第35回 (2001年11月)

世の中で、一番すごいモノは何だろう?
そんなへんてこな質問に、僕はずっと考え込んでしまった。

世の中で一番すごいモノ。
二酸化炭素を酸素に変えてしまう緑の木々は、すばらしい。
しかし、緑の木々は、太陽なくして、生き延びえない。
太陽は、雲に隠されてしまい、雲は風で、風は壁に...。
え、それって一番すごいのはネズミ??

全てのモノに宿る生命は、かけがえのないもので、尊い。
ときに命は奪い合われ、ときに命は火を消し、
ときに命は芽生え、僕たちは悲しみと喜びの間を行き来する。

僕たちは、いつもたくさんのコトに考えを巡らせる。
気持ちが沈み込んだり、
命の偉大さに心が嘆いたり、
気持ちがアンニュイになったり、
けれど時間と共に気持ちが和らいだり、痛みが薄らいでゆく。
もちかして、一番すごいのは、時間?
悲しみの穴を埋めることができるのは、
自分と他人とそして、ただひたすら過ぎて行く時間。
けれど一番怖いのも時間。

振り返る時間、年月を経て過去と向き合うような映画を。

 

オール・アバウト・マイ・マザー(1999)

監督/ペドロ・アルモドバル

キャスト/セシリア・ロス、マリサ・パレデス、ペネロペ・クルス

自分の人生の中で、実は知っているようで知らないものは、自分自身と自分の親のことかもしれません。自分の親と向き合うとき、相手を理解したいと思う気持ちが生まれるとき、僕たちは人を愛おしむ気持ちを育て、自分をよりよく生きようと思うものだと思います。

作家を志すエステバンは、母マヌエラと、自分の人生の半分である父について知りたいと願います。マヌエラは、マヌエラ自身がが歩んできた過去と向き合うために、もう一人のエステバンとそしてもう一人のエステバンに出逢う人生の旅が始まるのでした。

母を演じるセシリア・ロスの好演しています。周囲の人間からも、自分の人生を生きようとする人間像が浮かび上がり、今の自分を生きることの大切さを伝えます。

☆☆☆☆

 

ブエナ ビスタ ソシアル クラブ(1999)

監督/ヴィム・ベンダース

キャスト/ライ・クーダー、イブライム・フェレール、ルベーン・ゴンザレス

自分の過去と向き合うとき、その時間は単なるノスタルジーではなく、今からの自分をより大切に思うひとときだと感じます。音楽と共に歩んできた豊かな時間は、語るまでもなく、音楽に刻み込まれています。

ライ・クーダーとキューバの巨人たちが作り上げたこの映画は、音楽を愛した人々の人生が描かれています。音楽が練り上げられていく昇華していく時間を、ミュージシャンたちが、こよなく愛している瞬間の輝きが、飾らずに、しっかりと伝わります。

音楽を愛する気持ちと、その瞬間を共有しうる仲間との間には、国や文化を越え、響き合うものがあります。音楽を慈しみ、触れ合う時間を大事にしていたいと感じずにはいられません。

☆☆☆

 

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