窓際に置かれたセミダブル。
カーテンの向こう側は薄っすらと明るくなり、朝の訪れを知らせる小鳥達の鳴き声。
ベッドの下には脱ぎ散らかした服。
隣りには目を覚ます気配のないの穏やかな寝顔。
甘い言葉はベッドの中で
「昨日無理させすぎたかな」
小声で呟いたつもりなのに、の睫毛に彩られた瞼はぴくりと動いてゆっくりとあけられた。
「んっ … おはよ、こじろー」
「おはよ、。起こしちゃったね」
「うんん」
かぶりを小さく振って微笑むと、温もりを求めて子猫のように擦り寄って。
を抱きしめて柔らかな髪にキスを落とす。
そして抱きしめている腕に力を込めて彼女の香を楽しんだ。
「。今日一日ベットの上で過ごさないか」
「だめよ、こじろー。あなたも私も仕事があるでしょ」
「残念でした。俺は今日休みだよ。だから…」
「あなたは休みでも私は仕事よ」
「は、昨日雨に濡れたせいで風邪を引いて休むのんじゃないの?」
「ちょっと、こじろー」
「昨日、あんな格好で俺のアパートに来るのが悪いんだよ」
「だって、こじろーのアパート近かったんだもの。雨宿りするだけだったのに
…」
「あのまま、俺が帰すわけないだろ。さあ、『休みます』って電話するかい」
「休みません」
ふいっと素っ気無く首を横に振った。
そう。それなら … と、優しく抱いていた腕に力を込めての一番弱いわき腹をくすぐる。
身を捩って笑い転げて逃げようとするけど俺の腕からは逃げられないからね。
ペットの上で一頻り騒いで。
『わかったわ。電話するからやめて』と息絶え絶えに言わせると、くすぐる手をとめて顔にかかった髪を掬い上げて撫で梳いた。
「。疲れたときは休んでいいんだよ。嫌なことがあったら俺を頼ってよ」
驚いた顔で見あげているの頬にわざと音をたててキスをした。
昨日びしょ濡れになったが涙を流していたことを、俺が気づかないとでも思った
?
何があったかは知らないけど、頑張り屋の君が泣くことは滅多にないから、よほどのことがあったんだろうね。
だけど。
「俺の前では涙は隠さないでいいよ」
「こじろー」
「俺はの笑顔を守る責任があるんだ」
「責任 … ?」
「そう。そしては俺を幸せにする義務があるんだよ」
まじめな顔で言い放ってをシーツの海に沈めたが、明るくなりかけた部屋のせいで彼女は俺の身体を押し返してきた。
その手を捕らえてベッドにゆだねる。
見下ろしたの額に 瞼に 頬に 唇にくちづけを届けた。
「こじろー、私はあなたを幸せにできるかしら」
「大丈夫。が笑って俺の傍にいてくれれば、俺は幸せなんだから」
と、ニッコリ笑えば華奢な腕が首に巻きついて俺の身体を引き寄せると「大好きよ」と掠れた声でが啼いた。
その一言が心の中に広がって、抱きしめずにいられない。
どうしよう …
今以上君を好きになるなんてできないのに。
06/08/02
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素敵な甘さにメロメロです……!私には絶対に書けないスウィートなお話ですよ。
3作書いてらして、どれをいただこうか迷いまくった挙句、初心忘れるべからずっつーことで
サエをいただいてきました(笑)。他2作(バネちゃんと宍戸)もすっごい素敵でしたよ!
雪さん、これからもどうぞ宜しくお願い致しますね!