キミを見つけられなくて、焦っているのは俺だけじゃないよ。 だってホラ、バスケ部全員の 汗に濡れたTシャツの背中が、あからさまなキミへの想いを物語っている。 名前で呼んで 「清田!そっちは どうだった!?」 「あ、牧さん!すいません、見つけられませんでした」 夏休み最後の日曜日、真夏の猛暑の中 最後まできつい練習に耐え抜いたご褒美に、と 一日完全なオフを プレゼントしてくれた監督の厚意に甘え、俺たち海南バスケ部は 用事のあるものを除いてほぼ全員で 連れだって花火大会に来ていた。 もちろん、マネージャーであるも 一緒に来るはずだった。 ・・・というか、彼女の浴衣姿見たさに来ているメンバーも 多いんじゃないだろうか。 約束の時間を過ぎても、待てど暮らせど姿を現さないが心配になり、数人ずつに分かれて 彼女を探し始めたのはもう15分以上前の話だが、それでも一向に あの小さな背中は見つからなかった。 「こんな事になるなら、トランシーバーでも持たせておくべきだったな」 「はい、そうですね・・・・って、えぇ!?携帯じゃなくてトランシーバー!?」 「ん?どうした、神。何か問題でもあったのか?」 「あ・・いえ、別に」 言動はともかく、眉間にしわを寄せて腕組をする牧さんは、誰よりもの事を心配しているようだ。 「でもさ、マネージャーも この辺詳しいしさ、そんなに心配しなくても大丈夫なんじゃないか?」 「そうだよな。子供じゃないんだしなぁ、マネージャーも」 「子供じゃないから 余計心配なんだろ!マネージャー、すげぇ可愛いし」 ------バスケ部のほぼ全員は、彼女の事を「マネージャー」と呼ぶ。 という名前を知らないわけじゃない。 親しみと愛情を込めて、あえてそう呼んでいるのだ。 俺たちのマネージャーは 彼女しかいない、皆がそう思っている。 そういう意味では、むしろ 名前で呼ぶよりもっと気持ちのこもった呼称なのかもしれない。 先輩としての敬愛、同級生としての友情、下級生としての愛情・・・付加される気持ちの種類は メンバーそれぞれ違うものなんだろうけれど、きっと その想いを超えて「女の子」として好きだと 感じている奴も、きっと1人や2人はいるんだろうな。 「どうします、牧さん?このままじゃ、やっぱり心配で 花火大会どころじゃないですよ」 「・・そうだな。もう時間も遅いし、ここはいったん解散して、それぞれマネージャーの捜索に向かうとするか。 もしも9時までに見つからなかった場合は、各自 必ず自宅に戻るように。あとは、俺が連絡網で報告を回す。 分かったな?」 「「「オス!」」」 「よし、解散!」 パン!と手をたたいて、黒いTシャツと肌の境目が分からない牧さんは、高らかに合図の腕を上げた。 たまに、亜空間から現われた人間のような行動も取るけれど、やっぱりこんなときは本当に頼りになる人だ。 「俺は風上へ行く。神は 風下を頼んだ!」 「はい、分かりました」 捜索区域を 風上・風下で区切る高校生なんて、絶対牧さんくらいですよ。 そんなことはともかく、俺は 走って「とある場所」へと急いだ。 これだけは絶対に避けたいと思っていたけれど、こうも見つからなければ背に腹は変えられない。 「すみません・・」 たどり着いたその場所で、俺は覚悟を決め・・・そして。 ピンポ〜ン 迷子のお知らせです。 海南大学附属高校2年、 さん。お連れ様がお待ちです 至急、中央テントまでお越しください。 繰り返します・・ 10分後・・ 「・・・・」 「・・・・」 フグのように顔を膨らませて激怒したがやってきた。 「良かった!やっと見つかった」 「もう!神くん!なんて事してくれるのよ!」 ・・・・どうやらは、待ち合わせ時間に十分間に合うように家を出たはいいけれど、あまりの人ごみと そして、履きなれない下駄のせいもあってか、なかなかたどり着けなかった、それだけだという。 一応はメンバー全員で探したつもりだけど、それほど背の高くない彼女は、人波に飲まれて見つけにくかった。 確かに、どんな大群衆でも 頭一つ飛び出ている俺たちとは、勝手が違うんだよな。 -----浅葱色の和服が、を包んでいる。 どうしても逸らしがちになる目線の中、俺は 横目でちらちらと、不自然にならない程度の視線を泳がせた。 きっと、家を出るときは きっちりと結っていたであろう髪。 だけど、人波をかき分けてきた後の今は、白い首筋に おくれ毛がかかって たまに吹く夏の夜風がそれを揺らす。 うまくいえないけど、ただ 今思うことは ひとつ。 「浴衣、かわいいよ マネージャー」 「えっ!?」 「なんでそんなに驚くの」 「かっ!かわいいなんて、お母さん以外の人から言われたの うま・・生まれて初めてで!」 「そう?マネージャーって モテそうなのになぁ」 「めっそうも!あ・・神くんも可愛いよ!」 なんだよ、それ。と苦笑すれば、は 褒められたら褒め返さないと!なんて わけの分からない理論を 並べ立てては、右手をパタパタと仰いで 紅潮した頬の熱を冷ましていた。 腕時計の針は、8時30分を指している。 そろそろ花火の始まる時間だ。 その前に、牧さんにこの事を報告しなくちゃ、と思うけど、さすがの俺も トランシーバーなんていうハイテク機械 持ってないし・・・それよりもなによりも、 今は、マネージャーを 独り占めしていたい。 「皆はどこ?」 と尋ねるに、俺は 「ああ・・なんか全員、今日突然彼女が出来たから、その彼女と一緒に花火見るって 解散したよ」 と、にっこり笑って見せた。 「そんなさわやかな笑顔で あからさまな嘘つかないの」 「本当だって」 「やだなぁ、もう。それが本当だったら、バスケ部で彼女いないの 神くんだけになっちゃうじゃない」 「うん、そうだね」 だから、今夜は マネージャーが俺の相手してくれないと、ね? 「だって、”マネージャー”だろ?」 タン!と右足を踏み出して、一歩先から 手を差し出した。 ドンと 大きな音がして、今年最初の炎の花が 夜空に咲き誇る。 地上までもを明るく染め上げた7色の光が、のびっくりしたような表情を くっきりと照らした。 「マネージャー?」 「え・・あ・・うん」 うつむいて、ゆっくりゆっくり 俺のほうへと向けられる白い手が、差し出した自分の手の平に到達する前に こっちから包み込む。 その瞬間、見開かれた瞳は さらに大きくなって 俺を見上げた。 シュ、という点火音の後を、焦げた火薬の匂いが追いかける。 あと3秒で、また一つ 大きな花が夜空を彩る。 3秒------ の 小さな背中に 腕を伸ばした 2秒------ 大きくかがみこんで、の耳元のおくれ毛を 指ですくった 1秒------ ドォン・・という地響きにも似た音が、遠くで聞こえた " " 耳元近くで、彼女の苗字を呼んだ。 キミと出逢って、初めて口にした。 はたから聞けば、なんて事はない。 ただ、彼女の固有名詞を言葉にしただけ。 だけど、その意味が大きすぎて・・俺は これまで2年間、ずっとそれが出来ずにいた。 「じ・・・神くん・・?」 どうして?なんて キミは聞かない。 だって、どうせ 今ので 全部ばれちゃったよね。 でも、俺の気持ちなんて ばれればいい。 そうしなくちゃ、ずっとキミは、俺だけの女の子にはならないのだから。 「好きだよ」 今度は、顔を上げて 瞳を見下ろしながら伝えた。 何十センチも下方の、揺れる瞳には 紫色の空の花が咲いていた。 「神くん・・・ずっと”マネージャー”としか呼んでくれなかったから、私・・ただマネージャーとしてしか 見られてないんだ・・って、思ってた」 「・・・みんな 大事なんだよ、キミの事が。俺だって、皆で守ってあげられるなら それでいいって思ってた。 けど・・・ 今日のがあんまり可愛かったので・・・思わず 俺一人で守れたらいいのに、なんて・・ 本音がね、でてしまいました。 絶え間なく花火が打ち上げられているはずなのに、なぜか 大切な言葉を伝える時だけは その瞬間を避けてくれるかのように、しんと空気が静まり返る。 俺って、本当 運がいい。 Tシャツ越しに 左胸のあたりに寄せられたのは、火照ったの額。 「私も・・・好き」 やっぱり俺は、幸運だ。 こんなに大事に思う女の子に 「好き」だなんて、言わせて 次に俺は なんと返せばいいのだろう。 好きだよ、とも 可愛いよ、とも もう言った。 それ以上に、キミを喜ばせてあげられる言葉は・・? しばらく 思い巡らせてもう一度、俺は 背中に回していた腕の力を強めた。 " " -------- 一方その頃 帝王は、家電量販店にて 「すいません!トランシーバーください!」 「当店では、そのような商品はお取り扱いしておりません」 もうドリ建様に足を向けて寝られません(それは元から)!!! 見て下さい、、見て下さいよ、この素敵なリリカルジンジン……!!そして帝王・牧!! 先日『ドリーム建設株式会社』管理人営業ブチョウ様主催のスラムダンクチャットに参加させていただいた折、リクエスト受け付けますよ、とのブチョウ様のお優しい言葉にガッツリ甘え倒してお願いしたマイラブ神 宗一郎さんドリームです!うちのサイトに飾らせて下さい!という図々しいお願いにも快く是と言って下さったお優しいブチョウさんには、もういくら感謝してもしたりません……! ブチョウさん本当に本当にありがとうございます!!大っっっ好きです!!! 05/05/09 |