第43回 (2003年03月)
世界のどこかで今日も聞こえている。
銃声の鳴り響く音、殺戮の震動。
子供たちの泣き叫ぶ声、命を悼む声。
逃げまどう足音、散乱し壊れる家具。
もうやめよう、ある人はつぶやく。
これだけは譲れない、ある人はうめく。
今だけは、戦いを忘れ、歌を口ずさもう。
今だけは、憎しみを捨て、空を見上げよう。
今だけは、悲しみを閉じこめ、花を愛でよう。
だれが悪いのか、だれが良いのかなんて、
真実は、だれにも分かりはしない。
ただ、そこに、憎しみがあるから。
ただ、そこに、怒りがあるから。
人間って、ホントは弱い生き物なんだよ。
だからときに、防衛して攻撃してしまう。
けれど、寄り添っていないと生きていられない。
No more war.
もうこれ以上、人を憎まないで。
戦争を考える映画を。
ノー・マンズ・ランド(2001)
監督/ダニス・タノヴィッチ キャスト/ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、カトリン・カートリッジ |
共通の言語を持ちながら、同じ知人を持ちながら、お互いを憎しみあい、殺し合いが続けられている国が今もあります。ただ「戦わなければならない」というだけで、銃を乱射し、地雷を仕掛け、号砲をならしている戦争があるのです。殺し合うことは、新しい憎悪を生むだけだと分かっていても、退くことのできない気持ちが渦巻いているのです。 閉じこめられたボスニアの男とセルビアの男が、お互いを激しくののしり合います。波のように気持ちが揺れ動きます。傷つけあい、許せなくなった状況の後始末だけを国連は受け持ったのかもしれません。 ジャーナリズムとは何なのか、国連とは何なのか、戦いが終わった今も疑問を投げかけられているのです。 ☆☆☆☆ |
戦場の小さな天使たち(2001)
監督/ジョン・ブアマン キャスト/セバスチャン・ライス・エドワーズ、サラ・マイルズ、デビッド・ヘイマン |
第一次世界大戦以降、ヨーロッパは40年間に渡り、戦いの絶え間のない時代が続きました。人々は戦争に押し流されながらも、生きることに全力を注ぎ、幸せな日を信じ続けたのです。 ドイツ軍の侵攻が続く、第二次世界大戦のロンドン。少年ビルは、疎開する子供達が多くいる中で、母と共に戦争の町に残ります。ビルにとって、戦争は恐ろしいものでもあり、生きてゆく人々の生活を目の当たりにする、社会を認識する場でもあったのです。 人間は、いつの間にか社会に飲み込まれそうになってしまいます。けれど生きる力強さを忘れないのは、人間のたくましさなのかもしれません。叙情的に、しかし反戦への願いを込めて描かれた作品です。 ☆☆☆ |