メールは恋愛には不向きかもしれない。
相手の声が聞こえないから…
声が聞こえないと不安になる。
voice
時計の針が十二時をさして間もなく、聞きなれたメロディがベッドの脇に置いたラケットバックの中から流れてきた。
ディズニーの『リトル・マーメイド』の中でロブスターが歌っている『アンダー・ザ・シー』は彼女のお気に入りで、
ディスプレイを見なくても直ぐ分かるようにと彼女が選んだ曲だった。
「さん」
「今晩は、長太郎。遅い時間にゴメンネ」
「今晩は、さん。起きてたから大丈夫ですよ」
「長太郎……お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます。さんに祝って貰えて嬉しいです。でも、明日…あっ、もう今日ですね、逢う約束をしてるんだから、その時でよかったのに…」
「だめ。長太郎の誕生日は私が一番に『おめでとう』を言いたいんだから。それに…」
語尾を濁すなんて珍しいな。と、それに暗く沈んだ声になったのがひどく気になって彼女の次の言葉を待って暫く沈黙が続いた。
言いにくいことなんだろうな…
先に口を開いたのは俺だった。
「『それに…』どうしたんですか ?
さん」
「うん…明日の約束守れそうにないの。明日から一泊の出張になっちゃって…ごめんなさい。長太郎の誕生日なのに……。長太郎のためにビーフシチューも煮込んでいたのに…」
「……そうなんですか。仕事なら仕方がないですよ。気にしないでください。でも、さんのビーフシチューが食べられないのはとっても残念だな…」
少しおどけて返事を返したのは、彼女より落胆している自分の気持ちを悟られないため。
本当は彼女に逢いたくて、腕の中に彼女の温もりを…柔らかさを…心地よい重みを感じたかった。
「そんな風に言ってくれてありがとう。誕生日のプレゼントとチョコ、送っといたから」
「ああ、そうだった。チョコもプレゼントもありがとうございます。このシルバーのクロス、さんの手作りですか」
「えっ。どう…して
? 明日着くように指定してあるのに…もしかして……私、忘れてた……」
「そうみたいですね」
「もう。長太郎のいじわる」
くすくす笑う俺に、拗ねている彼女の可愛い顔が目にうかぶ。
違う生活圏にいる彼女に逢える時間は限られていて、不安材料は山のようにあるけど…
「ねぇ。さん。明日待ち合わせしまょう」
「……長太郎。明日は出張…」
「だから、携帯で待ち合わせしましょう。明日の十一時に…俺が掛けますからね」
「……長太郎…」
「いいですか。さん、遅れないで下さいよ」
「う、うん……十一時ね、わかったわ。長太郎こそ遅れちゃだめだよ」
携帯の向こうの涙まじりの声が明るく返ってきた。
ねぇ、さん。
声だけで貴女の気持ちが分ってしまうほど、俺はさんに夢中なんです。
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蒼依さま。サイト二周年おめでとうございます ! !
新藤の現実逃避のお手伝いをして頂いている「Nostalgic
Sepia」さまが二周年を迎える事になり、少しでもお返しが出来ればとちょうた夢を書かせてもらいました。が……お返しするどころか、ご迷惑になってないか心配です。
長太郎ってこんな喋り方だったけ…不安。
これからも素敵な夢をお待ちしていますね。
UPが遅くなってしまってごめんなさーい雪しゃーん!!
相互リンクサイト『heart to heart』の新藤雪様より、こんな素敵なサイト二周年のお祝いをいただいておりまして、やっとUP致しました。素敵チョタ……うあーときめく!!否応もなくときめくね!!!
つーか肝心の記念夢がまだというこの体たらく(はよ書けや)にもかかわらず、いつも優しいお言葉をかけて下さる雪しゃん、大好きです……!誕生日のお祝いメールも、ホントにホントにありがとうございました!
06/03/25UP