2000年09月09日号 勝手にタケちゃん通信 勝手にたけちゃん通信

 

「パティの足」

パティ・・・。

長谷川家に、ラッシュ(男・4歳)と共に住んでいる、
ゴールデンレトリバー(女・3歳半)。
だれにでもなつく、かわいくて、たまらん犬。
3年前の美保さんの誕生日に、僕がプレゼントした

 

事件は、8月27日(日曜日)の朝に気づいた。
   
「ねえ、パティの足、おかしくない?なんだか引きずってるんだけど。
なんでか、知らない?」
美保さんに促されるまま、寝ぼけながらパティを見ると、なんだか、
足が痛そうである。左後ろ足を見てみると、何かで切ったような痕が
ある。傷口付近は、毛が邪魔になってよく見えないが、ブニョブニョと
膨らんでいる。

「骨折かな?」と思いつつ、「まったく仕方ないなあ。昨日の夜、
美保さん、酔っぱらって散歩して、公園で放してたんじゃないの?
(よくあるある...!)きっとそのとき、なんかあったんだよ」
「酔っぱらって散歩なんてしてないよ。公園では放してたけど..。
土曜日の朝は、どうだったの?」
   
そんなこんなの責任のなすりあいのような会話が続いたが、やはり、
痛そうなので、いつもの病院に電話する。電話はつながったが、
「申し訳ないんですが、日曜なので、病院お休みなんですよ。折れ
てたら、触った段階で、痛いはずですが、どうですか?」
んん?、すごく痛そうではない。
   
ま、折れてるわけではないのかと思いながら、救急をさがそうとしたが
あてがなく、ま、明日、腫れが引かなければ連れていこうと思い、
時間が過ぎた。
でも、この傷の切り口、なんだか、釣り糸を2〜3重に巻いて、シュッ、
と思いっきり引っ張って、切ったような跡だな...と、グルグル
頭の中で気になっていた。
 
月曜朝、ゼミを30分ほど自習にしてもらい、病院開始の10時に、
パティをすぐ連れていった。
 
診察開始後、
「どれどれ....、うわあっ、ひどいなあこの傷は、これはっ、うわっ、
輪ゴム、2重に巻いてあって、肉が切断されてて、骨が見えてます
よ!これは、ひどいっ、よくここまでガマンしてたなあっ」
ピンセットによってでしか取り出せないような骨の位置まで食い
込んでいる輪ゴム。見ただけでは、分からないはずだった。
しかし、なんで、また、輪ゴムなんかが....。
 
「これは、足を切らなくちゃ切らなくちゃいけなくなるかもしれま
せんよ。」
10日も経っていると、足の切断は、間違いないらしい。
「くっつくかなあ....、今日、すぐ手術しましょう。とりあえず、
血液検査して、その後、皮膚の様子を見て、少し皮膚を削って、
縫合しましょう。縫合しても、膿んだり、足の部分がダメになって
たら....、これは......」
   
あっけなく、病院から離れることとなった僕は、
「どうして、もっと早くに気づかなかったんだろう」
「ああ、昨日病院に連れて行けば、少しは違ったかもしれない」
「足を切るなんて、......」
「もっと丁寧にブラッシングしていれば気づいたかもしれない」
「どうして輪ゴムが...」
「さらに腰に負担がかかるかもしれない...」
様々なことが、頭を過ぎる。

頭の中に浮かぶパティの姿は、原っぱを元気に走り回る姿、
海で楽しそうに泳ぐ姿、。いつもシッポを振りながら、ボール
を持ってくる...。
しかし、断裂しかかった後ろ足の傷跡。
泣くしかなかった。誰を責めても遅かった。
  
たった一つの輪ゴムで....。
さっきまで、片足を上げて、ぴょんよん歩いていたパティの姿が
余計に悲しくなってくる。美保さんに電話で伝えると、もう、仕事
にならないらしく、泣いている。
最悪の場合は、足を切ることになる。でも、生きてさえいてくれ
ればね、生きててくれるんだから。  
    
そんなこんなで、1週間経った。
病院で、「経過が良いです。足を切ったりする心配は、もうありま
せん」と言われた。でも、僕は、もうどんなことになろうと一緒に
生きていく気持ちを再確認できていた。
    
ちょっと足に傷跡が残っている犬だけど、またそれが愛おしい。
うちのパティは、ホントにかわいいよ。
ラッシュもモチローーーン、かわいいよ!
犬バカ検定で、初段をもらえそうな言葉だが、でも、命のあるこ
とは、やはりすばらしい。一緒に過ごす日々が、気持ちをさらに
育む。そんなこんなの夏の終わりの日々なのだ。
 

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