第36回 (2002年01月)
深い緑から赤みを帯びてゆく葉を携える樹々の
すき間から、こぼれそうな光を手ですくい集める。
この光は、僕たちのモノ。
ほんのひとときの、至福のもらいもの。
透き通るような冷たい風が頬に吹きつけていたのに、
ふと、凪いで訪れる日差しの暖かさが、
肌に告げられる。
このぬくもりは、僕たちのモノ。
寒さからの一時的な脱却、満たされるもの。
野を駆け回って、追いかけても、手に入らない、
芝生に寝転がっても、期待できない、
一瞬の巡り合わせ。
それでも、追いかけずにはいられない、永遠のモノ。
永遠のモノは、いつも隣に、
けれど、永遠にすれ違うだけ。
永遠を追いかけ続ける、そんな破天荒な映画を。
気狂いピエロ(1965) |
年月を経ても、この映画の持つ要素や展開は、迷路的で、破滅的ですらあり、新鮮さを失わずに独特の光を放っています。ゴダールによって提示される色彩も、ジャン・ポール・ベルモンドに代表される刹那的ですらある登場人物も輝きを放っています。多くのファクターを取り入れ、そのファクターは奔放に放り出され、引用される言葉も、絞りきれない数々の主題を提示しているように思えます。 主人公フェルディナンと、彼にまつわる人々の殺伐としたやるせない日常が描かれています。衝動的で衝撃的な彼の日常が描かれた60年代という時代が、今も映画の中で生き続けています。年月を経ても、永遠に追いかけ続ける主題が光り輝いています。 ☆☆☆☆ |
ワイルド・アット・ハート(1990)
監督/デビッド・リンチ キャスト/ニコラス・ケイジ、ローラ・ダーン、ウィレム・デフォー |
主人公セイラーと恋人ルーラ、逃げる彼らを追いかけるルーラの母親と殺し屋、ばかばかしくも疾走感あふれる映画です。アクの強い出演者を手玉に取るように配置し、見終わった後、ハテ?と感じさせる、人を食ったような演出が見事です。 永遠の愛を求めることは、今を刹那的に生きることかもしれません。狂気的な一人の若者が追い求めるものは、一体何なのでしょう。執拗に追いかける母親が求めるものは、一体何なのでしょう。 自分のテリトリーと信ずるもののために生きていく様は、他者から見れば滑稽かもしれません。しかし、永遠を信じて生きることは、自分との永遠の闘いであり、自分を信じる唯一の術だと感じられるかもしれません。 ☆☆☆ |