第03回 (1996年07月)
悲しいときもあるから、
楽しいときのすばらしさを知る。
腹が立つときもあるから、
心優しくなれる気持ちに気づく。
ケンカするときがあるから、
仲良くなれる時間が訪れる。
つらいことが自分の中から通り抜けてゆくから、
幸福なことを多く見つけだすことができる。
つまづくときもあるから、
ゆっくり歩いて、新しく生まれ出すものもある。
苦しい時間が過ぎてゆくから、
嬉しいことの始まりに心が弾む。
寂しい時を過ごすから、人の暖かさを感じる。
命の重さを感じ、もう二度と観たくなくなるような、
しかし、もう一度観たくなるような素晴らしい映画を。
「アンダーグラウンド」(1995) |
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観ているうちに、いつの間にか、言い様のない圧迫感が押し寄せていました。憎みたくはないけれど、許容しがたい裏切りの数々は、過去の時代の戦争を、現実の戦争の中に引きずり込んでいきます。 観終わった後、「感動」という言葉とはまるで無縁な、悲しみの絶望の壁に触れたような、冷たい涙がこみ上げてしまいました。良い意味でも、悪い意味でも、どちらにしろ、もう2度と観たくないといった気持ちに襲われていました。 現実は、過酷なまでに身近にあるものなのかもしれません。旧ユーゴスラビアの世界を、人が生きていくことのつらさや悲しみの中から、描いています。 ☆☆☆☆ |
「汚れた血」(1986) |
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世紀末のパリを舞台に、アレックスは駆け抜けていきます。マルクの計画にアレックスは加わり、その場に居合わせるアンナと共に、話は繰り広げられます。 漂う虚無感、張りつめた冷たい空気。心と、生命と、身体が、バラバラでいそうな虚しさと、それらをつなぎ止めようとする自分のリズム。 アレックスのガールフレンド、リーズがバイクに乗り、彼を追いかける姿が胸に焼きつきます。駆け抜けて、駆け抜けて、駆け抜けてゆく時間に、心がひかれます。 ☆☆☆☆ |