1999年07月15日号 勝手にタケちゃん通信 勝手にたけちゃん通信

 

「旅行者の久米島」
   
       
沖縄に訪れる至福の10日間。
梅雨が明け、7月初めの10日間を表現する沖縄の日々の言葉だ。
しかし、お天気は、ほんと、わからない。
今回の予報は、雨。しかし、久米島を訪れると、晴れたり、曇ったり、
ちょっと降ったり。雨は、そんなに気にならなかった。
いい天気だったのだ。
沖縄のラジオの天気予報は、おもしろい。
「明日の天気は、曇り。夕方、一時、雨が降りましょう」 
「降りましょう」って、なんだ??
てことで、早々と日焼けの夏を楽しんできました。
    
    
ダイビングをするとき、楽しみたいと思う気持ちを大切にしたいと
僕は思っている。みんなで楽しもう、みんなで感じようと、1本
潜るたびに、海に対して素直な気持ちになれる。
まさにファンダイブである。
     
だがしかし、今回、ちょっと違っていた。
ダイブショップに行くと、スタッフの紹介もなければ、ブリーフィング
(潜る前の、ポイントの説明など)も、詳しく話してもらえない。
「この下で、集合して、さーっと行きます」てな具合である。
なんだか、今までのガイドの人たちとは、まるっきり違うのである。
店主らしきガイドの人は、ずっとタバコを吸いっぱなしで、話し
かけるのも怖そう。ちょっと動くと、怒られそうな雰囲気である。
(実際、新人のスタッフは、気の毒なぐらい、怒られっ放しだった..)
    
潜っても、ガイドが速いので、ついていけない人もいた。
タンクの残圧が少なくなったことを知らせるのも、たいへんである。
ま、ま、まさかのような話だが、2日目、ダイビングの免許を
持っていないだろうと思われる人たちと、一緒に潜った。
(彼らは、ログづけ(潜った記録を書くこと)すら知らなかった
ようだ....。そんなのありだろうか?)
    
「せんせーい、私、わかんなーい」
僕が海にエントリーしようとするその時に、ウェイトすら着けて
いない彼女たちは、楽しそうに、声をあげるのである。
当然、船の下、深水5mあたりで、長い間、待たされることになる。
待っている間に、タンクの空気の減りが気になる。
見て回る時間も少なくなるため、ポイントもなんだか、似たような
所のように感じる。
         
潜った中で楽しかったのは、1日目の洞くつだった。
深さ30mあたりの細い洞くつに入り、垂直に10mほど浮上する。
これって、けっこう、ハードで、スリリング。
魚を見るよりも、洞くつを楽しんできました。やせたかな?!
   
   
久米島は、とても素朴な所である。島を1周する道路があるのだが、
車で20−30分で廻れてしまう。
「日本の田舎の島」と形容されそうな所である。宮古島に追いつけ、
追い越せと、リゾート化しようとしているのかもしれないが、まだ、
途中段階なのだろうか。
写真や、パンフレットとは、また違う顔が、村の随所にある。
      
泡盛の匂いがする酒工場や、久米紬の機織り、久米島の土を使った
器など、のんびりとした時間がたゆたいている。
しかし、村に暮らす人々は、僕たちが、見学したい場所など、
あまり知らない。日々暮らす村のゆったりとした時間と場所は、
僕たち旅行者のあわただしい時間と整備されたホテルとは、
あまり交錯しないのである。
       
僕は、僕なりに、久米島を満喫した。はての浜(海の中にある
白砂の浜)行きの船では、途中、雨が降ったが、青いビニール
シートをみんなで被り、密入国船ゴッコ?を楽しんだ。
マスクとシュノーケルを浜に忘れてしまったけれど、船主の人が
届けてくれ、島の人の温かさを感じた。
村の人々のぶっきらぼうな口調の中にある優しさも感じた。
  
どんな店に行っても子供たちが、当たり前のように手伝いをしている。
東京では、見られない、日本が忘れ行く家族の姿を感じさせられた。
        
久米島を充分楽しんだ想い出とともに、僕たちは、東京に帰るべく
久米空港へ向かった。そのとき、タクシーの運転手さんが、僕たちに
言った。
「お天気が、ほんとにいいときは、はての浜の海の色は、エメラルド
ブルーなんださあ。昨日のはての浜が、ホントの色じゃないですよお」
(こんな言い方だったろうか?ちょっと自信がない..)
「ホテルの、島と反対側の方で、シュノーケリングは、されましたか?
裏の海は、ちょっと危ないけれど、ほんとにいいんですよ。
ホテルの前の海とは、全然違うさあ」
     
僕は、ハッとさせられた。
裏の海は、行ってない。
ほんとのエメラルドブルーの海の色って??
タクシーの運転手さんは、たった4日間で久米島を決めつけないで
くれと言っているようだった。
「こんなもんなんだ」なんて、思わないでほしい。ほんとは、こんな
ものじゃないさ。久米島って、たった4日間で分かるもんじゃないさ。
ほんとは、そう伝えたかったのかな??
     
そう、所詮、僕たちは、ただの旅行者なのだ。
住んでいる人たちを抜きにして、評論したって、仕方ないのだ。
たった4日間の天気で大騒ぎする。短い時間で、その土地をなんとなく
理解したような気持ちになる傲慢さを、僕たちは、知らず知らずのうちに
持っていたのだ。
うーーん。そう考えると、あのダイブショップのガイドの人は、村の人
には、溶け込んでいたなあ。ちょっと偉そうで厳しかったけれど、久米島に
住み、海と人を愛していたんだろうなあ。
         
こんなふうでなければならないと決めつけていたのは、僕たちであって、
僕たちからまず、名前を言い、相手の名前を聞き、たとえ愛想なく言われ
ようとも、僕たちの方から、もっと詳しく海について聞き、僕たちから
ログづけを楽しみ、僕たちの方から、もっともっと....。
  
僕たちは、ちょっと受け身になってたんじゃないかな。
何かしてもらったり、与えてもらうのが当たり前の旅行に、慣れて
たんじゃないかな。
     
もう一度、旅の原点に戻ろう。
お膳立てされた旅を省みよう。ファンダイブとは、楽しませてもらう
ダイビングでは、ない。自ら楽しむ気持ちを、大切にするダイブなのだ。
何かを与えてもらうことを待っていては、仕方ない。
   
もう一度、自分の命を振り返ろう。
既に用意された生活を省みよう。明日の天気が、急に変わることだって
ある。自分の独りよがりな想いだけでは、成り立たない。
人生とは、「自分が生きる」だけでなく、「人と生きる」と読むこと
だってできる。
  
そんなこんなの久米島なのだった。

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