第40回 (2002年09月)

いつもと変わらない日常の中に、
それでも僕たちは、何かを求めてしまう。
何が幸せなのか、それが見つけられないまま、
ただ時が過ぎてゆくのが怖くて。
何が不幸の始まりなのかってことは、
いとも簡単に見つけることができるのに、
何が幸せの始まりなのか、その糸口が見えてこない。

いつも新しいものを求めて、
いつも心躍るようなできごとを求めて、
永遠なものを見つけることができたならば、
それがホントウの幸せなのかもしれない。
けれど、永遠なんてありえない。
たとえ永遠の半分が、より永遠に近いものであったとしても、
無限の半分が、より無限に近いものであったとしても、
僕たちが生きるコトに、永遠も無限も、その半分すら存在しないんだ。

自分を探すことに近づくことができれば、
自分の幸せが何なのか、何が幸せなのか、
見つけられるかもしれないのだけれど...。

日常の幸せを求めて、気持ちを揺らす素敵な映画を。

息子の部屋(2001)

監督/ナンニ・モレッティ

キャスト/ナンニ・モレッティ、ラウラ・モランテ、ジュゼッペ・サンフェリーチェ

もっと、あんなふうにしておけばよかった..、自分を責めることは、だれにでもよくあることです。しかし、起こってしまったことが、重大であればあるほど、自分への悔恨が強くなるものでしょう。人は、愛すべき人の死に直面したとき、自分をどれだけ支えていることができるでしょう。生きている愛すべき人をどれだけ見つめていることができるでしょうか。

精神分析医ジョバンニは、ある日突然に息子を失います。他者と関わる仕事が、つらい日々が続きます。家族を支えることも、家族を見つめることも重くなってしまいます。悲しみを乗り越える苦しい時間の中で、死んでしまった家族が、それでもすばらしく生きていたことに、感動し、涙します。普遍的なテーマから、現代の私たちが生きることの重みを描いています。

☆☆☆ 

 

ひかりのまち(1999)

監督/マイケル・ウィンター・ボトム

キャスト/ジナ・マッキー、モリー・パーカー、シャーリー・ヘンダーソン

家族がいつのまにかバラバラになってしまい、彼らをつなぐものが、いつしかなくなりかけている現代の家族は、ベクトルの軸を失ってしまっているのかもしれません。

いつもと変わらない生活と、いつもと違って生きていたい生活が交錯します。自分の希望を満たすことと、どこかズレが生じていく自分の生き方に、空しさが漂い、生きていく自信すら失いかけてしまいます。しかし、自分を持ちうるファクターは、愛の絆なのです。

カフェで働きながら、ナデイアは伝言ダイヤルで知り合った男たちと会う日々を重ねます。家族が信じられなくなり放浪する弟、子供を育てながら愛をさまよう姉、出産を控え、夫と生きてゆく自信を失う妹。いつもと変わらない日常で私たちが探し求めゆくものは何なのでしょう。

☆☆☆ 

 

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