第44回 (2003年05月)

春が来るとサクラが咲くのだろうか、
サクラが咲くから春だと感じるのだろうか、
春のサクラは、ほんの一週間たらずの出来事。
一喜一憂するわずかな時間。
雨が降るのは、ほんのひととき。
いつも雨が降っているわけではないのに、
たまには、雨を許しておくれ。
哀しみを埋め尽くすには、
まだまだ雨は足りない。

喜びは、つかの間であって、
悲しみは、長い時間かかって、
けれど、いつも傍らにいる人がいる。
家族がいる安らぎ。
側にいてくれる人がいる心地よさ。
家族をつなぐものとは何だろう。

人と人とのつながりを映し出すドラマを。

 

季節の中で(1999)

監督/トニー・ブイ

キャスト/ドン・ズオングエン・ゴック・ヒエップ、ハーヴェイ・カイテル

蓮の花を売るキエン。ハンセン病に苦しみ、世間から心を閉ざす雇い主のダオに、キエンは寄り添います。詩を詠むダオの口述筆記を引き受け、心を通い合わせようとします。子供を捜す元海兵隊員ジェイムズは、街をさまよいます。タバコを売って暮らす物売りのウッディは、商売道具を盗まれ、捜し歩きます。シクロ乗りのハイは、娼婦のランに恋します。

ベトナムのホーチミンを舞台に、季節の中で生きる人々を心優しく包み込むドラマです。キエンの歌声が心に響きます。蓮の花を摘みながら歌う声に、ダオだけでなく、観る者の心も安らぎます。

生きてゆく中で、知り合える人はほんのわずかかもしれません。しかし、その小数の人たちと私たちは自分たちの心安らぐドラマを創り上げてゆけるのです。

☆☆☆☆

 

愛と追憶の日々(1983)

監督/ジェ−ムズ・L・ブルックス

キャスト/シャーリー・マクレーン、デブラ・ウィンガー、ジャック・ニコルソン

いつも同じ人がいて、いつも同じようなコトを繰り返して、毎日がいつものように通り過ぎていても許せる存在。家族は、いつもすぐ横にあるときもあるでしょう。遠くに見渡して考えるときもあるでしょう。私たちの生活は、支えられて支える人間関係の繰り返し。その身近な存在が家族なのです。

姉妹のようでもあり、友達のようでもあり、そして大切な家族である母と娘。彼女たちの絆と生き様を綴ったドラマです。シャーリーマクレーンの好演と取り巻く俳優陣の名演が、感動的なドラマに盛り立てています。

生きることは、常に死と直面することでもあります。家族は、生と死を越えて、私たちの心の中に生き続けてゆくものだと感じずにはいられません。

☆☆☆☆

 

BACK