第34回 (2001年09月)

僕は一人でいても、いつも誰かとつながっている実感を持つことができた。
ほんのわずかなひとときでも。
もちろん、多くの人たちと居ても、彼らの空気を共に感じることができた。
後ろを振り返ったその瞬間にも。
笑顔と、一つの自信と、多くの出逢いと、小さな幸福感だった。

たった少しの、流れる川の上をそよぐ風の時間ですら僕を幸せにしてくれる。
わずかな水面の揺れや、流れる雲の影ですら僕を満ち足りた時間へといざなってくれる。
小さな魚影の動きですら、僕の好奇心を十分に納得させてくれる。
小さな鳥が川面を横切っていくひとときでも。
つぶやくような声と、偶然の遭遇と、小さな友情だった。

感じていたい。
時間を。リアルな時間を。
共にしていたい。
空気を。澄み渡る空気を。

自らの感性を揺らすような映画を。

暗殺の森(1970)

監督/ベルナルド・ベルトリッチ

キャスト/ジャン・ルイ・トランティニャン、ステファニア・サンドレッリ、ドミニク・サンダ

体制の中に、安易に身を委ねることへの危機感から、この映画は作られたのでしょうか。ファシストに身を置いた主人公が、自分の人生を迷路のようにさまよいます。体制に流されるだけでは、自分の出口を見いだせない。

原題は「体制順応主義者」。自分の意志と体制への距離の置き方に疑問を投げかけます。しかしベルトリッチの代表傑作と言われるように、彼の映像感性が、こぼれるように伝わってくる作品です。どのシーンも、緩やかに、一貫した映像美のリズムが漂い、華麗な響きがあります。

戦いの時代に巻き込まれても、安穏な時代に暮らしていても、自分の意志で、体制の流れに対して鋭い感性を持っていたいと感じます。

☆☆☆☆

 

ベティブルー(1986)

監督/ジャン・ジャック・ベネックス

キャスト/ベアトリス・ダル、ジャン・ユーグ・アングラード、コンスエロ・デ・アビラン

1980年代を決定づけた、ネオヌーベルバーグの最高傑作です。全編を青の色調で駆け抜ける、ジャン・ジャック・ベネックスの研ぎ澄まされた感性が伝わります。彼の冷静でいて情熱的なエネルギーが溢れ出ています。

ベティの生き方は、彼女を愛し、ずっと見守り続けるゾルグであっても、誰にも止めることができません。ガブリエル・ヤードの音楽に乗って、ベティの折れてしまいそうな激しい人生の時間が描かれます。

心に鳴り響く素晴らしい作品に出逢うと、幸せのあまり、言葉にならないときがあります。そして、満を持してもう一度観たいと思います。ベティブルーは、僕にとってまさにその作品の一つです。

☆☆☆☆☆

 

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