「テニスバカボンな日々」編
大学生のとき、実家に戻る夏休み、遊びでテニスをやっていた。
高校時代の友達5〜6人、テニスを習ったこともないメンバーばかり。みんな自己流テキトー勝てばOK。笑
炎天下の中、飽きもせずよくやったもんだ。
もちろん、メシを賭けて試合してたから続いていたのだ。笑
テニスして、飲みに行って、そのまま麻雀に突入。
海に泳ぎに行って、戻って飲み会、そして麻雀。
こんな日々が続く。笑
カノジョとの約束ずらしても、テニスと麻雀はサボらなかった。笑
遊んでも遊んでも、疲れても疲れても延々と続いてた。
メンバーの中心はYとDと俺。
とくにYは優しいヤツだった。
敵の多い俺とは違って、誰にでも優しく、明るい本当にイイヤツ。怒った顔を一度も見たことがなかった。
誰からも好かれて、Yの悪口を言うヤツなんて見たこともなかった。
麻雀で、国士の「中」単騎でロンされたことがある。
悔しかった〜。
でも九蓮の「九萬」であがり返した、ふふふ。
テニスも上手で、よくラリーで打ち合っていた。
真夜中に大学のプールに忍び込んで泳いだりもした。
徹マン明けでも、二人になっても、麻雀したりもした。
楽しかった〜。
突如、Yが病気になった。
そして、ひっそりと、この世を去っていった。
Yが死んだことを告げるため、今までのメンバーに声をかけ、久々にテニスをした。
テニスが終わるまでは、みんなに黙っていた。
Yを明るく見送りたかったから。
涙を我慢して、明るくテニスをした。
テニス後にコートで、みんなにYが死んだことを伝えた。
みんなYのことが大好きだった。号泣だった。
もちろん俺も号泣だった。
途中からは言葉にならなかった。
Yを思いだしてしまうテニスをすることがつらくて、高校時代の友達たちからも、テニスからも遠ざかった。
それから15年の月日が流れた。
仲の良い中学生の生徒が、「テニスの王子様」の消しゴムを持っていた。テニス部だった。
心の中で懐かしさがいっぱいに拡がった。
Yのこと、炎天下のテニスコート、高校時代の仲間、みんなでの飲み会、海に行った日々、Yとの想い出が走馬燈のように駆けめぐった。
もう一度テニスをしてみようかな。
Yと打ち合ったあの時間に戻れるかな。
そんな気がして、テニス倶楽部を探した。
古いテニスラケットを引っ張り出してきて、テニスをした。
自分でも笑えるぐらい、ボールに追いつかなかった。笑
そりゃそうだ。
あの頃から比べたら体重が30kg!!以上も増えてんだもんな。笑
15年以上も、ロクに運動もしない生活を続けてたんだもんな。笑
Yもきっと天国で笑ってる気がした。
「タケシ〜、アホか〜、それじゃあイカンで〜」
もう大学時代みたいに、俊敏に走ったり、飛んだり、ボールに追いついたりなんてできない。笑
でもテニスを続けていると、なんだか気持ちが晴れやかになる。
やっぱり、テニスが楽しくて仕方ない。
テニスを再開してから何年も経つけれど、歳をとるだけで、上達とは無縁なテニス。笑
少し痩せては、また戻り(笑)、健康維持がいっぱいいっぱい。
けれど、ボールを追いかけてるだけで、あの頃の気持ちや、懐かしい想い出が、楽しさと共に蘇ってくる。
Yのことを思い出すたびに泣いた、つらかった日々。
どうして死んだんだと悔やんでは、もう戻らない時間と自分を責める日々。
そんな日々がだんだんと薄らいで、Yのことを晴れやかに受け容れることができるようになった今。
つらかった時間が、今はYと過ごせた楽しい、嬉しい時間に感謝する想い出として蘇ってくる。
アイツの分も、アイツを背負って生きてやると決めた自分。背負いこんでやる、二倍生きてやると思っていた自分が、今ではちょっと楽になって、アイツの分もテニスバカボンでいようなんて思ってたりする。
あの頃のように、テニスバカボンな日々を楽しもうと思ってる。
Y、俺は今、テニスをやってるよ。
あの頃から比べればボテボテだけど(笑)、
俺はテニスを楽しんでるよ。
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