第16回(1998年09月)

15年前に読んだマンガを読んでいる。
なんだか、すっかりストーリーを忘れていて、
またわくわくしながら、うんうんと考えながら、読み直している。
少し色あせた本を手に取りながら、
あの時と同じように、
ごろごろしながら。
    
僕はすこしも変わっていないつもりなのに、
それは大きな勘違いで、どんどん変化し、
僕はいつのまにか、
僕になっている。
   
僕はほんの少ししか変わっていないつもりなのに、
思い過ごしで、どんどん月日は過ぎ、
僕はいつのまにか、
僕になっている。
  
僕はかなり変わったつもりなのに、
自分だけが感じていることだけのようで、時間が経ても、
僕はいつのまにか、
僕になっている。
  
15年前に弾いた音楽をプレイしている。
なんだか、すっかりメロディの細部を忘れていて、
記憶のヒモをたどりながら、
ばたばたしながら、
気まぐれに、気まぐれに。
少し色あせた思い出を心に転がしながら、
あの時と同じではない何かに、誘われながら。
  
あの時は、あの時だった。
この時は、この時だった。
そうして、僕は、僕だった。
 
あの時の気持ちと忘れられない気持ちがあふれる
ノスタルジックな映画を。

 

ニューシネマパラダイス(1989)

監督/ジュゼッペ・トルナトーレ

キャスト/フィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、アニェーゼ・ナーノ

「幾度と流される涙に、見失いかけた自分を再び、見つけることができる物語」と形容したくなるような作品です。一コマ一コマに、映画に対する愛情があふれ、時代と、人々の表情が、
郷愁を誘います。

主人公サルバトーレとアルフレードの年齢を超えた友情を核に話が展開されます。子供時代、青年時代、現在へと続く過程の中で、彼らは確かな時間を分かち合います。「決して戻ってくるんじゃない」と言い放つアルフレードの言葉が胸に響きます。そこには、故郷を去る人々への暖かいまなざしと、厳しい現実を迎える決意を与えてくれます。

全編を包む音楽と、シチリア島の青空と、パラダイス座に集まる人々。ノスタルジックな中に、一人の映画技師の映画への熱い思いが胸を打ちます。僕が過去最高に、涙を流した作品でもあります。

☆☆☆☆

 

マイライフ・アズ・ア・ドッグ(1985)

監督/ラッセ・ハルストレム

キャスト/アントン・グランセリウス、マンフレド・セルネル、アンキ・リデン 

小さな町に住む、一人の少年の姿を通して、綴られる物語です。主人公イングマルは、おじさんの家に行き、サガという男の子のような女の子と出逢います。

今思えば、ごく単純なことのように感じるのに、少年の頃は、どうしてあんなにもたくさんのことを感じていられたのでしょう。道路の敷石を見つめながら、自分なりの道を作って帰ったことや、自分の目線でしか追えないものを、たどった日々は、もう過去でしかありません。
縁石の上を必ず歩いた日々は、それでも、自分にとって、大切な出来事だったのです。

他人から見ればとりとめのない出来事でも、なぜか心に残ったことなどが思い出されます。人工衛星に乗ったライカ犬を自分の人生と照らし合わせながら。一人の少年が、自分の生を見つめ、大人へと少しずつ成長していきます。

☆☆☆

 

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