時計じかけの時代に　第４７回

今日の日は、さようなら。
今までつらかった悲しいこと、
数え切れないほどの楽しかったこと。
一つの終止符を打ち、
今日の日が、さようなら。

明日の日は、出会いの言葉を告げよう。
夢にまで見たような日々、
想像を超えるような出来事、
未来の自分を真っ白に受け容れて、
明日の日に、言葉を告げよう。

出会うときは、ドキドキして、
こんなにもうれしいことはなくて、
別れるときは、心細くて、
あんなにも寂しいことはなくて。

心が揺れる自分に、別れを告げ、
心が惑う自分を、認めて、
だから、今日は、さようなら。
明日は、僕を待っている。

トーク・トゥ・ハー（２００２）

監督／ペドロ・アルモドバル

キャスト／レオノール・ワトリング、ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ

不慮の事故から昏睡状態に陥ったアリシア。アリシアに恋をし、看護するベニグノ。マルコは、愛する人を支えようとしながら、ベニグノとの奇妙な友情を芽生えさせていきます。マルコの中にある孤独と、ベニグノの中にある孤独が交差し、すれ違い、迷いを伝えます。サイレント映画「縮みゆく恋人」の導入が、ベニグノの孤独と愛を、より哀しみへと導きます。

さまよい歩く愛、途切れる愛、受け容れ難い愛。苦悩する心、思いやる感情。周囲にさまざまな気持ちが漂う社会。細部に渡るまで行き届いた配役と演出。観る側の感情移入がキャストの誰にあるかといった点で、この映画を許容するかしないかといった問題を抱えるでしょう。しかし全編を通して描かれる孤独のひっそりとした呼吸は、観る側を深く考えこませるのです。

☆☆☆☆

夜になるまえに（２００１）

監督／ジュリアン・シュナベール

キャスト／ハビエル・バルデム、オリヴィエ・マルティネス、アンドレア・ディ・ステファノ

自分をより高く、より自由に表現してゆこうとすることは、いつの時代においても芸術家の宿命といえるでしょう。自分と闘い、社会と闘いながら、守るべきものは、自分を表現することに他なりません。

キューバに生まれたレイナルド・アレナス。２０歳で天才作家としてデビューし、注目を浴びる彼を待ち受けていたのは、カストロ政権下での弾圧でした。自由な表現と生き方を求めて、逃亡を続けるアレナス。表現者として、ゲイとして、一人の人間として、尊厳ある生き方を望みながらも、時代と政治は、彼の欲求をはねのけてゆきます。彼の求めた生き方とは？彼が伝えたかったメッセージとは？

端役にジョニー・デップ、ショーン・ペンが出演するなどの演出も見所です。

☆☆☆