第42回 (2003年01月)

出会いがあれば、別れもあるよね。
つらいことがあっても、簡単に話せないから、
悲しみは深さを増してしまうのだろう。
話せるようになったときは、きっと、
あなたが心の落ち着きを取り戻しつつあるのかもしれないよ。
ほら、周りのきれいな青空もだんだんと見えてくるように。
自分の本当の生きたい気持ちにまっすぐにいられるあなたの心が、
うらやましく思えた...。

怒ったり笑ったり、心を表現することが、
こんなにも美しいものであることに気づかされた。
だから、ありがとうと言える。
心を表現してくれた人々に。
真の人間像とは何かと考えさせられる、心に残る映画を。

 

カッコーの巣の上で(1975)

監督/ミロス・フォアマン

キャスト/ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー、ウィル・サンプソン 

壁で守られている隠れ家は、人間の自由を保証しえうるものでしょうか。体制の中で自分を隠し続けることは、自分の心に平和を保ち続けることができるのでしょうか。

刑務所の強制労働を逃れるために精神病院に偽装入院したジャックニコルソンによるマクマーフィ。彼は、精神病院で、患者たちの自由を取り戻そうとします。話すことができないように装い、社会から逃避した生活を送ろうとする、ウィルスサンプソン演じるインディアン。

真の姿を偽装した二人の登場人物により、自由とは何か、体制とは何かが描かれます。

後半からラストまでの展開が観る者を圧倒します。私たちにとって、生きることとは何だろう、自分の真の姿を求めることとは何だろうと、問いかけられます。

☆☆☆☆

 

ユマニテ(1999)

監督/ブリュノ・デュモン

キャスト/エマニュエル・ショッテ、セヴリーヌ・カネル、フィリップ・テュリエ

陰鬱な社会は、私たちの心を狭め、他者を寄せつけない無言の圧力を発しがちです。増加し、陰湿化しつつある犯罪に対して、私たちの心のベクトルは、矛先を定めることができません。

捜査官のファラオンは、犯罪を告白する人物に、自分の心をすりあわせ、なんとかして彼らの痛みを分かち合おうとします。迷宮化する少女の殺人事件を追う主人公を通して、抑圧された社会が描かれます。自然も動物も、欲さず、ありのままの姿で生きようとします。しかし人間は、必要以上のものを自分の周囲に取り込んで生きようとしてしまいます。彼は思いを寄せるドミノに対しても、一つ心を置いてしまうのです。

仕事と性と心が、コントロールしがたいものであるがゆえに、私たちは他人の心の痛みを分かち合うことができないのかもしれません。

☆☆☆

 

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