2. 後楽園ホールは
一年間にプロボクシングの興行は全国で250余りあるのでしょうか?その興行数は年々増加の一途をたどっているようです。これは、テレビなどでのゴールデンタイムの放映などは少なくなっていることを考えると、残念ながら国民的にお茶の間での人気が上向いているとは考えにくいですね。興行数が増えているのは、やはりボクサー人口が増えていることに起因しているのでしょう。ともかく、純粋なスポーツとして競技人口が増えることはいいことでありましょう。
年間の250あまり行われる興行のうち、東京では130くらいが後楽園ホールで行われます。世界タイトルマッチは近郊の大きな施設を使って行われますが、後楽園ホールを見慣れている人間にとっては、大きい会場は、なんだか間が抜けてしまうようで、リングと客席が離れてしまい、緊迫感も少々違ってきます。そんな訳で、やはりホームグラウンドである後楽園ホールは程よいタイトな感じがあり、なかなか居心地がいいものであります。
右の写真の正面が東京ドームで、左のビルが後楽園ホールがある「青いビル」です。
後楽園ホールのまわりは
そんな後楽園ホールは、東京ドームの隣(外堀通り側)に建っている青いビルの4階にあります。隣のビルは黄色のビルで、スケート場や、ゲームセンター、下には場外馬券売り場などあり、隣接する後楽園遊園地などを含めると、さながら東京の娯楽スポットとなっております。このようなスペースは東京ドーム関係者の目指すところであったようです。それこそ大昔は、ここに競輪場の建設の案もあったようですが、当時の都知事の反対もあり、実現できなかったようです。いまでは2000年に開業した東京ドームホテルが聳え立って、この娯楽地域へ花を添えています。モダンな建築で、なかなかいいホテルだと思います。何しろここに泊まれば、ドームの野球観戦から競馬まで多くの娯楽が楽しむことができるわけですね。しかし、このホテル・・細長いホテルなのですが、よく見ると、面している外堀通りに対して斜めに立っていますし、ちょっと変です。これは隣にあります国の文化財の「後楽園」からのお願いで、「後楽園」の庭園から見て一番邪魔にならない建て方をしてほしいとのことだったようです。これに従い、ホテルは「後楽園」から見て一番小さく見える角度に細長く建てられたようです。やはり、どの世界でも周りとの協調というのは大切なのを改めて知りました。
今度は隣の東京ドームの話です。本当に目と鼻の先が東京ドームなので、いろいろなことがあります。まず、ボクシングの試合は6時前後に始まりますので、ナイターの巨人戦や日本ハム戦などがあるときには、ものすごい人出なので、周囲の駅から後楽園ホールへ行くだけで、メガフォン持っている人波にもまれて疲れちゃいます。後楽園ホールに入ってしまえば別の世界のはずですが、あいにく医務室は半分ビルの外という感じで東京ドームにくっついています。ですから東京ドームの音の影響はかなり受けるのですが、じつは巨人戦の時にはぜんぜんうるさくないのです。扉を閉めきって行っているからです。しかし、これが2002年のシーズンまで本拠地だった日本ハムの時には、扉を閉めないので試合が進行しますので、なにかあると(ホームラン?)すごい歓声が聞こえてきます。中継してないので、何が起きたのかわらないのですが。
また、野球ではなくてコンサートの時には音は営業上でしょうが外には漏れてきませんので、うるさくもありませんし、その代わり誰がコンサートをしているのかもわかりません。でも、終了したときにお客さんがみんな興奮気味に出てきますので、先日のブリットニー・スピアーズのときなどもそうでしたが、こちらから帰りがけのお客さんに「コンサートどうだった??」と叫んで聞くと、いろいろ生の声で教えてくれます。これで僕みたいなおじさんも、世の中の流行を生で感じることができ、圧倒的おいてきぼりは食わないで済んでいる次第です。
後楽園ホールは
話を本題に戻しますが、後楽園ホールは先に述べた、青いビルの5階にあるわけです。一階からのエレベーターは3つしかありません。ご多分に漏れず、いい試合があるときには、東京ドームだけでなく、青いビルの入り口にもダフ屋がいらっしゃいます。これは先ごろも新聞なので大きく取り上げられましたが、その存在の是非が僕にはよくわかりませんが、言えることがひとつあります。ダフ屋がでるもようしものは人気があるということでしょう。
そのビルのエレベーターに乗って5階へ行くと、ボクシングの殿堂後楽園ホールの入り口です。入り口を入りまっすぐ行くと、リングが中央にあるわけですが、その北側(自分側)におよそ20列余りの階段状の観客席があり、向こう正面の南側も移動式の木でできた階段状の席が10列余りあります。東西にも移動式のものが10列余りあります。そしてリングの端から1-2mあまりのところから、折りたたみ式の椅子の席が各辺に数列設置されています。いわゆるリングサイドの席ということです。6階には立見席というのもあります。これを「席」と呼ぶのかどうかは良くわかりませんが。ここから垂れ幕などが掲げられるわけです。ですので、後楽園ホールというのは2000名あまりしか収容できませんが、本当にリングの観客席が一体化しているような環境であります。
ほとんどの試合は5時30分会場で6時開始です。選手たちは最低試合開始の2時間くらい前からは、最低会場に詰めています。選手の控え室は5階の会場の片隅にある階段を降りた4階にあります。その部屋は大部屋と個室に近いもの、つまり二通りあります。赤コーナー側への階段の近くに二つ、青コーナー側へも二つ部屋があり、それぞれの部屋の前に、選手の名前が書いてあります。ここで彼らは荷物を出し準備をして、柔軟体操などを行って試合を待つわけです。時として医務室のほうの非常階段口へでて、トレーナーさんとシャドウボクシングを行ったりもするわけです。
4階には選手の控え室のほかには、JBC関係者の使用する部屋、トイレ、シャワー室、飲料水の自動販売機などがあるだけです。そもそも、それほど床面積が大きくないビルですが、実は青いビルの4階の多くは、株式会社「東京ドーム」の事務の方たちのスペースなのです。ですから、4階は会社の事務の方たちとの共有の場でもあります。
医務室は、そのスペースから非常扉を隔てて出たところにあります。そこは、もうほとんど東京ドームの屋根の下という感じです。医務室といっても、本来は後楽園ホールにいらした種々の観客の一時的な応急処置や相談所であり、看護婦さんが常駐するところです。スペース的には10畳くらいでしょうか?診察用のベッドと机、薬品棚、ロッカーその他椅子が数個という程度です。勿論机の上にはテレビがあり、後楽園ホールで行われている試合の状況を映し出しており、医務室にいてもリング上の事件は把握できるようになっています。そういうところで僕たち医者は看護婦さんと試合が終わった後の選手の健康チェックなどを行っているわけです。
当日の予定の全試合が終了すると、「今日も事故もなくよかったね」という感じでほっとするわけです。勿論、食事もしないでいるわけですし、のどもカラカラですので、近くて一杯やりながら食事がいいなーなどと思うわけです。すると、JBCのほかのスタッフもほとんど医務室の隣の非常階段から帰りますので、スタッフの方が、医務室に顔を出して、「一杯やりますか?」と声をかけてくれることもあります。うれしい限りであります。
しかし、ここで時として問題が出ます。ちょうど隣のドームの試合が終了したときと、バッティングしちゃうときがあります。そのような時は、ちょっと水道橋駅へ行くのも大変なのです。当然、お店も混んでしまうのでしょうが、これが実は不思議なのです。水道橋駅界隈の居酒屋は本当にたくさんあるからなのでしょうが、ボクシング関係者の人がいく居酒屋は本当に限定されているのですが(ときとして、試合を終えた選手もいるわけです)、野球の試合の終わりとお店の混み具合が一致しないのです。つまり、ボクシング関係者と野球ファンとの間に、居酒屋の嗜好に一致を見ないということですね。ボクシング関係者が変であるとは思わないのですが、なにぶんにも多勢に無勢でありますが。(4万人対2千人)