第41回  (2002年11月)

木々のみどりは、花を咲かせ、種子を残し、
枯れ、再生し、繰り返し命を育む。
自然は、悠久で、深大で、
ゆったりと私たちを包み込む。
しかし、ヒトは、意図的に自然を支配しようとし、
他者までも自分に取り込もうとする。

人間の心のはかなさは、古来から語り継がれてきた。
変わらぬ自然の姿の中に、行きゆくヒトは、
時間に流され、心を追いかけ、果ててゆく。

あの日、いつもと違うコトが起きなければ。
あの日、一言、自分の思いを正直に伝えられていたら。

日常の時間は、あえなく過ぎてゆき、
無言のまま終止符を打とうとした自分がいた。
無常の、さまよう思いは、
明日へ自分の心を解き放ってくれるのだろうか...。

行き場のない思いが交錯する、心に残る映画を。

 

死刑台のエレベーター(1957)

監督/ルイ・マル

キャスト/モーリス・ロネ、ジャンヌ・モロー、リノ・バンチュラ

ヌーベルバーグの時代到来を世界に伝えた、ルイ・マル監督の初長編作品です。推理小説を映画に作り上げ、登場人物の漂う気持ちを浮かび上がらせます。フィルムノアールな雰囲気と、不安感を募らせるジャジーな音楽が、社会の虚しさを膨らませ、生活する人々のうつろな表情を映し出します。モノクロの映像が、迫り来る時間を感じさせます。

青年医師ジュリアンは、ある社長を殺す完全犯罪を企てます。登場人物全ての動きや心理描写が、スリリングさを増して描き出されます。

私たちの社会は、自分でもままならない心と犯罪の交錯する場所です。私たちは、さまよう心の先に、何を見つけることができるのでしょうか。

☆☆☆☆

 

フールフォアラブ(1985)

監督/ロバート・アルトマン

キャスト/ジナ・マッキー、モリー・パーカー、シャーリー・ヘンダーソン

脚本サム・シェパードと監督アルトマン。フツウでないような?くせ者の二人が描く愛の形は、観る人々に、心の反動と揺さぶりを投げかけるでしょう。

州のはずれにある一つのモーテルで、求め合う男と女。二人は、兄と妹であり、お互いを傷つけあいながらも、お互いの存在を必要としていまるのでした。

私たちが求める愛とは何でしょう。社会と常識に囲まれた一般の概念の観点から、理解できなもいものは、たしかに存在します。ときに私たちは、自分のカテゴリーからはみ出すモノを排除しようとするかもしれません。存在を認知しがたい思いにかられるかもしれません。しかし、暗がりで見えなくても、道はそこに存在しているのです。

☆☆☆

 

BACK