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「よく、食うなあ〜」
心底呆れた顔は 言葉以上に ”降参”に 近い意味をみなす






「どうやったら 元気でるんだ?」 って 聞かれたから
「おなか一杯 ドーナツ食べたい」 って 答えた昼休み


それは やけくそで 有得ないだろうことを わざと 言っただけなのに
亮は 練習時間を30分 早く切り上げて 私が活動する部活まで ご丁寧に 迎えに来た


「どうしたの?」って 尋ねたら
「つべこべいうな」って 叱られて


引っ張られるまま つれてこられたのは 亮がいつも 死に物狂いで 戦っているテニスコート
時折 野次馬根性で 見学することはあれど その 中に入ることは 部員意外 許されることではない


特に この 男子のテニスコートで最も西に存在する 宍戸と鳳君の 特訓エリアには―――。




…… あれ?

秋の夕暮れ 私達のほかに 誰も居ないテニスコートは ネットが緩められていて
閑散とした その場所の一角に 私は 目を奪われた
錆びたベンチの上に 山積みされたように 置かれている 箱には カラフルなドーナツのイラスト
それは 私が落ち込むと 駆け込むショップの 見慣れたパッケージで
むせるほど エンゼルクリームを 買い込んでは 一人英気を養うのが パターン

でも 誰も知らない……はず。


「まあ、そういうことだ」
「どういう、こと?」
「お前が 食いてぇって言ったんだろうが」


いや、だから ソレはそうなんだけど――。
「亮が そこまで してくれる 理由っていうか 意味って言うか…… ね! これって 亮が 買いに行ったんだよね?」
まさか 鳳君を 使いっぱに してないよね? と 無きにしも非ずな 光景が 瞬時に 頭の中に浮かんで
慌てて 尋ね直すと

「は?!」

お前 いい加減に しろよなーーー! と
夕刻を告げる 烏も吃驚するような 大きな声が 広いテニスコートに 響き渡った







「それにしても、よく食うなあ〜」
「平らげろ!って 言ったは 自分でしょ?」
「お前さ……」
「なに?」

「太んぞ!?」


なによ 勝手に買ってきて 勝手に怒鳴って 勝手に食べろって
もう 亮の言う事する事 断片的過ぎて よく わからない
どうせ 言葉を返しても その倍のカウンターで 威嚇するんだろうから
美味しいことには 変らない エンゼルクリームを 私は 堪能することにした


隣で 「それにしても 上手そうに食うな」 とか 「女ってそういうもんなのか」 とか
ぶつぶつ 独り言の解説が 聞こえても来るけど お構いなしに 口にほお張れば
もしも 私が 横綱みたいに 太りまくっても 亮なら 指差して 笑って すっげえな!って 言うんだろう
そんな どうでもいいような 予想が やけに おかしいと思う 感情をつれてくる

何で落ち込んだ とか 誰に傷ついた とか 学校やめちゃおう、とか
そんな 陰な感情が 他人事のように 遠くなっていく




「ごちそうさま」
「ん。 その様子じゃ 元気でたっぽいな」
「おかげさまで! 糖分摂取の効果で 今なら ランニングでも 出来そうな気分」
のは 気分、だけ、だろうが」
「アハハ……確かに。」


そんなに 可笑しなことを いわれたわけではないのに
ドーナツには 気が長くなる作用が含まれているのか
亮の言葉 一つ一つに 過剰なまでに 笑う 私が居て
そんな 私を 怪訝そうに眺めていた 亮は だけど なんとなくの雰囲気で 理解したのか
「んじゃ、 帰んぞ」
お前が豪快に食べるのみてたら 俺も腹が減った、と 投げやりに 呟いて 歩きだした




「…そういえば、さ」
「んだよ?」
「聞きそびれたけど。 どうして 私が 滅入ってるって 分かったの?」


昼休み 学食ですれ違いざま
「どうやったら 元気でるんだ?」 って 声をかけてきた 宍戸は まるで
正しい犬のしつけ方でも 思案するような 顔つきで
あまりに 普通に 質問されたから 私は ありのままを 口にしたのだけど

血反吐をはくんじゃないかと 自ら危機感を覚えるほど 
参っていた状況を 誰にも 気づかせないように 心がけていたというのに
悪友とは言えど さほど 深い間柄ではない 同級生に あっさり 見抜かれていたことに 私は
この期に及んで 愕然とした


「は?!」


立ち止まった 亮は 今日一番の 怖い顔になり
、お前なぁーー!!」
山に帰った烏が 驚いて 戻ってくるんじゃないかって 思うテンションで 声を上げた


「だから 太んだよ」
「な、なによ、それ!」
「事実だろうが!」
「ちょっと、ひ、酷い! 感動したのに。 誰も気づかなかったのに って」


「だから、惚れてるからだろ!」


競歩になりそうなくらい ギュンとスピードを上げた 亮の背中が どんどん遠くなる
「ま、待って!」 いい逃げばかりの 亮に 駆け寄れば また その足を速められる


「ランニング できるくらい なんだろ?」
「え?」
「帰んぞ!」


瞬間 乱暴に掴まれた 左手に ぎゅっと 力が入る
ラケットじゃないんだから!と クレームを 言いかけた私は その言葉も 結局 塞がれることになる
ジェットコースターみたいな 亮の振る舞いに 目を白黒させながら
それでも 負けるもんか!と 俄然 乗り気な 自分に 心地よさをも 感じた


「ねえ、ちゃんと、キスしてよ!亮君」
「君!ってなー」
「今の私、甘いよ。 ドーナツ風味?
「ったく、ってやつはなー」





翌日 「エンゼルクリームって 美味しいですね。 俺も彼女と食べたんですよ」
テニスコートに亮を迎えに行ったら そう 鳳君に にっこり微笑まれて
私は やっぱり  ―― と 晴れて 彼氏となった 亮をにらみつけた

「使いっぱに してたんじゃない!?」

そして 条件反射で 逃げようとする 亮を 掴もうと バランスを崩した身体は 
待ち構えていた 確信犯に あっさりと 丸く ドーナツのように 抱きしめられた








end by まるな

佐伯君、鳳君と さんの二大王子ネタが尽きてしまい(陳謝) 
次点?かと思い、宍戸君にご登場願いました。
この二人、傍から見れば かなりのラブラブです(笑)
ここまで お読みくださいまして、ありがとうございましたv



企画参加させていただきました「六角ドーナツ」にて、主催のまるなさんからお返しにいただきましたv
ギャー宍戸!萌えな宍戸がここに!!まるなさんの宍戸大っっっ好き!なのでモウマンタイですyo!!
毎度ながらの拙作の上、ありえないくらいに提出が遅かったと言うのに、こんな素敵なSSで報いて下さったまるなさんに感謝感謝、大感謝です。本当にありがとうございました〜!
因みにエンゼルクリーム大好きなのは私です、ハイ。(笑)

06/10/18UP