ロード・オブ・ザ・リング 〜帝王の帰還〜


「それじゃ 武藤、後の事は頼んだぞ」

「ああ、まかせとけ」


真冬だと言うのに健康的な小麦色の手が 俺の肩に置かれた。

そのたくましい手を見て、先週の美術の授業中 自画像を書きながら牧が


「茶色の絵の具を貸してくれないか、武藤。どういうわけか、やけに減りが早くてな」


と さわやかに笑っていた事を思い出した。

ギャグだったのか本気だったのか・・・それは凡人の俺には知る由もないが

ともかくも俺は、牧紳一と言う男の中の男を 友として、チームメイトとして、そしてキャプテンとして

心の底から尊敬している。



-----そんな牧が、今日から3日間 親戚の法事で遠方へ出向くことになった。

牧は 成績はいいが アレ なので、生まれてこの方 ただの一度も風邪をひいたことがないらしい。


「アレは風邪をひかないって・・昔から良く言いますもんね」


「な・・なんだ神!やぶから棒に!」

「いえ・・・こっちの話です」


とにかく、健康優良児・牧は 部活も学校も休んだことがなく、オレたちバスケ部は この3年間

常に牧の厳しい監視下に置かれながら 部活と私生活を送ってきたというわけだ。

全国を目指す運動部だから 当然、部内恋愛どころか彼女を作るのも禁止されていた。

自分に彼女が出来ないからって、その腹いせなんじゃないか?と思っているのは俺だけじゃないが

報復が恐ろしくて、とてもそんな事口に出していえるわけがない。


という経緯で、ずっと牧の目を恐れ みんなじっと身を潜めていたんだ。



・・・そして 今日から3日間、あの牧がいなくなる。



「・・・フッ」

隣に立っていた神が、小さな忍び笑いを漏らした。

口は笑っているが、目は笑っていない。


「お・・・おい、神。お前、なんか 悪巧みしてないか?」

「何言ってるんですか、武藤さん。別に悪巧みなんて・・・・俺に限ったことじゃないですよ」

「え・・!?」


よくよく辺りを見回すと、普段は純朴そうなバスケ部のほぼ全員が 

うつむき加減に、とても悪そうな含み笑いを浮かべている。

こ・・こいつら全員、牧のいないスキに 何かの禁を侵そうとしている・・?




「じゃあ、行ってくる!」


一人だけ、一点の曇りなき笑顔を浮かべ 出立した牧に、部員達は









高らかに手を振った。


     三条さんに 今日こそ告白しよう・・

     伊集院さんの電話番号、きいといてよかった・・

     勝負はこの3日だ・・



ああ・・心の声が聞こえる・・

俺は、牧からバスケ部を任された身として、この事態をどう収拾すればいいのだろう・・

-----もう 誰も信じられない。



狂気的な彼女



彼女が笑えば、世界が華やぐ。

そして、その彼女の熱い視線が今、俺だけに注がれているってこと、他の奴らが知ったら 嫉妬されちゃうかな★


「おはよう、さん!」

「おはよう、小菅君。そして、さっそく宿題を見せなさい」

「やだな、さん。もしかして、さっきのあの熱い視線は もしかして このために・・?」

「しのごの言わずに 貸しなさい」


ガッ!と差し出された小さな手のひらは、白く透き通っていて 近くに寄れば すごくいい匂いがして、さ

こういうの 「白魚のような手」って言うのかな。


さんの手、すごくキレイだね」

「ええ、家で 全く家事を手伝わないからよ」

「でも俺、そうやっていつも正直なさんって・・とても素敵だと思うよ」

「・・・」

「・・・聞いてない・・」


人生最大の口説き文句が アッサリと無視された俺の、やり場のない切なさ・・そして敗北感。

このまま 宿題を貸しっぱなしの 見返り無しなんて耐えられない。

俺は、再び強引にさんの隣に腰を下ろし、話を振った。


「あのさ・・さんの趣味ってどんな-」

「それ以上口を開いたら・・」

「いいじゃん!話くらいしたって!」


ガッ!


指と指のあいだに、さん愛用のシャーペンが突き刺さった。


「うわっ!・・ご・・ごめん!」

慌てて謝ろうとした俺とさんのあいだに、「まぁまぁ、2人とも落ち着いて」と

突然神が割り込んできた。


「そんなにヒートアップしないでさ。ね?もほら、宿題なら 俺が見せてあげるって

 いつも言ってるじゃないか。 どうせ全教科やってきてないんだろう?」

「やかましい」

「え・・?」

「その饒舌なお口を縫い付けてやろうか?って聞いてるのよ、この骨川筋衛門が。

 見て分からない?私は今、そこのベンチ要員K(小菅のこと)に借りた宿題を写すのに忙しいんだから

 私の視界をこれ以上チョロチョロしようものなら、その アホみたいに大きい眼球の白目部分に

 油性マジックで 恥ずかしい単語を落書きするわよ」

「でも。良く考えてみてよ。小菅のなんかよりも 俺の宿題を写したほうが 正解率高いと思うよ?」

「・・神くん・・!」


その瞬間、さんの瞳の中の輝きが増した。


「ありがとう、神くん!じゃあ、遠慮なく」


あぁ、分かっていたよ。さんはこういう人だ。

それでも好きにならずにいられないのが何故なのか・・自分でも良く分からないくらいに

俺は 君が好きなんです。



屋台の周辺で愛を叫ぶ



学校の側の公園で、タイヤキの屋台が出ている。

そんな噂を聞いた信長は、

先輩って、タイヤキ大好きなんですよね!俺、さっそく買ってプレゼントしてきます!」

と 喜び勇んで買いに行った。

心配だから、俺もついていくことにした。




「あれ・・?先輩じゃないっすか!」


ついた矢先、そこには もうと連れの友達が数人、おいしそうにタイヤキをほおばっている。


「あら、こんなところに野生動物」


は、いつもの あのエンジェルスマイルで囁く。

天使の微笑みのワリには、セリフが非道極まりない。


「どうしたの?最近の類人猿は 貨幣が使えるようになったの?」

「はい!先輩にタイヤキプレゼントしようと思ってきたんだけど、先越されちゃいました、アハハ」

「そうだったのー。でも安心して、私、下等動物におごってもらうような地に落ちたプライドは持ってないから」

「でも、偶然会えただけでもラッキーっす!」


話がかみ合ってないってこと、そろそろ気付いてよ信長。

見ているこっちが、涙さそわれるじゃないか。


「あの!プレゼントはないんですけど・・その・・おれ、先輩のことスキで・・
 
 だから・・・えっと・・・付き合ってください!」


は、顔色も変えずに 黙って信長を見ていた。

そして、食べ終えた紙くずをごみ箱に放って


「ごめんね」


「ありがとう」


と、笑った。








彼女達が消えた公園の片隅で、がっくりとうなだれる信長。

ハタから見てると面白いけど、やっぱりちょっと可哀想だ。


「・・帰ろう、信長」

「はい・・・神さん・・」




鬼(牧さん)のいぬ間に手に入れようと、必死でもがいた恋の行く末は

全員が全員惨敗に終わった。






+++オマケ+++


〜。さっき、木の陰で神君が隠れてみてたよ?」

「うん、知ってる」

「清田君の告白が心配で ついてきてあげてたのかな。後輩想いだよね、神君って」

「そうだね・・すっごく優しいし・・」

「もう!そんなにスキなら、さっさと告白すればいいんじゃない!」

「やだ・・無理だって!私、神君を目の前にすると、緊張して自分が何喋っているか分からなくなるんだから!」



・・・恋の行く末は?
















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スラムダンク神夢です!!スラムダンクコンテンツないくせに、『見てホラこんな素敵な夢書いてもらっちゃったのー!』と見せびらかしたいばっかりに無理を言って掲載許可をいただいてきちゃったよ!
思い起こせば高校時代、初めて創作に手を出したのはスラムダンクの同人だった私……あの頃はヘタレ絵で漫画も描いていたけど、基本はやっぱり小説だったな……。
そんなワタクシ、ブチョウさんのドリで鬼畜ジンジンの素敵さに目覚めたといっても過言ではありません。鬼畜ヒロイン好きも然り。そんなブチョウさんの書いて下さった鬼畜ジンジン&ヒロイン(&海南オールスター)夢を自分のサイトに置かせていただける日が来ようとは……!!
ブチョウさん、本当に本当にありがとうございました!!
こんなアホな私ですが、これからもどうぞよろしくお願い致します!