中に入れないから助けて。”


そういう内容のメールを。

そして俺が慌てて走っている間に彼女はポケットの中に入っていた鍵を見つけた。




ただ、それだけのこと。






















「本当にっ…心配したんですからね?!」



ようやく理解した俺は気付くと声を荒げていた。

いや、声の大きさはそのままに口調だけが怒っていて。

そんな俺を見てさんは少し目を丸くした。






「”いまじたくたすけて”なんてメールを送ってくるから…漢字に変換することも出来ないような状態なのかと思って……っ」









本当に、どうしようかと思って。


さんの身に何かあったら。


俺は、どうしたらいいんだろうって。


不安で不安で、慣れているはずの夜の暗闇にさえも押し潰されそうになりながら。


さんが無事であることを祈って胸に下げたクロスを握り締め、





無我夢中で、駆けていた。




















「………ごめんなさい……」



お酒の入っているさんは、しゅんとした様子で俺の服を握り締めていた。

こんな彼女を見るのは初めてで。

いつもはさんが俺のことを犬みたいだと言っているけれど、今の彼女はまるで叱られた子犬の様だ。

そんな様子を見ていると、今まで含んでいた怒気も失せてくる。























「はぁ……でも何も無くて良かった…………」


そしてそう言うと、彼女を腕の中に収めた。


「わわっ」




さんは照れて離れようとしたけれど、そんなことは許さずに両腕にこめた力を少し強めた。







ゆっくりと、確かめる。


腕の中の温もりを、逃がさないように。


闇に押し潰されそうになっていた心が平穏を取り戻す。


すると、別の意味での胸の高鳴りが俺の心臓を襲った。






今の状態を図式にしてみると、








(お酒を飲みすぎたさん=少し涙目)

×

(彼女は俺の腕の中=上目遣い)



理性の崩壊まで残り……
















・・・・・・・。





















!!!!!














カカァァァァァァ////










先程までは必死で気になど出来なかったが、今は夜中。

そしてココはさんの家。

俺は男で、さんは女。




健全な中学生である俺を赤面させるには上の三点だけで十分に事足りていた。




ひとまず俺はさんの顔が見えないように抱き寄せ、肩の辺りに顔をのせた。

もしかしたらこちらの方が危険じゃないかと思われるかもしれないが、俺にとっては彼女の涙目上目遣いの方が精神的に堪える。

ここでもし俺がさんを離したりしたら、必ず彼女は俺の顔を『どうしたのー?』とか言いながら覗き込むだろう。

それだけは、マズイ。

絶体絶命だ。

いや、俺がじゃなくてさんが。



そんなことになるぐらいならかえって抱き寄せて顔が見えないようにしてから気を落ち着かせた方が安全だ。

実際、結構心臓の音は落ち着いてきていた。

















と、思ったら。







いきなりカクンと腕の中の温もりが重くなった。

何かと思って顔を上げ、彼女の顔を覗き込んでみると、


「スー…スー……」




「ね……寝てる………」


そこにあったのは自分の腕の中で眠る、愛しい彼女の顔だった。

おそらくお酒を飲んだ時の眠気が限界だったのだろう。

そしてきっと抱きしめられた時の人肌の温もりが心地よくて眠ってしまったに違いない。

でも、とにかく彼女はスースーと寝息を立て、気持ちよさそうに眠っていた。





俺はさんを起こさないように慎重に抱き上げた。

そして玄関から彼女の部屋へ向かう。

今まで何度も来たことのある部屋の夜の姿。

それは以外にも孤独で殺然としたものに見える。

あの、昼間さんがいるときは日溜りのような空間が。



俺はゆっくりと彼女をベッドによこたえながら部屋の中を見回した。

そしてふと目に付いたのが写真立てに飾られた数枚の写真。

そこに写っているのは俺の知らないさんと、



俺より大人の、男の人達と、女の人達。



もともとどちらかといえば子供っぽいさんだから、そこまで普段から年の差を感じることは無かった。

もちろん2,3歳分は感じていたけれど、ココに写っているのは"大人"のさん。

もう成人した、俺より6歳も年上の。





俺がさんを一番遠くに感じた瞬間だった。

















でも、


けれど、






さんから来たあのメール。

"たすけて"と書かれた、あの。

あれの真意は大したことではなかったけれど、それでも彼女は俺に助けを求めた。

酔っていた彼女の心にも俺は棲んでいた。

さんの知り合いの大人じゃなくて、

他でもない、まだ子供の俺を選んだんだ。

思い起こしてみると、それが無性に嬉しかった。


”恋人なんだからあたりまえ”

そんな風に言われてしまえばそれまでだけど、俺は本当に嬉しくて。

まだ子供の俺でもさんは俺を頼ってくれた。

夜中にあんなメールで起こされてもいいか、と思えた。














彼女の傍に行き、顔にかかった髪をそっとどけた。

そして、額に小さなキスを落とす。





「おやすみなさい、さん……」











この、安らかな寝顔を守るためなら、





俺を頼ってくれる、年上の可愛い恋人のためならば





夜中だろうと、授業中だろうと、どこにいても駆けつける。

































貴女が呼べば、






いつ、どこで、何をしていたって、




俺は貴女の元へ駆けるでしょう。










"HELP!" のたった、 一言で。


























―――後書き―――

お待たせしました蒼依さん!!!
ようやく仕上がりました、2000HITキリリク夢です。
こんな駄文で申し訳ないですが、頑張って書きました。
涼篠蒼依様のみお持ち帰り可能です。
でわ、これからもサイト、管理人共々よろしくお願いします。








相互リンクして下さってる『Liberty World』の汐城那津様より、
2000Hitのキリリクでいただきましたー!!!
那津さんの書かれる、すっきりとして洗練された文章は私の憧れなのです。
その那津さんの書いて下さったチョタドリが私のサイトに……
も う 夢 の よ う ……!!
チョタですよチョター!!いやー!カッコ可愛いーーーっvv
チョタが真夜中に私の身を心配して(嗚呼カン違い)、走って来てくれるんですよ
(だから違うって)!?
本 当 に 夢 の よ う ……!!!(しつこい)
那津さん、本当に本当にありがとうございました♪
こちらこそ、今後ともよろしくお願い致します!