第46回 (2003年09月)

自分に対しても社会に対しても
やりきれない思いがどんどんと募ってゆく。
誰が悪いという性質のものでもない、
けれど誰もがみな悪いのだ。

自分との孤独な闘いもあれば、
他者との憎しみ合う戦いも続く。
誰も知らないこれからの未来。
希望を持つことが美徳とされてきた社会で、
抑圧された閉塞的な社会を直視するとき、
何を支えに信じて生きればいいのだろう。

国家という枠はだれが決めた?
国民であることはだれに拘束される?
国を離れて、国民の名前を捨てて、
どこで生きる?
だれと生きる?
けれど、希望という文字は、
常識だったハズの全てを捨ててからしか
見えてこないかもしれない。

抑圧された孤独な社会の中で生きる人々を映し出す映画を。

シティ・オブ・ゴッド(2002)

監督/フェルナンド・メイレレス

キャスト/アレシャンドレ・ロドリゲス、レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ、フィリピ・ハーゲンセン

60年代後半、ブラジルのリオデジャネイロに作られた公営住宅街「シティオブゴッド」。夢と欲望が渦巻く街は、70年代に巨大な憎悪の血にまみれた街へと変わっていきます。

写真家を目指すブスカペ、街を牛耳るリトルゼ、街を抜けたいベネ、ファヴェーラ(スラム街)に生きる多くの子供たちの生き様をリアルにポップに描いています。

社会の中で、子供は育っていきます。しかし逆に、子供が社会を育てることもあるでしょう。生きることに無防備で懸命な子供たちの姿が徐々に変わりゆくとき、街も共に変化してゆくのです。
多くの血が流され、人々は殺され、凶暴化していく街。自分たちのエリアは、いつも自分が守るしかないのです。それはこれからの日本も同じかもしれません。

☆☆☆

 

アモーレス・ペロス(2001)

監督/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

キャスト/ガルシア・ベルナル、エミリオ・エチャバリア、ゴヤ・トレド

人を憎むこと、愛すること、人はいつも自分を生きてゆこうとします。ときに寄り添い、ときに孤独に、自分を生きられると信じていたいのです。生きることに疲れるときもあるでしょう。後ろを振り返ることに臆病になるときもあるでしょう。運命は交錯し、連鎖し、しかし誰も先のことは予測できないのです。

メキシコの街でオクタビオは車を走らせます。バレリアは一つの愛を信じて街に出ます。殺し屋エルチーボは、仕事で犬と共に歩きます。今まで何の接点もなかった彼らの人生が一つの交差点で絡み合います。

恐ろしい、せつない、哀しい社会の中で爆走し、静かに、ひっそりと絡み合う熱い人の命が、パワー溢れる映像で描き出されています。かなり気に入りました。

☆☆☆☆

 

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